#308 夢からのメッセージ

 ここ最近、よく夢を見る。寝ている時に見る、あの〝夢〟の話だ。

 自分が有名な科学者になっていたり、鬼に追われていたり、スーパーヒーローになっていたり、好きな子とデートしていたり、悪人になっていたり、筋肉マッチョマンになっていたり、泥棒が家に入ってきたり、その数を挙げたらキリがない。

 とにかく多種多様な〝夢〟を見る。

 そんな時だった。昨晩見た〝夢〟はかなり不思議なものだった。

 机に座る自分。

 机の上には一枚の紙。

 紙には、こう書かれていた。


『信じられないかもしれなが、ここに書いていることは事実だ。嘘偽りのない、本当のことだと飲み込んでくれ。君が今まで見ていた〝夢〟は、実は並行世界の君の人生だ。君は並行世界の自分の人生を、寝ているときに〝夢〟として見ることができる。それを突き止めたのはこの世界の僕だけだろう。もしかしたら、他の並行世界でこの事実に辿り着いた僕もいるかもしれない。しかし、どの世界でも、この事実に気づいた僕は殺されるだろう。もし、君が〝夢〟ではなく並行世界だと認識して、自由に動けることになったら、君はとてもすごいことをする。世界を思いの儘にすることができる。それを許さないとある世界の学者たちが、僕を殺しに来るだろう。だから──」


 読めたのは、そこまでだった。

 とにかく長い文章が書いてあったけど、夢を見ているなんて一瞬だ。長文を読めるほどの時間はない。

 ま、それでも〝夢〟が並行世界の自分の人生だと理解はした。

 ……もちろん信じてなんかいない。

 どうせ〝夢〟なんだから。そうあってもいいなっていう〝夢〟。誰しもが一度は考えたことがあって、小説のネタにも使われている御伽噺。

 全く、僕の脳は随分とメルヘンに仕上がっているらしい。

 もし、僕にそんな力があるなら、僕が億万長者になっている世界で、その世界に留まらせて欲しい。

 現実はファンタジーじゃない。どうせそんなことはできないのだから。

 全く。並行世界なんてない、僕はどこにでもいるただの人なんだ。

 ただの、どこにでもいる、普通の女の子だよ。

 一人称が「僕」と言うだけの。

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