第22話 飴と鞭です

 男子が見てきています。

 正確には、私達の中にいるまさくんの方を睨んでいます。

 それはそうです、入学初日に私のような美少女と一緒にご飯をしていれば注目の的間違いなしです。

 それに、梨乃ちゃんもいます。

 そうなれば完全に男目線では羨ましい限りでしょう。

 まぁ、私は女の子なので男子の気持ちなんて微塵もわかりませんが。


「ん? どったの?」


 梨乃ちゃんは彼の挙動不審な行動が気になったのか声を掛けます。

 梨乃ちゃん、察してあげてください。

 彼は今複数の刃が付きつけられています。

 視線の刃です。

 だから正解は察して普通に接することが大切です。


「いや、何でもない」


 何かを言いたげな顔です。

 しかし、それを言えば某アニメの過激派クラスだったら、磔にされて問答無用で死刑を言い渡され火を放たれるでしょう。 


「はい、お弁当」


 私はこの状況でばら撒かれた油に火を放ちます。

 彼は戸惑っています。

 私の時間を無駄にした罰です……報いを受けなさい。


「いつもありがとうございます、明美様~!!」


 ふざけにふざけ出しやがりました。

 不愉快です。

 今すぐにでもそこの飢えた男子の中に放り込んでもみくちゃにされるといいです。

 

「うわ~、明美ちゃんのお弁当可愛い~」


 私がお弁当を開けると、彼女は私の弁当を見てそう言いました。

 それはそうでしょう。

 私のような可愛い女子は何事も完璧です。

 料理なんてお茶の子……折り紙をするが如く簡単な作業です。


「そ、そうかな?」


 一応謙虚にふるまっておきます。 

 じゃないと、私の完璧を嫉妬する輩が出てきますからね。


「僕のは……お、エビフライがある」


 彼の餌の情報は知り尽くしています。

 どうせ作るなら彼が喜ぶと、私も作ったかいがあるというものです。 

 

「うん、まさくん好きでしょ?」

「うまそうだな」


 まるで餌を前にしている犬のように涎が垂れてますよ?

 はしたないです。

 ……ん?

 

 何でしょう、この気持ちは……。

 心が躍るようなこの感覚……。

 まるで彼が喜んでいるのが嬉しいような感覚……。

 なんでだろう?


 わかりません、どうしてこのような気持ちになるのかが……。

 不思議です。 


「えっと、弁当別に作ってるの?」

「え、うん……」


 それはそうでしょう。

 だって私は小食でそんなに食べないし、そうなると自然と別に作るのは当たり前です。

 私の言葉に彼女は深く溜息を吐きました。

 まるで、まじかこいつみたいな顔です。

 超不愉快です。


「マジか……」


 恋愛脳は何か言いたげな顔で私を見つめてきます。

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