7 皇帝陛下のお願い②そもそも五人が気付いたのは
そして現在の先祖返りの彼等五人だが。
それが発覚したのが、彼等の中で一番年下であるレンテが皆と共に学び始めて何年かした時だった。
後宮内の学舎で十年間。
ほぼきょうだい達は全てそこで学び、同じ時間を過ごすこととなる。
そして末弟だったレンテが学びだしてやや経って、アルパカタに接触してきた。
同じ歳なら学び出す以前から仲が良い場合も多いが、アルパカタとレンテは四歳違う。
この小さな世界において、その違いは案外大きい。
そしてこの二人が心話で通じた時、他の三人にもその気配が訪れた。
ただその異能が何であるのかをそれぞれ自覚するまでには多少の時間が必要だった。
最後に判った「足」であるトイスなど、それこそ自身に危険が迫った時に無意識に異能を発動してしまうまで気付かなかったのだ。
その辺りは生身の足同様、普段は意識して動かさない部位のはたらきに近いと言える。
ちなみに彼は気付いてしまった時嘆いた。
「俺別に皇帝になれなくていいからレースには出たかったのに!」
そう、彼等にはレースに出る権利がその時点で完全に失われたのだ。
仕方無し、トイスはアルパカタに頼み込んで何かとレースを「あちこちで」眺めることにしたのだった。
だがレースを見つめる者はレースをする者にまた見つめられてもいた。
勝利し、皇帝の座に就いた三番目の異母兄カンシュルアルゲンは行き先に常に居る異母弟達に気付いていた。
レースは帝国全土を結構な日数かけて回るものだ。
だがどの場所にも弟達は軽装で先回りしてやってくる様子を眺めていた。
異能があるのは聞いていた。
それだけに早くから自身の進路を決めていたことも。
だがそれがどの位のものか、このレースの中で気付けたのはカンシュルアルゲンだけだったろう。
彼は見事自身が次期皇帝となることが決定した時に、五人と接触し、なりたい職の話を持ちかけた。
そしてこう言った。
「どんな職に就いてもいい。話をつける。ただし条件が二つある」
五人は身構えた。
「なあにそう難しいことじゃない。一つは皆できるだけ離れた場所で職に就いて欲しいこと」
彼等はほっとした。
もっと厄介な話になるかと思っていたのだ。
だが。
「そしてもう一つ」
これが彼等の今後を決定づけた。
「君等も知っている通り、皇帝の仕事というのは基本的には『権威』だ。政治はしっかり形作られた機構が状況判断により実施し、私自身が判断できることはせいぜい最終確認程度だ。だが在世中の『方針』を決めることができる。その件に関しては、なかなか下手な者を使うことができない」
そこで、と彼は五人を真面目に見据えた。
「滅多には無い――無いと思う――無い……と思いたい、そういう時に、私の命で動いてほしい」
――そう言われて、否と言えるだろうか?
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