“What About It?”

時々、突然不意に打ち明けたくなるときがある

本当は俺は


別に異なる生物に変身してしまうわけじゃない

俺はあくまで俺のままだ


普通に暮らしていると楽しい

何気ない日常を何気なく過ごせるって感動的


そこに“それ”があるとき

いつも“自分は何者なのか”を考える


彼女が“それ”を笑いのネタにすると

やっぱり言えないな、と思う

ただでさえ傷つくものが余計に傷つく

俺は彼女のことが好きだから


彼が“襲われそうで怖い”というとき

自分は“架空の存在”なのだなと思い知らされる

こんなに近くにいても、こんなにそばにいても

俺はどこまでも独りぼっちなんだな


自分の人生を生きるために

そのためのスペースを確保することは

悪いことじゃないはずだ


どんな人だろうとみんなかけがえのない存在だ

その“どんな”の中に俺が含まれていないとわかるとき、

“自分は一体何のために生まれてきたのか”を深く考える


変わったことをしていれば

変わった目で見られるのは当然だ

その上で普通に生きていきたいっていうのは傲慢だ

それはそうだ


でも、それじゃ俺の存在は“変わってる”の

確かに数は少ないかもしれないけれど

それじゃ俺は“それ”を

いつまでも隠し続けなきゃいけないの


あるいは打ち明けた場合

変わった目で見られなきゃいけないの


何が辛いのか何がどう辛いのか

事細かに話すとき傷を目の当たりにする

話したってわかってくれるとは限らない

そのとき、傷は抉り出される


誰かが俺を“ゲイである“ことで笑ったなら

それは差別だ、とか、差別はやめろ、とかだけじゃなく

「それがどうした」と言えたなら

「それがどうした」と言ってもらえたなら


普通に暮らしていると楽しい

何気ない日常を何気なく過ごせるって感動的

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