089 さらば八月

 2023年8月31日

ひぐらしの戦慄わななきがないままに午前4時半過ぎ、海月山は明けたんでした。

……不思議。どうして? 


あの地底深くからのような希求とも懇願ともつかないような金属的伝搬音が曙へと、

今朝に限ってわきたたなかったんです。──なぜだか。

山の夕をも震撼とさせる、ぼっち暮らしにはせつなすぎるほどな高周波の音律が。




でもおかげで私はたちまち、眠りへと引きもどされた。


そして再び目覚めたらすでに十時近くにもなってて、

遅い粗末な朝食で腹を満たしていたら、とうに昼。

こうして今日も結局、ぬるい扇風機の風にぐうたら当たっただけとなった。






もう日暮れを迎えるしかなくなった八月最後の日。


どこかしら恐ろしいような気持ちで、待っている。


夕べの刻。はたしてひぐらしは鳴きだすやら。 どうやら。



でも、どちらにしたって、

それがどう何に作用する? 

暗示にでもなる? 


問題は、ただただぐうたらだった八月が今日で終わりだしてることなのに。


ならばそんな八月とは潔く訣別、迎える九月にどう…めざめるかでしかない。

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