第15話 Cランククエストと戦乙女の加護

 翌日俺はいつもと同じように冒険者ギルドでクエストを探していた。やはり、サハギンの鱗の採取クエストがやはり一番楽かな……訓練にもなるし。

 そんな事を思っていると、一つ見慣れないクエストが貼られているのに気づく。


☆☆☆

『Cランククエスト「サハギンの宝玉」を入手して欲しい


 僕の彼女は世界一美人なんだけど、とっても我儘なんだ。どうやら、今度はサハギン達が自分の巣に持っている魔力を込めた宝玉が欲しいらしいんだ。お金は払うから頼むよ。ああ、でもこれをつけたら彼女はもっと美しくなってしまうだろうな♡


 依頼主 オゴラサレ=フラーレ男爵

☆☆☆


 なんか所々イラっとする依頼分だが報酬は三層で受けられる依頼にしては破格だ。それにランクもちょうど一つ上なので受けることができる。

 だけどサハギンの巣か……



「あ、アレイスターさん、おはようございます」

「セイロンさん。昨日はその……」

「気にしないでください。私もとってもうれしかったんですよ。その依頼が気になっているんですか?」



 涙をみせてしまい気恥しさを感じていると、セイロンさんは気にしていないとばかりに笑顔を浮かべてクエストを指さした。



「はい、結構報酬が良いなと思いまして……依頼主はどんな方んです?」

「ああ、この人いつも女の子に珍しいものをプレゼントしてはフラれているんですよ。ですが今回の場所はサハギンの巣ですからね……中々引き受けてはもらえないかもしれません」



 セイロンさんがすこし小さくため息をつく。サハギンの巣は三層なのに、なにか問題があるのだろうか? 俺が疑問に思っているに気づいたらしく解説をしてくれる。



「サハギン自体はそこまで強力な魔物ではないのですが、水中では厄介じゃないですか。サハギンの巣は沼地の奥にあるんですよ。だから、主に三層を狩場にして居る冒険者さん達には厳しい相手なんです。かといって、沼地の奥までいってサハギン達を倒せるような実力のある冒険者さんにとってはあまりおいしくない依頼なんですよね……」

「なるほど……では、もしもですよ。水の上を歩ける冒険者とかがいたら楽勝っていう事でしょうか?」

「そうですね、下からの奇襲には気をつけなければ行けませんが、そこまで苦戦はしないでしょう」



 セイロンさんの言葉に俺は笑みを隠せない。俺にはカイニスの靴がある。幸いにもサハギンとの戦いには慣れてきている。



「セイロンさん……その依頼受けます」

「……本当ですか? その顔……何か考えがあるみたいですね。うふふ、アレイスターさんも心強くなりましたね」

「まあ、俺ももう、Dランク冒険者ですからね」

「うふふ、本当におめでとうございます。アレイスターさん」



 ちょっと調子に乗ったことをいいつつも、俺はダンジョンへと向かうのだった。





 そして、再び三層へにきた俺はブリュンヒルデを召喚する。



「今度はサハギンの巣ですか……ちょっと面白そうですね。マスター」



 話は聞いていたのだろう。魔物の巣にいくというのにすごい楽しそうである。そんな彼女を頼もしく思いながら俺は一つお願いをする。



「そうだな。でも、その前にこの前手に入れたブリュンヒルデの加護をつかってみてもいいかな?」

「昨日マスターに宿ったという力ですね。構いませんよ。私も気になります」



 勝手に力を使われること気にするどころか目を輝かせる彼女の反応で信頼されているようでちょっと嬉しくなる。

 そして、俺もちょっとテンションが上がっているのだ。だって、強力な力を持つ戦乙女の力を行使できるのだ。楽しみでしょうがない。

 沼地に近付き、こちらにやってきるサハギンに剣を構えてスキルを発動する。



「喰らえ、俺の新しい力を!! 愛しき我が守護者よ、仮初の力を与えん『戦乙女(ブリュンヒルデ)の寵愛』!!」



 俺の詠唱と共にどこかからか神々しい力が湧いてきて剣の先に集まり……それは純白の雷となってサハギンを焼き焦がす。

 おお、すげえ。これはブリュンヒルデの使っていた神の雷だ。ろくにスキルもなかった俺が魔法のような力を使う事ができたのだ。感動のあまり泣きそうになっている俺をよそにブリュンヒルデが何故か、顔をまっかにしている。



「どうしたんだ? 変な顔をして」

「いや、マスター。なんですか今のスキル名は!! 確かにマスターの事は好意的にみてますが、なんで私の名前があるんです? なんか私が告白したみたいになってるじゃないですか!!」

「えー? かっこいいと思ったのに……」



 どうやら、お気に召さないようだ。だったら、もう一つの案にするか。



「じゃあ、『我が愛しの守護者の力を喰らうがいい!! ラブサンダー』はどうだ?」

「……あれ、もしかして、さっきの詠唱ってマスターが自分で考えたんですか?」

「ああ、魔法じゃなくてスキル扱いだからな。特に詠唱は必要ないんだが、やっぱり詠唱があったほうがかっこいいし、はったりが効くからな。では、ラブサンダーに……」

「いえ、『戦乙女(ブリュンヒルデ)の寵愛』にしましょう」

「いや、でも……」

「いいから、それよりもまた、サハギン達がせまってきましたよ。マスター」



 かつてないほど強く押し切られてしまった。気に入ってたんだけどな……ラブサンダー……そして、仲間がやられたことに激高したサハギン達がモリを構えてやってくる。



「フハハハハ、悪いな、今の俺は阿修羅すらも凌駕する存在だ!! ラブサンダーの餌食になるがいい!!」

「もう、本当に嬉しそうですね。私も喜ばしいです。でもその技名はやめましょう。ああ、でも、このままでは私の出番がすくなくなったりするのでしょうか……」


 

 今まであこがれていた魔法みたいなスキルを手に入れて無茶苦茶テンションが高い状態で俺達はサハギンと戦うのだった。




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やはりラブサンダー!! ラブサンダーはすべてを解決する!!


次回はサハギンの巣です。沼地の奥にあるサハギンの巣でアレイスターを待ち受けるものは……



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