叶わぬ賭け
そんな問いを投げたのは、君との絆を増やしたかった僕の心細さのせいなのでしょうね。もうこうやって、部屋の窓から外を眺めるのは何回目になるだろうか。
眼下には断崖を打つ白の波紋が、紺碧のカンバスに無双の線を描いては、また消える。
どうかしてるな
三杯目の紅茶に手を伸ばしながら、自身の不甲斐なさに頭を掻いた。
ノートパソコンには書きかけの小説。虚しくカーソルが点灯を繰り返している。
今日は書けず終いか
知らずとまた
あの日君に投げた問いの答えは、今頃ボトルメッセージのように、波の上を揺蕩っているのでしょうか。
それとも……
蒼穹に目をやると、いつのまにやら番いの鴎が、睦まじくランデブーを楽しんでいた。
あぁ分かっているさ、
叶わぬ賭けでもあるまい。
来たっ!
鼓膜には、潮騒の代わりに鐘の音が響いた。
脳裏に浮かぶのは、波に預けたボトルメッセージを拾う、君の細い指先。
そして、
寄せる波に濡れた、
ねぇ君、
君は何がほしい?
そう尋ねたのはさ
視える景色は違っても、そこには確かに繋がる言葉がある。瞼をとじた僕は、それに応えるように文字を並べた。
君と過ごした時間。
これから過ごすであろう時間を。
・・・
参考音源
イングヴェイ・マルムスティーン
「nacht musik~ナハトムジーク~(夜曲)」
https://youtu.be/pGdOtGxyt3g
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