#298 鍋

 鍋を買ってみた。

 社会人三年目イコール一人暮らし三年目。体のことを考えて、コンビニ飯から自炊へとシフトしようと計画を立てて、その第一段階として鍋を購入。フライパンではなく鍋を買ったのは、料理をあまりしてこなかった故、作れるレパートリーがないことが原因。ないなら、食材突っ込んで火にかかれば完成する鍋しか選択肢がなかったのだ。これから冬になるし、ちょうどいい。

 さっそく、食材を鍋に入れる。スーパーで買った鍋つゆの素を入れ、火にかける。時間が経つとぐつぐつといい音が耳に入ってくる。

 そろそろかな。

 お椀と割り箸を用意して、箸を鍋に突っ込む。本当は菜箸とか使った方がいいんだろうけど、食べるのは一人だけだし気にしない。

 食べる、飲む、盛る。

 食べる、飲む、盛る。

 その繰り返し。

 具材がなくなったら、「締め」というのをくるらしい。ご飯か麺類が基本らしい。

 確か、この前買った冷凍うどんが残っていたはず。

 冷凍庫から取り出したそれを、鍋に入れる。

 解凍されるのを待って……箸でお椀の中へ──いや、もう食べ終わるしこのまま行こう。

 うどんを啜る。噛む、飲み込む。

 啜る、噛む、飲み込む。

 全て食べ終えた頃には、体は熱々に熱っていた。

 ベランダの窓を開ける。外の風が体を冷ましてくれる。

 ふむ、鍋、案外悪くない。具材は好きに入れられるし、野菜を多くすれば栄養もしっかり取れる。

 締めにはご飯か麺類なら飽きることはないだろう。つゆのレパートリーも豊富だったし、次は別のも買ってみよう。

 うん、鍋は簡単で楽でいいな。


「……カセットコンロを次買うか」

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