かするぜっ
その周りを動力チューブがまるで血管のように絡みついていた。
「怒張したピーーーーのようよお~~、シューちゃ~~ん」
マリアが叫んだ。
「ふふふん、波動砲装備は基本ですよっっ、基本っっ」
サクラギがドヤ顔でふんぞり返る。
マガジンの場所を確保できず一発しか撃てないが。
「…………ですヮ」
「…………なのジャ」
「当然ついていますヮよね(大砲が)」
ふう
少しため息。
「でもよろしいのですヮ?」
「? なのジャ」
「専用機なのでしょう?」
――専用機がこんな色物で?
レイカが、少し申し訳なさそうにシャルロッテを見る。
レイカは、一応芋洗い坂のスタッフだ。
「あっ……なのジャ」
シャルロッテは、何と言えない表情を浮かべた。
レイカが、三発赤い信号弾を上げる。
意味は、”敵味方構わずその場から逃げろ”だ。
「波動砲発射シークエンスに入りますヮ」
「さあ、逃げるのですヮッ」
一応同軍なので死傷者が出ると後でもめる。
現に”ドイッチェランド級”二艦は大慌てで逃げ始めた。
「”やまとん”が大気圏に突入する時間を稼ぐのジャナ」
大気圏突入時は無防備になるのだ。
「大気圏突入できる宇宙戦闘機はしばらくは稼働不能にしたからな」
――追撃は無い
レイカが無言でうなずく。
”穴熊作戦”の最終フェーズに入った。
「エネルギー弁閉鎖」
「エネルギー充填開始」
「セイフティーロック解除」
「ターゲットスコープ、オ―プンッ」
「エネルギー充填120%」
「対ショック、対閃光防御」
「うふふふ、こんな短期間で波動砲発射を三回っ」
――”波動砲発射(貧乏)侯爵令嬢”として後の宇宙に名をはせるのですヮッ
戦艦テルピッツが逃げやすくなるように少しずらして照準。
「嫁の貰い手がありませんヮアアアアア」
レイカの魂の叫び。
「波動砲発射アアアア」
「ちょっと待つのジャッ」
――テルピッツが回避しないっ
このままでは撃沈大破、死傷者が出る。
「くっ、またですノッ」
レイカが、すばやく
両手足全身を使ってレバーやボタンを操作。
波動砲の進路を強引に変えた。
◆
テルピッツ艦橋の真ん中に、アルフレッド第一王子が一段上の貴賓席に座っている。
斜め後ろに黒髪の侍女。
メインモニターには、波動砲の通過予想図。
かするようだ。
「うわああ」
「にげろおお」
アウディー侯爵とバイエルン伯爵が叫びながら逃げていく。
初老の男性が一段下からアルフレッド王子を振り返った。
テルピッツの艦長である。
”回避命令はまだなのか”
と彼の顔に書いてあった
「…………」
アルフレッドは無言で無表情だ。
黒髪の侍女がそっと後らから彼の肩に手を置く。
アルフレッドが振り向かずその手を取り、すぐに指を絡めた。
「まさか」
艦長は、アルフレッド王子があの侍女に会ってからおかしくなったと報告は受けている。
東和人の侍女っ。
「心中する気ですかっ」
アルフレッドは反応しなかった。
「くうう、ハードスターポードッ、全力で回避だっ」
艦長が叫ぶ。
テルピッツの巨体が急撃にロール。
床が斜めに傾いた。
「うわああ」
重力制御では消しきれず、艦内に転倒者が続出した。
次の瞬間、艦の横を野太い光の束が通過する。
ビイイ、ビイイ
警告音が鳴り響いた。
波動砲のエネルギーの余波で電装系がダウン。
真っ暗になった。
が、すぐに赤い非常灯が点灯。
「ちょ、直撃は回避」
――直前で波動砲が避けたような……?
「すぐにシステムを回復させろ」
「被害状況はっ」
「……損傷軽微、メインモニター復旧します」
白色灯と共にモニターが復活。
パッと艦橋が明るくなる。
メインモニターには、赤い炎を上げて大気圏に突入する、”やまとん”が映っていた。
「……アルフレッド王子、故意に本艦を傷つけようとした疑いで更迭させていただきます」
「そちらの侍女と一緒に監禁させていただきます」
銃を持ち肩にMPの徽章をつけた男性二人に連れられて、アルフレッドと黒髪の侍女が艦橋から出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます