第27話 それは流石に超絶ドン引きです。

「ま、こいつは大丈夫そうだけどな」


 赤羽君が梨乃ちゃんに親指を向けてそう言うと、ジトっとした目で彼を見ています。

 きっと失礼なことを考えているのでしょう。


「どういう意味よ」

「いや、お前って何でもズバズバいうから大丈夫だろ」


 赤羽君のいう事は一理あります。

 私と違って彼女ははっきり物申す子だ。

 私が女の子らしくふるまっているとするなら、彼女はどちらかというと男勝りな性格だ。

 この短期間でもわかるくらいだ、長い付き合いの彼は彼女の性格をよく知っている事でしょう。


「女の子らしくないって言いたいわけ?」

「見た目を除けば、お前は男らしいだろ」


 その言い方は、女の子にとってタブーです。

 女の子で男らしいは一部にとっては気になる事なので絶対言ってはいけないのに。この愚か者は言ってしまいました。


「見た目を除けばって……」

「そりゃそうだろ、お前見た目だけはいいしな」


 彼女の方を見ると、案の定顔を真っ赤にして彼を見ていました。

 この人は馬鹿なのでしょうか?


 そう思っていると、彼の顎に彼女の拳が当たっています。

 凄まじい踏み込みです。

 彼はその攻撃を喰らい、宙に浮きます。

 可哀想とは言いません、この人が悪いんですから……女の子に男らしいという人はこれを喰らって当然です。 


「グヘっ!!」


 場所は廊下なので、彼は硬い地面に身体が叩きつけられる。

 周りが一斉にこちらへ向きます。

 まぁ、当然これは暴力事件です。

 終わりましたね、この人達。

 停学待ったなしでしょう。

 

「先生、呼んでこなくちゃ!!」


 一人の生徒が先生を呼びに行きました。


「逃げるぞ」


 まさくんは赤羽を抱えて二人に言うと、先生が来る前に生徒が言った反対側の階段へ走ります。

 まさくんがなぜそうするのか理解に苦しみます。

 だってそうでしょう。

 私達は何も関係の無いことなのですから。

 せいぜい呼び出されて状況を聞かれるくらいです。

 ここに私だけ残されるのも、それはそれは腹が立つので彼についていきます。


「止まれ」


 彼の指示に従います。

 というか、何故こんなことをしなければいけないのでしょう。


「二人とも、見てくれ」


 梨乃ちゃんを使うならまだしも、私を使うとは何事ですか。

 駒が私を駒として使うなんて許せません。

 

 ですが、逃げてしまったので私も同じ犯罪者です。

 こうなれば、いう事を聞くほかありません。

 見つかったら、まさくんを呪い殺します。


 まさくんに梨乃ちゃんがサインを送ると、急いでその場を乗り切ります。

 まさくんについていくと、食堂の間に立ち入り禁止のテープが張られた中に入っていきます。


「……ん? あれ、ここは?」


 中に入ってしばらくすると、攻撃を喰らったざまあさんが目を覚ましました。


「目が覚めたか」

「俺は、何をして……うお、天使がいる」


 この状況で何を馬鹿な事を言っているのでしょう。

 私は天使ではなく女神でしょう。

 目までぶっ壊されましたか。


「痛え……おい梨乃、ちょっとは加減しろ」

「……ごめんなさい」

 

 顔を背けて口を尖らせながら、不満そうに梨乃ちゃんは謝りました。

 正直、梨乃ちゃんは悪くありません。

 女らしくないといった彼が悪いのです。


「僕が言うのもなんだけど、高田さんに女の子らしくないとか言った赤羽君も悪いよ」


 流石まさくん、私が思っていることをスッといえるのはポイント高いですよ。


「……俺も悪かった」


 まさくんの言葉に何か思ったのか謝ると、彼女は不満げな顔から心配そうな顔になる。


「顎、大丈夫?」

「あ、あぁ」


 梨乃ちゃんが近づくと、彼は少し顔を背けます。

 満更彼女の事を恋愛対象として見ていないわけではなさそうです。

 

「……呼び出されないな」


 幸い、教室から離れた所だったので、私達の名前を知らない生徒が多かったので呼び出しにくいのでしょう。


「どうする?」

「なんで逃げきる前提なんだよ」


 逃げ切れるのは無理だと思います。

 あそこには監視カメラが複数ありました。

 それを見られれば一発アウトです。

 そうなる前に自首するのが、一番温情を受けれる可能性があるでしょう。


「自首しよう、考えがある」


 まさくんはそう提案したのでした。

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