#256 新しい月

「お、今日は新月か」


 夜、仕事と飲み会を終えて、帰宅する僕と先輩。そんな中、先輩が夜空を見上げてそんな事を言った。

 新月とは地球から見て月が見えないことを言う。地球、月、太陽の並びになることで太陽の光を反射しないのだ。だから今夜空を見上げても、月はどこにも見当たらない。


「そういえば、この前新月について面白い噂を見つけてさ」


 唐突に、先輩はそんな事を言ってきた。


「新月って漢字だと『新しい月』って書くだろ? だから、新月ってのは実は月を新しく取り替えているんじゃないかって」

「…………」

「取り替えるためにまずは外す。だから月が見えなくなる。その間に新しいのに変えて、また輝き始める。どうだ? 面白いだろ?」

「ええ。でも、月を取り替えるなんて突拍子もないですね」

「そうだよな。月なんて宇宙に実在するからな。ま、話の種としてはいいんじゃねか?」


 はい、と僕は答えた。

 でも、まさかもうそこまで地球人が話を嗅ぎつけているとは思わなかった。どこまで気づいている? すでに地球は僕たちの作ったドームに覆われ、この空はドームに映し出した映像だってことまで? 月という電球を取り替えているところまで見つけたんだ。何大抵の地球人じゃないはず……どこの地球人だ? 月星人ぼくたちの活動内容を知っているなんて……これは、調べないといけないな。事の重要度によってはその人間を処理をしないと。


「ところで先輩、その話ってネットのどこで見たんですか?」


 僕はにっこりと問い開けた。

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