母に関係を認めてもらうには?

 美咲の部屋のベッドで寝ているのを、母さんに目撃された俺。

言い訳を考えないといけないのに、まったく浮かばないぞ…。


「翔、あんた何で美咲のベッドで寝てるのよ?」


「それは…」

頭をフル回転させたいが、寝起きでは無理だろ。


「…って、そんな事は後で良いの。早く美咲を起こして朝食を食べなさい!」


「わかった…」


母さんは扉を閉め、1階に下りて行った…。


何とか助かったようだ。考える時間ができたのはありがたい。

今日中に訊かれるだろうから、考えを早めにまとめておこう。


…その件は先送りだ。今は急いで美咲を起こさないと!


「美咲、起きろって!」

彼女の肩を揺らす。


「う~ん…」

意識はあるようだが、目を開けようとしない。起こし方が甘いのか?


そういえば初めてこの部屋で寝た翌日、美咲がなかなか起きない俺の股間を触って起こしたことがあったな。今度は俺がそうする番じゃないか?


…下を触るのは、勇気がいるな。軽く胸を揉むぐらいにしよう。

そう決めた俺は、早速揉んでみる。


あれ? 妙に柔らかいな。もしかしてブラしてない?


「お兄ちゃん、意外に大胆だね♡」

いつの間にか目を開けていた美咲が、揉んでいる手を観ている。


「起きてるならそう言ってくれ! いつもの起きる時間は過ぎてるんだぞ!」


「知ってるよ。お母さんが来たのは予想外だけど、お兄ちゃんが起こしてくれると思って寝たふりしてたの♪」


マジかよ…。俺は美咲に振り回されたのか。


「…いつまでも、こうしてはいられないね。早く朝ご飯を食べよう」

体を起こした美咲は、部屋を出た。


俺も急いで後を追う。



 朝食中、母さんは何も訊いてこなかった。となると、夕食中に訊くんだろう。

どういう言い訳をすれば、母さんは納得するだろうか?


罰が終わり、兄妹個々の部屋がある以上、俺と美咲が同室で過ごす理由はない。

俺は高2、美咲は高1だから、同室を好むとは考えないはず。


説得力がなければ『俺はシスコン』で片付けられるだろうな。

…それは間違ってないと思うから、反論はしない。


その後、美咲と一緒に登校し昇降口に着いてから、帰りも一緒に帰宅することを約束してから別れた。



 「ねぇ、お兄ちゃん。布団はどうするの?」

美咲の部屋に入って間もなく、彼女が訊いてくる。


昨日は咄嗟にベッドを借りたが、美咲には狭い思いをさせてしまった…。

今日は1人でゆったりと、ベッドを使って欲しい。


「今から持ってくるつもりだが?」


「良ければだけど、これからずっとベッドで寝ない?」


「俺がいると狭いだろ?」


「そんな事ないよ。お兄ちゃんが隣にいると落ち着くもん。けど、掛け布団の大きさは足りなかったね…」


シングルサイズの掛け布団だからな。当然の話だ。


「じゃあ掛け布団だけ持ってくるわ。…それで良いか?」


「うん」


俺は着替えた後、掛け布団を美咲のベッドの上に置く。

その後、タブレットやヘッドホンといった愛用品を再びこの部屋に移動させる。


…俺の布団がないだけで、広く見えるな。

昨日の夜も思ったが、意識がはっきりしている今は尚そう思う。



 美咲は学習机で宿題中、俺はベッドで音楽を聴いている時に扉をノックされる。


「美咲、ご飯よ。…翔もそこにいる?」

扉越しに話しかける母さん。


「いるぞ」


「そう…」

俺の返事を聴いた母さんは、階段を下りていく。


俺の居場所を訊いたのは、空室になった俺の部屋をノックするのは時間の無駄だからだ。誰だって、手間は省きたいし。


さっきの母さんの反応からして、夕食中に訊かれるだろうな。

俺は覚悟を決めて、美咲の部屋を出る。

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