第23話 欠陥奴隷は評価を意外に思う
やがてギルドマスターは視線を外すと、深々とため息を吐いた。
彼は髭を撫でながら呟く。
「嘘ではない、か。これは驚いたな。魔女と欠陥奴隷の二人組とは」
「でしょ? きっと運命の出会いね」
サリアが嬉々として反応し、いきなり俺に抱き付いてきた。
反射的に引き剥がそうとするも、俺達の力関係でそれは危険すぎる。
彼女の気が済むまで人形として徹することにした。
その間にもギルドマスターは話を進めていく。
「冒険者登録は許可しよう。君達の活動に干渉するつもりはない。ただし、登録前に訊きたいことがある」
「何だ?」
ギルドマスターが再び見極めるような目をした。
「私の知る欠陥奴隷は最弱のステータスを持つ人間だ。どうやって大量のスキルを手に入れた。サリアの禁術実験による成果か?」
「違う。これは俺自身の……【死体漁り+】の力だ」
俺が正直に答えると、ギルドマスターはやはり沈黙して凝視してくる。
詳しくは分からないが、彼には嘘を見抜ける技能があるのかもしれない。
そう言われたら納得できるような視線だった。
すぐにギルドマスターは納得した顔で頷いた。
今度も嘘ではないと確信したらしい。
「死体からスキルを奪うスキルか。聞いたことがない例だ。まさか【死体漁り】にそんな隠し効果があるとは。ルイス、君は相当な幸運らしい」
「分かっているさ」
「そうだろうな。君は聡明だ。だから最弱ながらも生き延びている」
ギルドマスターは冷静に述べる。
俺のことを評価しているようだった。
彼ほどの人物に褒められるとは思わなかった。
前から自慢ではあったが、貧民街での生存術はそれなりに珍しいのだろうか。
ましてや俺のような雑魚には、抵抗する術がない。
街の治安改善にも携わるギルドマスターは、貧民街の情報も集めている。
その中に俺のことも入っていたのだと思う。
ギルドマスターは近くの書類棚から二枚の羊皮紙を取り出した。
それと机の羽ペンと合わせて俺達に渡してくる。
「冒険者登録はこちらで手配しておこう。必要事項を記入してくれ。文字は書けるか?」
「いや、書けない」
「それならサリアに任せるといい。ただ、読み書きはなるべく早めに習得すべきだろう。これから日常的に使うことになる」
俺がギルドマスターの助言を受ける一方、サリアは素直に書類記入を始めていた。
横から覗き込んで内容を確認してみる。
用紙には様々な項目があった。
名前や種族やレベルといった基本情報に加えて、得意な技能や戦闘経験等を書く欄もある。
小難しい内容は分からないものの、だいたいそんなことが記されていた。
サリアは俺に質問をしながら二人分の用紙を埋めていく。
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