22話 逃げるぞ!


「高村君、少しビビり過ぎでなくて? あんなの全然怖くないわよ。本物の血である訳がないでしょう」


「ビ、ビビってねえよ!」


 お化け屋敷『血塗られた廃病院』の中である。


 正直、ビビっている。


 ヒタヒタヒタ……。


「な、何か付いて来てねえか?」


 恐る恐る後ろを振り向くと、血みどろの医者がメスを持って、おれ達の後ろに立っていた。


「うわ、白鳥、後ろ後ろ!」


「あれがどうかしたの?」


 白鳥が医者を目視したと同時に、奴はメスを振りかざして、走ってきた。


「に、逃げるぞ!」


 おれは、咄嗟に白鳥の手を引いて、逃げ出した。


「ちょっと、高村君⁉」


 逃げて、逃げて、ようやく出口らしき光が見えたので、そこに向かってダッシュした。


「や、やっと出れた~」


「いつまで、私の手を握っているつもりかしら、ビビりの高村君?」


「あ、ゴメン」


 ずっと握っていたままだった手を放す。


「全く、こんなもので怖がっているようでは、本物に出会ったとき心臓が持たないわよ。もし、あなたが失神して倒れても置いていくわよ」


 自称・白魔導師の白鳥と出会って、約一年。心霊調査に行ったことは何度かあるが、本物に出会えたことは、まだない。


「お前、本当に怖がらないよな」


「だって、あれは全て作り物でしょう」


「そうだけどさ」


 こいつが悲鳴を上げるのは、どんな時だろう。


「さて、お化け屋敷巡りも終わったし、次は高村君が決めてくれて構わないわよ」


「う~ん、……あっ、じゃあジェットコースターは?」


「え、そ、それは……」


 予想外の狼狽えようだ。


「もしかして、ジェットコースター、苦手?」


「い、いえ、そんなことはないわよ」

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