第47話 欠陥奴隷は新たな標的を定める

 俺は掲示板を前に考える。


 受けるとするなら、森での魔物討伐の依頼が妥当だろう。

 討伐証明となる角を持ち帰ればいいだけで、簡単な内容なのだ。

 スキルもかなり増えたし、それらの使い心地を確かめてみたい。

 魔物が相手ならちょうどいいだろう。


 次の複合するスキルの候補も考え付くかもしれない。

 組み合わせることで効果が跳ね上がることは確定していた。

 似た系統はどんどん複合しておきたい。


(ただ、他の依頼も気になるんだよな……)


 静かに迷っていると、職員が新たな依頼用紙を貼りに来た。

 端に追加されたそれにふと注目する。


 用紙には、魔族の討伐補助と記されていた。

 それなりに急を要する依頼で、なるべく多くの冒険者を募集しているそうだ。


(こんな仕事もあるのか)


 魔族とは、変異を遂げた魔物を指す名称である。

 高い知性と魔物を従える能力を持ち、総じて人類の天敵として認知されていた。

 実際に魔族は本能的に人間を憎悪し、各地で大きな損害を出している。


 そんな魔族が、街からほど近い場所に発生したらしい。

 用紙にはそいつを倒す手助けをするのが仕事だと書かれていた。

 明らかに危険な仕事だが、記された報酬は他と比べて段違いに高額である。


 興味をひかれた俺は職員に質問をする。


「この依頼について詳しく教えてくれ」


「はい、魔族と戦う王国軍の援護に向かっていただきます」


 受付に戻ろうとしていた職員は、依頼内容を詳細を説明してくれた。


 聞けば数日前に、王国軍が魔族の拠点を暴いたらしい。

 彼らは魔族の討伐と拠点破壊を目標に、さっそく動き出したのだという。

 その中には英雄の率いる部隊も含まれているそうだ。


 軍は既に拠点へ向かっている最中で、加勢する冒険者を求めているとのころだった。

 英雄達を補助するのが主な仕事であり、基本的には向こう陣営の魔物を倒すだけでいいそうだ。

 本命の魔族は、軍と英雄が何とかするらしい。


(意外と深刻な状況なのか?)


 放っておくと、周辺地域に影響が及ぶのは言うまでもない。

 魔族によって魔物が凶暴化し、積極的に街を襲うようになるためだ。

 発生速度も爆発的に上昇するため、魔物の数が一気に増えてしまうらしい。


 おそらく魔族は、この辺りの地域を支配したいのだろう。

 俺にはよく分からないが、侵略の一環なのだと思う。

 彼らが徒党を組んで暗躍しているという噂は聞いたことがあった。


(英雄と魔族の戦いか……)


 俺は腕組みをして思案する。


 この依頼は受けるべきかもしれない。

 まず純粋に英雄を間近で見てみたかった。

 加えて魔族の死体に触れれば、貴重なスキルが得られる。


 あまり巡って来ない機会だ。

 ここは存分に利用した方が得に違いない。

 そうと決まれば、まずはサリアに相談しようと思う。

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