11話 緊急事態だ。

 次の日。


 おれは、いつも通りに白鳥の家に寄る。


 白鳥が鍵で扉を開けようとしたが、鍵はかかっておらず、既に扉が開いていた。


「あら、開いてる……」


「ヤベーよ、ついにお前の家に泥棒が入ったんだ。いかにも、金ありますって家に住んでるから……。緊急事態だ。110番、110番」


おれがケータイで警察に通報しようとしたところを白鳥が制する。


「お帰りなさいませ、美和子様」


 家の中から、中年の外国人さんが出て来た。


 上品なスーツっぽい服を着ている。


 こんな泥棒いるかよ。


「久しぶりね、セバスチャン」


「セ、セバスちゃんって、お前の知り合い?」


「ええ、私の執事よ」


「し、執事だと……。だから、セバスチャンか……」


 そういえば、何で執事にはセバスチャンって名前が多いんだろう?


「初めまして、高村様ですね?」


 セバスチャンが丁寧にお辞儀をする。


「は、はい。どうも、ご丁寧に」


 おれも、つられて礼をする。


「セバスチャン、高村君は私の下僕よ。執事の方が格上だから、好きに扱き使ってくれて構わないわよ」


 下僕と執事だと、執事の方が断然、響きが良い。


「いえ、さすがにそんな訳にも参りませんので」


 二重下僕生活は免れた。


「そういえば、家の中が少し明るくなったわね」


 確かに、そういわれてみれば……。


「美和子様が学校に行っておられる間に、少し模様替えを致しました。それと、あまり掃除がなされていらっしゃらないようでしたので、ついでに掃除させて頂きました」


「高村君が掃除をサボっていたからよ」


「お前の家だろ、自分で掃除しろよ」


「それもあなたの仕事の内でしょう」


 下僕生活も辛いぜ。

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