お家デート

 バス停で待ち合わせたボクは、バスからカリンさんが降りてくると、ベンチから立ち上がる。


「よす!」


 片手を挙げ、カバンをしょい込むカリンさん。

 今日は裾が長いパーカーと、ショートパンツを履いていて、いつもより健康的な印象があった。


 片手には買い物袋があって、食材が入ってある。


「一つ、持つよ」

「いいよ。軽いし」


 軽々と持ち上げ、にっと笑う。


「それよか、さ。手、繋ごうよ」

「う、うん」


 離れてはいるけど、ボクはつい少し遠くに見える家の方を気にした。

 お姉ちゃん達、気合が入ってるので、あまり刺激したくないな、とビクビクしているのだ。


「あは。小さ~い」


 ぷにぷにと手の平を押され、しっかりと握られる。

 軽く握られただけなのに、手の包み込み方で、ボクより力があるんだな、と伝わってくる。


 握った手を振り、笑顔でカリンさんが聞いてきた。


「お姉さんは?」


 やはり、気にしているようだ。

 お姉ちゃんは敵情視察のため、モニターしているので、「いない」と言えと念を押されている。


 仲良し作戦のために、相手を知る事から始めるみたい。

 お姉ちゃんを説得したのは、他の誰でもない安城さん。

 ぶつくさ言ってるお姉ちゃんは、黙らせられるので、もはや敵ではなかった。


「……いないよ」

「お出かけしてるのかな」

「う~ん。美術部だし、コンクール近いから」

「そっか」


 手が強く握られた。


「じゃあ、……二人きり、ってことでいいのかな」

「うん」


 カリンさんが妖しく笑う。

 唇を舐め回す舌が、とても艶めかしく動いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る