茶うさぎから白うさぎへの手紙 2023
メラニー
1月
1 懐かしい飽満
こんにちは。
改めてエッセイを新しく始めようと思います。
今初めてこのエッセイを見た方はここからでもいいですし、よろしければ2021年から書いていますので気になるタイトルのものだけどうぞ♪
新年が明けましたね。
言うまでもなく私は日常の延長で、なーんにも変わらずのお正月でした。一年の計は元旦にと言うけれど、それが当たっているなら今年は編み物をしまくる一年になるでしょう。どちらかと言えばお針子なのになぁ。
昔は……、子供の頃はお正月が楽しみだったなぁと思いだします。何が楽しみなのかわからないけれど、とにかく特別感を感じていたのでしょう。まだ小学校にも上がっていない頃。
楽しみ過ぎて早く起きたら、寝正月とまでは行けないけれど、お昼頃までは寝ていたい親に早く起き過ぎだと叱られ。現在親は、高齢あるあるで早起きです。なんと年月が過ぎたんだろう。切なくなってしまう。
あの頃は、昼前にお雑煮を食べて、市内の母方の祖父母の家へ行き、おせちを食べたりお年玉をもらったり、隣県に住んでいる伯父さん夫婦に従弟もやって来て。とても狭い祖父母の家がにぎやかでぎゅうぎゅうになって。
そのうち初詣に行こうか?という話になり、数駅離れた国内参拝者数がトップクラスの神社へお参りに行くのです。あの頃は今ほどでは無かったけれど、それなりに混雑していて。子供の足では境内を回るのも広くて大変でした。
家に帰るのは、脳が鈍るような正月特番を見続け、何が面白かったのか分からない福笑いやかるたで笑いすぎ、祖父母の家でお腹が減らないのにおせちを詰め込まれて胃も体力的にも疲れて、眠たくなってから。今思えば正月は退屈と飽満が不思議に同居した時間でした。それよって日常とは違う疲れが襲って来る。
寝てしまった私を抱っこして帰ってもらったこともあるし、起きて車まで歩く道中の風の冷たさや車の冷え冷えとした感じを思いだします。
祖父母もいて伯父さんおばさんもいて。その時は気が付かなかったけれど、とても幸せだったんだなぁ。良い人たちが周りにいてくれるだけでどれだの幸せな事なのか。大人になってそれがとてもありがたい事なのだと心底思う。
祖母はいつぞやに書きましたが、コロナ前に親族みんなに見守られながら穏やかに病院で亡くなりました。このご時世になって、それがどれだけ幸福なのか思い知ります。祖父の事も前に書きましたが、祖父はもっと前に肺がんで、苦しんではいましたが、親族がそばにいる事が出来ました。
短いようで長い人生を、しかも戦中・戦後を生き抜いて、最後は穏やかで温かい気持ちで旅立ってくれないと辛いです。
数年前、誰にでも優しかったおばさんも亡くなって。優しすぎるので病気のことは家族以外には知らされていなくて。突然の訃報でした。大切な者を置いて行く側は置いて行かれる者の事を心配する事は難しい。一人で行かないといけないのだから。未経験の未知のところへ。仕方が無いとはいえ……。でも最後、家族は傍にいられたようで。
そして伯父さんが今、闘病している。コロナ禍でありふれた話です。子供ですら面会に行けない状態。
真面目で馬鹿正直で優しくて、学生の頃から勤勉で平屋で隣で兄妹が寝ている場所で少しの明かりで勉強を続けて、大企業に就職して。休みは檀家だからお寺の用事をしたり、1人になった祖母の様子を見に行ったり、私の部屋の掃除をしてくれたこともある。大人になって「駅まで送るよ」と車を出そうとすると、悪いから、歩けるから大丈夫だからとすっごく気を使う人。人の悪口も絶対言わないような、教科書のような人。そんな人が、奥さんを亡くし、ショックで痴呆が出始めて、親せきが知らない間に施設に入っていて。そこから(多分職員さんたちに気を使いすぎて)体調を崩して入院して手術して、そのまま呼吸器までついて、もう家には帰れなくなってしまった。
聖人のような伯父さんの老後が、家族もお見舞いに行けないような状態で良いのだろうか。良いはずがない。幸せでして欲しい。でも、これが世界中で今起こっている事なんだろうなぁ。
祖母の死が、どれだけ幸せな亡くなり方だったんだろう。誰かのために人生を使って来た人はみんな、大切な人達に手を繋いでもらって「ありがとう」の言葉が飛び交って、耳で自分が作って来た「幸せ」を聞きながら旅立ってほしい。親族だけじゃない。世界中の人がそうであって欲しい。
あの頃子供ながらに、お正月の幸せの飽満はとても疲れて頭が痛くなったけれど、あれは幸せが体で受け止めきれないくらい覆いかぶさって来ていたからなんだなぁと思う。
ここまで歩いてこなければ分からなかったなぁ。あの頃にそれに気が付くことは無理だったけれど……あの頃の私にこれが幸せなんだよ、って言ってやりたい。
三が日。良いお正月をお過ごしください。今年のお正月は二度と戻って来ないですから。
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