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ウインクをしながら、ヒロインは言ってのける。
「文字通りの意味! わたしが悪役になってアダちゃんから追放されたら、この国は平和になるの。みんなが笑顔になる。そんな光景をさっき見たんだ。アダちゃんと……あと、なんかツノの生えた大きな人? が王様になってて、たくさんの人が幸せそうにしてた。だから、わたしは追い出される悪役になるよ!」
ツノの生えた大きな人ってのは、恐らくアダリーシアが言ってた魔王なんだろうな。そんな事を頭の片隅で考えながらも、ハインツは目の前で仁王立ちするヒロインの宣言を聞くことしかできなかった。
「とりあえず、さっきのでわたしが追い出される瞬間と追い出された後の未来は見えたんだけど……わたしがどうして追い出される事になったのかまでは見れなくてわからなかったんだよね。もう一回確認——」
「させてたまるかバカ! いいか、不要不急の未来予知魔法使用は禁止だ! わかったな⁉︎」
不要不急の未来予知魔法使用というなかなかなパワーワードがジークの手によって生み出された瞬間だった。ガミガミという効果音がつきそうな様子でリーゼルを説教する第二王子の様子は、まるで悪戯盛りの息子を持った母親のようである。俺様キャラから苦労人母属性にジョブチェンジした攻略対象を横目に、ハインツは手を挙げた。
「つうか、んなの未来見なくともいいだろ」
ハインツはアダリーシアから小説のあらすじを一通り聞かされている。もしもリーゼルが悪役を目指すのであれば、その行動指針も明確に助言できるだろう。そんな事を話すために口を開こうとしたが、目を輝かせたリーゼルが喋り出す方が早かった。
「そっか……そうだよね、誰の目に見てもわかりやすい悪い人のフリをすればいいんだもの! そういう人たちならいっぱい見てきたから、演技もできると思う!」
「いや、俺ある程度小説の内容知ってっからよ……まずお前はざまぁされればいいんだわ」
「ちょっと待て、リーゼルが追放されるのであればオレも悪役になる。どうすればいい? 城を荒らすか」
やはり第二王子も頭脳派っぽい顔立ちをしておいて脳筋らしかった。物騒な提案に頭を抱えながらハインツは反論する。
「いやいや、城を荒らすんじゃなくてだな……」
「うん、それだけじゃ追放するくらいの悪い人には見えないよ。……あっ! 悪役になるって事は、魔王を名乗ればいいんじゃないかな?」
「そうだな、見せしめのために王城を占拠しよう」
ノータイムでリーゼルの更に物騒な提案に同意した上に物騒な計画を挙げるジークを見て、なんだかハインツはこめかみの辺りが謎にズキズキと痛みを訴え始めるのを感じ取っていた。とりあえず物理的に悪役になろうとするのから離れてほしい。物騒のミルフィーユを作るつもりなのだろうか。マルガレーテが何故かキラキラと目を輝かせて発言した。
「予告状は送った方がいいでしょうか?」
「なんでいちいち発想がちょっと過激なの……⁉︎ お前らはざまあされればいいんだっての! まずイケメンどもを一人残らず攻略しろ!」
攻略という単語を聞いた三人の脳筋どもが首を傾げる。あっこれはまさか。ハインツの頭で悪い予感が浮上した。険しい表情を浮かべたジークが首を横に振る。
「待て、リーゼルに何の罪もない男を殺させるつもりか? それならオレがやる。手を汚すのはオレだけでいいはずだ」
予想的中である。どうしてこいつはこんなに物騒なんだよ。
「いや物理的な攻略をしろって意味じゃねーんだよ! お前のあだ名今日から脳筋物騒王子な!」
マルガレーテが、ぽんとハインツの肩に軽く手を置いた。嗜めるような、宥めるような苦笑いを浮かべて一言。
「そのネーミングセンスはちょっとどうかと思う」
ハインツはマルガレーテを二度見した。そして、息を大きく吸う。くわっと目を大きく見開いて、彼は心の底からの叫びを森中にこだまさせた。
「てめぇに一番言われたくねええええええんだが!?」
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