#303 ハロウィンの影
10月31日。
日本ではハロウィンが大々的に開催されるようになった。賑やかな街に出れば、火葬した人々が歩いており、一部マナーの悪い人間によって社会問題になっている面もある。
そんなハロウィンだが、実はその影ではもっと恐ろしいことが起こっていた。
「■●※×」
異形の影が蠢いている。おおよそこの世の存在とは思えない、歪な形、異形の影が暗闇の中に蠢いている。その数は一匹、二匹ではない。
多数の異形の影が存在している。普通であれば、誰もが悲鳴をあげて大騒ぎになっているだろう。
だが、今日はハロウィンだ。街には仮装した同じく異形に近い姿をした人間たちで溢れかえっている。故にその異形は今日だけ普通になっている。
異形の影は、仮装だと思って近づいてきた人間たちを路地裏におびき寄せ、食う。自分達がホンモノに遭遇してしまったのだと、人間たちが理解した時、すでにその体は半分は喰われた後だ。
表に賑やかに、裏の悲鳴がかき消される。
裏の地獄絵図。
そこへ、
「おいおいおい、食い過ぎだ。掃除をするこっちの身にもなれって」
「何言ってるんですか先輩! 早く祓わないと! これ以上被害を出さないために!!」
「真面目だね、お前は。こう言う時に食われる人間は、大半がロクでもないやつだ。死んでも、誰も文句を言わない、むしろ感謝されたりもする。これ、アタシの経験だからマジな話ね」
「………それとこれとは話が別ですよ!」
裏の世界に似つかわしくない、賑やかな二人組の女だった。
「だって、今日はこれから朝までずっと祓い続けるんでしょ? もう面倒くさくて、やる気起きないわよ」
「何言ってるんですか! むしろ今日が働きどきなんですから! サクッと祓って、稼いで! また来年まで豪遊しまくりたいんですよ!」
「はいはい……んじゃ、死なないようにね」
彼女たちは退魔師。人の世にいてはならない存在を祓う者。
ハロウィンの日は一番忙しくなる時。
気だるげな少女と、反対にやる気に満ち溢れた少女は、蠢く影に向かって己の獲物を構える。
ハロウィンの影で、魔を祓う少女たちの物語が紡がれている。
しかし誰もこの物語に気づかない。
少女たちの物語は、語られてはいけない、紡がれてはいけない、裏の物語なのだから。
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