地獄の沙汰も金次第

 金の切れ目が縁の切れ目とはよく言ったもんだ。

 事実そうなった。


 妻のことはどうでもいいが、娘のこれからは心配している。


 きっと彼氏ができて、お前に娘はやらんと追い返したりとか結婚式で涙を流したりとか、孫を可愛がって怒られるとか、そういうイベントがあったのだろうけども、今となっては存在しない未来の話。

 現実はひとりぼっちの病室の中にある。


 咳をしても一人。


 誰も見舞いに来ない(そりゃあ、そういうご時世なんだから仕方ないっちゃ仕方ないよ。ボクだってそれぐらいわかっちゃいる。わかっちゃいるけど、理解していることと納得できるかどうかは別問題だからネ)。


 いや、咳なんてしたら人が離れていっちゃうような。

 この世界。


 病室の窓から枯れ葉が見える。

 あの葉がハラリと落ちたらボクは、……なんてもの思いに耽っていたら風に煽られて落ちてしまった。


 おわり。

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