第51話 月曜日のゆずの香り
ハンドクリームを買うときは、テスターで必ずテクスチャー、香りを確かめるのはてっぱんだ。
内容成分が良いとされるハンドクリームも、ベタつくし、長くベタベタ感が残ったり、香りが好ましくないものは絶対選びたくはない。
1日に何回も使うものだし、毎日使うからこそ苦手なものだと、かなり辛い。
一年前の冬、ゆずの香りのハンドクリームを買った。
ゆずの香りの数ある商品のなかで、とても良い香りのを見つけられたと自負した程である。
さて、この冬も同じハンドクリームをと、あちこち探したが、同じメーカーのワセリンしか見当たらなかった。
店員にたずねてみたり、行った先、通った先で目をこらして探す日々に、いよいよ諦めはじめていた頃だ。
食器などの生活雑貨を扱う店をなんとなく見ていたら、お気に入りのハンドクリームが三本並んでいる。
先月、その店を数回のぞいた時にはなかったし、ハンドクリームを売っている感じの店ではないので意外な驚きだった。
小さめスタンディングチューブ型のボディに描かれているのは黒っぽい点々と影と葉の、奇妙なバランスの二つの柚子と半割の柚子。そして柚子の上部には、何故か黒っぽい富士山が柚子より小さく描かれていた。(もしかして遠近法なのか)
山のサイドには、黒いナスと、たぶん、そこから考えて、これはタカ?
初夢に良いとされる絵として見たことがあるかもしれないあ
富士山の上には放射状の御光にも見える棒、いやラインが何本も描かれ、取り囲むように配合説明の活字が並んでいた。
絶妙な奇妙感。
どうよ、この柚子っ!とドッカーンと目立たせ、ありがたや〜、ありがたや〜、と手を合わせたくなる絵柄の威力。縁起物なのだろうか。
何故このデザインになったのだろう。
不思議だ。
ただ、本当に、ありがたや〜の気分になったのは間違いない。
嬉しさで三本購入。未開封ならもつそうだ。
ありがたや〜、ありがたや〜。
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