第19話 アデルへの手紙

 翌朝、そとはどんよりとした曇り空が広がっていた。

 カノンは着替えてから、顔を洗い歯を磨いているとベンジャミンも起きてきた。

「おはようカノン」

「おはよう、ベンジャミン」

「なんか、今日は外が暗いな」

「うん」


 カノンとベンジャミンはあさのしたくが終わったので、食堂に向かった。

 食堂に入ると、半分くらいの生徒がすでに椅子に座っていた。

「おはよう、アデル」

「おはようカノン、ベンジャミン」

 アデルは手に持っていた何かをサッと隠した。

「どうしたの? なんか顔色が良くないみたいだけど……?」

 カノンが心配してアデルに尋ねると、アデルは急に笑顔を浮かべて首を振った。

「……なんでもないわ。さあ、食事が配られるわ」

 アデルはそう言うと、ポケットに持っていた何かをしまい、朝食を受け取った。

「大丈夫ならいいんだけど……」

 カノンとベンジャミンも朝食を受け取った。


 みんなのもとに食事が届くと、食堂の前の席に座っていた先生たちが挨拶をした。

「それでは食事にしましょう。神に感謝を」

 アデルはなにもなかったかのように、食前の挨拶をするとスープを飲み始めた。

「今日は変身魔法の授業があるな。何に変身するんだろ? ドラゴンかな?」

 ベンジャミンがカノンとアデルに言った。

「さすがにドラゴンじゃないと思うよ」

 カノンの言葉を聞いて、ベンジャミンは唇を尖らせた。


「……楽しみね」

 アデルは金色の髪を指に絡ませながら、言った。でも、そのオレンジ色の目は、いつもよりも暗く沈んでいた。まるで、今日の天気みたいだと、カノンは思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る