第7話 迷宮の主


 僕たちはその後、迷宮ダンジョンをあっという間に踏破した。


 狩人のトマスのアドバイスに従って次々とトラップを回避し、襲いくる魔物達は主にアリサとカイが倒していく。


 カイの能力は『盾』の加護で、身体を強化してくれる能力のようだ。

 そのため、カイは素手で魔物に殴りかかるというワイルドな戦闘スタイルだった。

 当然、どれだけ硬い敵を殴ろうが、拳を怪我したりはしないという。


 頭脳派のオリヴァーが地図を作成し、ソフィアはランタンで手元を照らしながらオリヴァーに寄り添う。


 そして僕は剣を使うこともなく、大人しくアリサに腕を掴まれ、カイに恨みがましい目で睨まれるという謎の苦行に耐えていた。


 ……カイくん、そんなに睨まれてもね、僕はアリサを振り解けないんだよ。怖いから。



 あっという間に辿り着いた迷宮ダンジョンの中心部。

 そこで待ち構えていたのは、人間どころか象をも丸呑みに出来そうなほど大きな、蛇の魔物だった。


「蛇の精霊? 下位精霊かな?」


「蛇……でしょうか。何か違和感があるような……」


「とにかく、鎮めるぞ。森の精タピオよ、頼む!」


 オリヴァーが腕を振るうと、蛇の周りに棘の生えた茨が顕現し、あっという間に蛇を締め付ける。

 だが、蛇は力任せに茨を引きちぎろうと、暴れている。硬い外皮は茨の棘をものともしないようだ。


「――よ、水へと導け!」


 続いてソフィアが七色の光を身に纏い、少しして蛇の上から滝のような水が降り注ぐ。

 それと同時に薄い氷壁を張ることで、こちらに飛沫しぶきが届かないような配慮もしている。


雷精トール! 全力でお願い!」


 すかさずアリサが特大の雷を落とし、見事に蛇に直撃した。

 茨で身動きを奪い、水で電導率を上げ、雷で仕留める。

 惚れ惚れするような、見事な連携だ。


 茨を引きちぎろうと暴れていた蛇の魔物は、動きを止めていた。


 茨と氷壁が消え、蛇は冷たい地面に身を横たえる。


「……やったか?」


「……俺が確かめる。――アイギス


 カイは、全身に鋼のような光を纏い、蛇に近付いた。


「これは……? ――っ! まずいっ! 伏せろっ!!」


 カイがそう言った瞬間に、蛇は爆発四散したのだった。


 ――毒茸トードストゥールの胞子を、撒き散らしながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る