#258 世界改変
「ついに……ついに完成したぞ!」
男は長年をかけて開発したマシンを目の前にして、歓喜の声を上げた。無精髭にボサボサの長髪、目の下には深いクマがあり、男がどれだけの時間と苦労をかけてたのか一目でわかるほどだった。
「これで、これで僕を馬鹿にしたアイツらに復讐できる!!」
男は過去、“ある事”を馬鹿にされた事がある。それによって、周囲から笑われ、心に深い傷を負った。以降、男は“それ”をする度に脳裏にその時の光景が浮かび上がり、過呼吸になってしまうほど。
だから男は誓ったのだ。あの時自分を馬鹿にした奴らに復讐するのだと。あれさえなければ、自分は平穏な人生を送れるはずだったのだ。
戻る。戻って、男は新しい人生を歩み始める。
「タイムマシン、並びに認識改装置。これで私は、過去をやり直す!」
男は装置の中に入った。
「移動年代は私が幼稚園の時! そして! 認識改装置には──」
ついに叶う喜びに指が震える。
だが、この操作を誤るわけにはいかない。
震える指を慎重に動かして、入力した文字を何度も読み返す。
誤字脱字は──ない。
「さあ世界よ! 太陽の色は黄色で問題ないと定義を改めろ!!」
幼稚園で太陽を描いた時、周りが赤色でなる中黄色を塗った自分は馬鹿にされた。
だから、逆のことをするのだ。太陽は黄色になるのが当たり前。赤になるのがおかしいのだと。
アイツらの認識はそのまま、周りの認識を変える。アイツらは太陽を赤く塗るだろう。
だが! 改変した世界では黄色が常識! 赤色にはならないのだ!
「さあ!! 旅立とう! 新しい世界へ!!」
男はスイッチを押した。
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