俺の彼女は超女神様なんですけど・・・。

猫野 尻尾

第1話:失恋してからの出会い

俺の名前は「皇 聖すめらぎ せい

日本人の大学二年生:20才


俺は付き合ってた彼女にフラれた痛手を癒すために田舎へ帰ったんだけど、

その田舎の海岸で大変なモノを拾って帰ることになるんだ。


でね、彼女にフラれて別れたっていうのに、今、俺のアパートに女がひとり

いるんだわ・・・。

それも外人、しかも別の世界から来たって言う女、でもって女神なんだって。


実は俺は田舎に帰る前、付き合ってた絵里子って三つ年上の銀行に勤めてる

彼女がいたんだ。


ダチの紹介で知り合って付き合うようになって同棲してたんだけど、一緒にいると

ついつい小さなことで揉めたりすれ違ったりしてて、なんだか当たり前の

毎日にマンネリを感じていて、でも、そんなことは人間なんだから慣れてくると

普通にあることだと思ってた。


そしたら、ある日俺が学校から帰ると、テーブルの上に紙切れが置いてあって

ひとことだけ「さよなら」って書いてあって、彼女の荷物が全部なくなっていた。


それだけ残して絵里子は出て行ったんだ。

少なくとも一年は一緒に暮らしたのに、去って行くときは「元気でね」とか

「体に気をつけてね」とかそんな労いの言葉もなく、あっけないもんだった。


俺は一人になった。

心にぽっかり穴が空いた。

情けないことに俺は泣いた。

涙が枯れるまで、泣き疲れるまで泣いた。


「ふざけんなよ・・・さよならだけで、それで俺たちの関係にピリオド打つ

つもりかよ」


そりゃ、情けい気持ちしかなかった。

俺には彼女と過ごした思い出しか残っていない。


で、その心の痛手もあって、なんでもいいから環境を変えたくて俺は田舎へ

帰ったんだ。

その時は田舎へ帰ることしか思いつかなかった。


で、田舎でのんびり一週間ばかりいたかな。


俺の田舎の家は地区の一番北側に建っていて、すぐに歩いて海に出られた。

環境だけはめちゃよかった。

小・中は夏休みになると、毎日勉強もしないで海に泳ぎに行っていた。

その海岸が開発で埋め立てられることなく未だに残っていた。


ぶらぶら手持ち無沙汰にしてるのも、体がなまりそうだと思って

俺は目の前の海を見に行ってみることにした。

冬の海は暗くて、吹く風は冷たくて失恋した俺の心の傷に沁みた。


「バカやろう〜・・・世界なんて滅べばいいんだ」


ゴミが流れ着いた砂浜を、遠くの海を見ながら、俺は歩いていた。

するとゴミの中にまじって、人間らしき物体が波に打ち寄せれているのが

目に入ったんだ。


「えっ・・・人?・・・まさかこんな海岸に?」

「誰かが捨てたラブドールとか?」


近づいてみると、それはやはり人間・・しかも女だったんだ。

うつ伏せだったので顔は見えずらかったけど、超金髪じゃんって思った。

しかも裸だし・・・何も着てないし・・・。

うつ伏せとは言え、俺はちょっと目のやり場に困った。


「外人?・・・どこの国の?」

「どっから流されてきたんだ?」

「不法入国とか?」


「死んでるのか?・・・やばくないか?これ」

「死体の第一発見者になるのか、俺」


「ちょっと・・・、おネエさん・・・彼女・・・生きてます?」


俺は彼女を仰向けにすると、なるべく顔以外は見ないようにして息をしてるか

顔を近づけて確かめてみた。


「お・・・息してる・・・よかった、生きてるよ・・・」

「それにしても端正な顔つきだな」

「ほんとにラブドールみたいな超、べっぴんさんじゃん」


可愛い唇を見てると、どさくさに紛れてチューしたくなった。

俺はなんだか、この状況にドキドキしてきた。

普通、ありえないシュチュエーションじゃないか・・・。


俺は彼女を押したり揺すったりしてみたんだけど起きなかった。


生きてるんじゃほうっていけないよな。


しかたなく俺は彼女をお姫様抱っこして、家に連れて帰った。

重くて腰が砕けそうだった。


俺が女なんか連れて帰ったもんだから、親父とお袋が驚いた。


「お前、どこでその裸の女なんか、拾ってきたんだ?」


「海だよ・・・砂浜に流れ着いてたんだ・・・ほっておけないだろ・・・」


ってわけで、彼女は俺の家で俺たちの献身的介護もあって意識をとりもどした。


改めて彼女を見ると、髪はほとんど白に近い金髪、肌は白くって、瞳の色は

グリーン・・・外人にしては、さほど彫りも深くなくて、年の頃なら・・・

分からないけど、俺くらいか?


お袋が俺が持ってきてた着替えの服を彼女に着せてくれた。


でも次の日、彼女は俺の服でもおふくろの服でもない衣装を身につけていた。

中世のヨーロッパの衣装みたいだった。


それから何を聞いても、彼女はひとこともしゃべらず、

しばらくは、ただ放心したみたいにボーッとしていた。


彼女がようやくしゃべったのは、お袋が夕飯に作った豚汁を食べた時だった。


「美味しい・・・これ、すごく美味しいです」


「そう気に入ったのなら、たくさん食べなさい」


初めてしゃべった彼女を見て俺は驚いた。


「今、はじめてしゃべったよね・・・」

「しかも、ちゃんと日本語しゃべてるし・・・」


「私バイリンガルですから」


「あの、お礼が遅れて、ごめんなさい・・・」

「私を救ってくださってありがとうございました」


「ああ、無事でなによりだったよ」

「元気になって君の家に戻れるまでここにいていいから」

「俺もいっしょにいてあげるからさ・・・」


「ありがとうございます・・・」


「いいんだよ・・・それよりその君が着てる衣装だけど、どこから持ってきたの?」


「普通に出せますけど・・・」

「この衣装は私の普段着ですよ」

「それから、お借りした服は、私には合いませんからたたんでおきました」


「出せるって・・・え?魔法みたいに?」


「そうですよ・・・」


「そんなことできるんだ・・・」


そんなことできるって彼女はマジシャンか魔法使いか?って俺は思った。

でも魔法使いなんてファンタジーの中だけの話だろ・・・。


それ以降も、彼女は自分のことついてあまり喋ろうとしなかった。


いつでも障子戸を開くと穏やかな顔をして、縁側から遠くの山を眺めていた。

風になびく、金髪のシルクのような長い髪・・・逆光を浴びたその姿はまるで

天使か女神みたいだった。


俺はここに彼女を置いて置くわけにもいかず、田舎の警察に

彼女の身柄を預けようと派出所に頼みに行ったんだけど

結局、彼女のことは何もわからず、警察で引き取るわけにはいなかいので

そちらで面倒みてくれって言われた。


行方不明者とかって年間にどのくらいでてるんだろう。

警察も忙しくて、少しでも面倒をしょいこみたくないんだろう。


「お前、あの女をここに置いていかれても困るけん、おまえのアパートに

連れて帰ってくれ」


親父にもそう言われた。


で、彼女を親父とお袋に押し付けるわけにもいかず、俺は俺のアパートに

彼女を連れて帰ることにしたんだ。


海岸で拾ったものが人間じゃなかったら、粗大ゴミに出してそれで終わりなんだけど

生き物となると、放っておくわけにはいかないだろ。


つづく。

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