第24話
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「ああ、おかえりなさいっ、あなたっ!」
ホテルに帰ると、マリアが
マリアを胸に受け止めると、やっぱり衝撃は大きい。主に、精神面でのだけど。愛という名の破壊力は、勇者のわたしに効果抜群である。
マリアはホテルのロビーで待っていたわけで、けっこうな人だかりの前で抱きしめ合うこととなった。それどころか、ちゅーまでされてしまう。
といっても。わたしたちを見ているのは、レーネとアイシャ、それから騎士団の人たちであり、だいたい身内みたいなもんだ。
わたしの背後にいた聖女さまは、わたしとマリアのキスを見て、口に手を当てて
そこに
「マリア大丈夫だった? 何もなかった?」
「ええ、こちらは何も。アイシャちゃんとレーネちゃんが話し相手にもなってくれていましたし。エステルは……
相変わらず、マリアは人の視線など意に
マリアの気が済むまで身体を触らせてから、わたしたちはホテルの部屋に戻って話し合いをすることに決める。
レーネの指示によって騎士団は解散となり、今度はホテルではなくて街の外の警備を強めてくれるようだ。
ホテルの部屋は割りかし広いといっても、中にはわたしとマリア、レーネとアイシャ、そしてリリと聖女さまがいるわけで、狭さを感じるが、
「レーネは、やけに早く合流できたね」
「まぁね。ボクたちの騎士団はいい馬を使っているし、トリトーネに危機があるって知らせを受けたのもあって、父上がすぐ許可をくれたんだ」
得意げに語るレーネは、やっぱり姫の風格は感じられない。短い金髪は少年っぽさもあるし、おてんば娘って感じ。だけど、
「じゃあ、今後は魔族の国まで一緒に来れる感じ?」
「そうだね。トリトーネの安全が確認でき次第、出発したいな」
わたしもそれには同意する。
するとそこで、聖女さまがおずおずと口を開いた。
「あの……。わたくしも同行はできないでしょうか?」
「いいよ! 大歓迎だよ!」
わたしの意見など聞こうともしない。まあ、別にわたしも聖女さまに来て欲しくない、ってわけじゃないけど。
「聖女さまは、
わたしの
「わたくしは女神さまの加護を受けし一族ですから。勇者さまにお
マリアも、わたしと聖女さまの顔を見比べて、
「エステルは女神さまのこと、なにかわかったんでしょうか?」
マリアに聞かれて、わたしは首を横に振るった。
「さっきは魔物退治しただけだしね。後で話を聞かせてもらおっか」
「それでは、明日、聖域で女神さまの伝承をお話しましょう。今日はゆっくりお休みしたほうがいいと思いますし」
明日、わたしは一体、何を知ることになるのだろうか。
聖女さまとは、デジャヴュみたいなものもあったし、わたしと聖女さまの繋がりは、まったくの赤の他人、ってわけでもないのかなあ。
ま、何もかもを知るのが怖い、とかはないけどね。事実がどうあれ、全て受け止めるし、マリアを
すでに
リリは聖女さまに
そしてわたしとマリアは。
夜風がひんやりとする頃合い。街に降り立っていた。
約束の、二人っきりのデートである。
大都会のトリトーネでは、夜間の外出でも治安が約束されているらしく、
夏場前だというのに夜になると肌寒いのは、街の至るところに流れている水路のせいだろう。ひんやりとした空気と、水が流れる心地よいサウンドが心を落ち着かせてくれる。
街灯に照らされた水路というのも、なかなかに風流で、外をぼーっと歩いているだけでもロマンチックなデートだった。マリアも、ご
わたしたちは、示し合わせたわけでもなく立ち止まる。水面に映った、まるで財宝のような
気まずい雰囲気とかではなくって、お互いの思考が
わたしたちは何もかも通じ合っているから、マリアを横目で見やると、バッチリと目が合う。月を背景に、マリアはやんわりと
月明かりの青白い
わたしたちは数秒間……恋人繋ぎをしながら、見つめ合っていた。いや、実際には数分間だったかもしれない。時すらも忘れてしまうほど、マリアとのイチャイチャデートはのめり込んでしまうよね。
「エステルは……聖女さまに好かれていましたよね?」
無言を破ったマリアは、
わたしは、不意をつかれたこともあってか、心臓が飛び出たのかと思ってしまう。
ま、まあ、やっぱり、気づくよね、マリア。けれどマリアの口ぶりからは、嫉妬だとか後ろめたい感情は一ミリも感じられなかった。
「なんか、そうみたいだね……。わたし、何もしてないのになあ? 魔物やっつけてただけなのに。終わったら、ああなってたんだよね」
わたしが首を
「エステルは、可愛いからしかたありませんよ。誰だってエステルのこと、好きになってしまいますから。モテモテですもんね、エステル。……さすがに、もう慣れてきましたけれどね」
「は、はぁ? 何言ってんだよ。モテモテなのはマリアのほうなのに。わたしがついていないと、すぐ声かけられちゃうでしょ、マリアなんて。一時も目が離せないんだからね、苦労するよほんと」
わたしが
「エステルは、小さい頃から私を守ってくれてましたからね。でもね、エステルは気づいていないかもしれませんが、エステルもやっぱりモテモテですよ。特に、勇者さまになってからは、自信も満ちていて格好良いですから。私も、目が離せないんですよ」
「ふ~ん、マリアからみると、そうなんだ」
勇者になる前なんて、女の子に見向きもされなかったからね、わたし。とはいえ、マリアの言う通り、今はちやほやされるようになったのもまた事実。でもでも。わたしはマリアと違ってぼんやりしていないし。危なっかしいのはマリアのほうだよね。
ふーふ両方ともモテちゃうなんて、大変な家庭だな。
「エステルは綺麗な女の人を見ると鼻の下伸ばしていますから。でもね、ふらふらとついていっちゃう、ってことはしないから、信じることができます」
うぅ……。鼻の下、伸びてるのか……。
まあ、確かにわたしは、綺麗な女の人大好きだからね。主に、マリアのせいで性癖が
「ねぇ。マリアは、どうしてわたしと結婚してくれたの? わたしが小さい頃に結婚しようって言ったから、それを守りたかったの?」
幼い頃から、マリアの裸をいっぱい見てきたわたしの性癖が歪んでしまったのは、自然の
マリアは
「だって、エステルは小さい頃から可愛かったんですから。あんなに可愛い女の子が、私を守ろうと必死に駆け回っていたんですよ? 心を奪われてしまうのは当然です」
そして、さも当然といわんばかりに鼻を鳴らして豪語するマリアだった。
どうやら、性癖を歪められたのは、マリアも同じらしい。やっぱりわたしたちは、似たものふーふなんだよね。
「マリアを誰にも触らせたくなくて駆け回ってたの、無駄じゃなかったんだね。よかったよかった。明日は女神さまについて何かわかるかもしれないし。もっと明るい未来があるといいな」
「私は現状のままでも幸せですから。エステルも、もし、明日何もなかったとしても、落ち込まないでくださいね」
うーん。今朝はマリアを
といっても、わたしだって不安があるわけじゃない。
むしろ、マリアに子作りができない真実を知ってもらったから、
今夜のデートは、綺麗な街並みを散歩するだけの手抜きデートだったけれど。マリアはそれでも、常にニコニコとしていた。
ブラブラとした散歩デートが終わって、ホテルの床に
明日は神聖なる聖域で有り難いお話を聞くはずなのに、結局は今夜も朝方近くまで体を
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