おりるぜっ

「後部から着艦お願いします」

 マリアが無線でタイプゼロに言った。


「了解なのジャ」

 シャルロッテの駆る機体がやまとんの後ろに回る。

 表準的な宇宙戦闘機より少し小さい。


 宇宙戦艦、”やまとん”の後部ハッチが上に開いた。

 ミシン目の様な白い光のガイドビーコンが出る。



 飛行形態だ。


 中央に丸いメインカメラ。

 その四方に小さくて丸いサブカメラ。

 流線型のヘルメット。

 それに、鳥のくちばしのような本体ボディー

 前に突き出した腰のアーマーが機首のように続く。

 肩、二の腕、太もも、すね、本体、以外はアクチュエーターがむき出しである。 

 両腕から可動式フレキシブルアームに支えられたシールドブースター。

 シールドは小さく、20ミリ超電磁砲レールキャノンが突き出ている。

 胸部には、7,5ミリレーザー機銃二門。

 電磁防御壁バリアーは本体の周りのみ。

 

 最低限の装甲しかない、軽量、高機動な元東和皇国の主力機。


 ”零式艦上宇宙戦闘機”である。


 本来は濃緑色だが、シャルロッテ専用機用の、白に螺鈿細工が施されていた。



「王女様が乗ってますノ?」

 格納庫にゼロ式の着艦を見に来たレイカだ。

 与圧区画のガラス越しに益荒男ますらおが見える。


「ああ、ガゼフの王族は軍役について前線に出る習慣があるんだ」

 ――王女はパイロットを選んだ

 隣にサカイもいた。


 ヴィイイ、ヴィイイ


「ゼロ戦、着艦、入ってくるぞお」

 宇宙服を着たオフィサーの艦内放送と共に赤い警告灯が回る。


 星の見えるの宇宙から軽量な機体が、ソリ状の降着装置を出しながら艦内に滑り込んできた。

 

「お上手ですヮ」

 ――着艦が

「ああ、王女の傭兵マークスランクは、”B”なんだ」

 サカイが答える。

 着艦した零戦が、益荒男ますらおの横に移動される 。

 と同時に、天井にふちに沿ったスリットが開放。

 格納庫に空気が流される。 

 白い煙となって一瞬ガラスが曇る。

 赤い警告灯が青く変わった。


「格納庫、気密確保っ」

 格納庫に空気が充満した。

 サカイ達が、与圧区画から格納庫に移動する。


 バシュウウ


 タイプ零のコックピットハッチが上に開いた。

 小柄な少女が出てきた。


「サカイ師匠っ、お久しぶりなのジャッ」

 少女がヘルメットを外しながら元気に言った。


「王族女子語尾……ですヮ」

 隣に並ぶレイカが小さな声で言った。

 上位貴族女子語尾と、”金髪縦巻きドゥー・リー・ル”は上位貴族の証し。

 カツラ……ではあるが。

 小柄な少女がちらりと見た。


「ふむ、ガゼフ王国第二王女、”シャルロッテ”ジャッ、名乗れ」


「はっ、メイ・クイーン王国、バレイショ―(貧乏)侯爵家が娘、”レイカ”と申します」

 レイカがカーテシーをしながら言った。


「うむ……、おお、エキシビションマッチの動画は見たゾョ」

 シャルロッテが頷きながら言った。

 その後、隣に並んだ益荒男ますらおを仰ぎ見たのである。

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