第8話 俺は皇太子2
ガリア帝国では五歳になったら神殿で魔力量を図るのが習わしだ。
そこで量と質が初めてわかる。
俺の魔力は量と質を合わせても世界最高峰と断言された。
これで貴族のクソどもが大人しく……はならなかった。
別の手で攻めてきやがった。
茶会だ――
魔力量の鑑定が済めば貴族共の「茶会」に強制参加させられるようになった。これが子供の頃は嫌で嫌で仕方なかった。茶会デビューは社交界デビューの前菜のようなもの。その頃には名実共に皇太子としてお披露目されていたため親子でグイグイくる。既に茶会は「見合いの場」と化していた。
訳も分からず親に言われるまま来た令嬢はまだマシだ。厄介なのは親の思惑と合致した令嬢。あれは令嬢と言うよりも「肉食獣」だ。周りの少女を牽制しながらの俺へのアピールが凄い。将来がかかっているからか、どれだけ罵ろうが邪険にしようが食らいついてくる。
城の空気が良くなった。
これも叔父上の助言のお陰だな!
「それは無理ですね」
「え~~……叔父上なら妙案を思いつくと思ったのに……」
「申し訳ありません」
「ね~~、本当に何の方法もねぇの?」
「そんなに婚姻するのが嫌なんですか?」
「絶対に嫌」
「何故です?」
「ん?」
「何故、そこまで婚姻を嫌がるのですか?」
「あれ? 叔父上、
「皇太子殿下が『頑ななまでに婚姻を拒んでいる』としか伺っていません。それと、母君を『ババア』呼ばわりするのはいけませんよ」
「いいじゃん、ここには俺と叔父上にかいねーんだしさ。それに、外ではちゃんとしてるだろ?俺」
「仕方ないですね」
「へへ」
「それで、結局どういった理由で婚姻を拒んでいるのですか」
穏やかに微笑みながらも理由を言うまでは帰さない、という空気を放つ叔父上。
これは誤魔化せないか……。
「俺には『理想』があるんだ」
「理想ですか?」
「そう! 父や祖父みたいに後宮にいっぱい女を囲い込むんじゃなくて、たった一人を妻にしたいんだ。だからさ、妻になる女には理想通りじゃないと婚姻したくねぇ」
「そうですか……因みにどのような女性が理想なのですか」
「それは……」
こうして俺は『理想の女性』を叔父上にも話して聞かせた。
全て語り終えた後、叔父上はとてもいい笑顔で「皇太子殿下はお若い」という謎の感想をもらった。
「皇太子殿下が婚姻に乗り気でない理由は理解しました。ですが、その理由だけでバレッタ公女との縁組を断わる事はできません。今回の件は大臣方も大層乗り気ですからね」
「げっ……
「残念ながら違います。とはいえ、今回は皇后陛下と大臣達との思惑が一致した結果でしょう」
「思惑?」
「はい。皇后陛下は皇太子殿下に早く正妃を迎えさせ一日も早い世継ぎの誕生を望んでいます。それに伴いバレッタ公国の不可解な謎にも大いに興味を抱いている様子。大臣達にしても皇太子殿下が婚姻すれば自分の娘や孫、または縁者を側妃に送り込みやすくなります」
「……側妃いらねーんだけど。ていうか、あの狸オヤジ達の事だからてっきり正妃を望んでんのかと思ってたぜ。側妃でもいいのか……意外だ」
「勿論、側妃よりも正妃の方が良いに決まっています。ですが、
前例……
「まぁ、皇太子殿下がどうしても婚姻をしたくないと仰るなら、それ相応の理由をご準備なさるといい。
流石は叔父上!さっそく準備に取り掛かろう!!
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