第47話

◇◇食の騒乱 ハンバーグ登場!


カールがクラスのドアを開けると、クリスティナとアメリアはクラスの女生徒と賑やかに話しこんでいた。



二人はカールが入ってくると駆け寄り、昨日の結果を話してきた。


「カール様 ありがとう ございました マルガレータ様にも気に入って貰えたわ。」


「カール君 昨日はありがとう マルガレータ様にカール君の事を「宜しく頼む」と云われたと嬉しそうに話した。」



まぁ 昨日、マルガレータ母様から三人の事は合格だから、いつでも遊びに来るように伝えなさいと云われている。



ヨシ! 今日からクーガの学園内予選頑張らなくっちゃ


「処で二人ともクーガの学園内予選の申し込みはしたの?」



学園内予選の申し込みが始まっている。


「はぃ 学園内予選開始と共に二人で、一緒に申し込みはを済ませました。」アメリアの誇らしげな口調に並々ならぬ意気込みを感じた。



「じゃ~ 放課後、二人の練習相手に成ってあげるよ」



「あ あれ? カール様は学内予選の申し込みは為されないのでしょうか?」 クラスの女子生徒から疑問の声が聞こえた。



当然、生徒会室にいつも一緒に行っていたクリスティナやアメリアはカールが既に学内予選免除の生徒会選出で出場する事は知って居た。



「カール様は既に生徒会選出で出場メンバーに内定されています。」クリスティナとアメリアは自分の事の様に誇らしげに話した。




「わぁ~ 流石カール様 私 応援します!」 クラスの女子生徒からの声援に少し恥ずかしそうに


「ありがとう 頑張ります」と答えていた。



そんな一幕もあり、放課後にクリスティナやアメリアの練習に付き合おうとして居る所にアンネがクリスティナとアメリアも生徒会選出で出られる事を伝えに来た。



もう、こうなったら練習どころの騒ぎではない、アンネ、クリスティナ、アメリアの三人は一緒にクーガで頑張ろうと周りに居た女子生徒と共に騒ぎ出した。



カールはその騒乱を避けるように一人で帰る事にした。



朝から王都の彼方此方あちこちではアーレンハイト家が開発したサンドイッチとケーキの話題で持ちきりだった



これは マルガレータが意図して流した噂と王家から流れた物と財務局関係からの物が加わり王都内に一気に広がったのだ。 それに輪を掛けたのがキース・フォン・ロードメア導師が呟いた こんな忙しい時には昨日のサンドイッチが有ればと云うものだった 魔導師は魔法詠唱を行う事から音や呟きには敏感である。 自分達の上司である導師が呟いた サンドイッチとは何だろうと。。。気になって居た所に王国や財務局関連からの噂である。



好奇心が人一倍強いのが魔法師である。 昼過ぎには噂の元がアーレンハイト家で有ると辿り着くなど当たり前で有った。



アーレンハイト家ではマルガレータが料理長のクックを初めとして使用人全てに箝口令を引いて居た。



マルガレータに取って情報統制はお手の物である、そして情報が如何に重要で大事であるか知りぬいて居る。 既に弟のジョンビーノを介し一部の製法は非公開でと云う条件で商業ギルドに申請に行かせている。



製法が非公開なのはパンを発酵させる酵母菌、バター、チーズ、マヨネーズの製法である。


これ等が、全ての製造の元に成る。



白いパンの製造自体は非公開の酵母菌を混ぜて作らないとダメで有ると秘密の一部を伏せて公開していた。



また、白いパンを作るためには真っ白な小麦粉が必要になる この小麦粉の製造方法も非公開にされている。



明日からは王家を始め、多くの貴族家がパンや新しいケーキの製造許可を得に行列を作るだろう。


期間は十年である。 十年もあれば、人々に取ってパンや新しいケーキはアーレンハイト家が元祖と定着する事に成る。



今回の一連の申請でアーレンハイト家は莫大な収益を得る事に成る。


また、マルガレータの一番下の弟 ジョンビーノ・アスターはこの商いで莫大な富と名声を王国中に轟かせる事に成った。



話題の中心と成った実家に戸惑って居るのは長男で嫡子のアウグストや次男のエーリッヒである、予てよりの話を三男のロベルトや四男のジャンにも真剣に話す事にした。 



実家の変貌は最近になり加速してきていた。 二年前の様にのんびりと構えて居られ無くなってきた。


今年中にはアクションを起こさないと手遅れに成りそうな気配がする。



幸な事に、二年前からの準備である 色々な処には根回しが進んでいるのだ。。。?!




カールはクリスティナ、アメリアの練習が急遽取りやめになり早めに屋敷に帰ってきた。



其の侭、母マルガレータの元へ行き帰宅の挨拶をする。 マルガレータからは今日は帰るのが早いなと理由を聞かれたので、帰りがけのアンネから齎された事を話した。



マルガレータからは商業ギルドに申請をした話を聞いた。 これで面倒な事はマルガレータ母様とジョンビーノ叔父上に任せられる。



ホッとした事で久しぶりにハンバーグが食べたくなってきた。



そう云えば、この世界にはハンバーグが無い? 何故だろう。。。


ハンバーグが出来ると、一気にあの懐かしのジャンクフードが出来る。 そう ハンバーガーだ!



考えたらもう、頭の中はハンバーグしか思いつかない。


頭の隅に残って居た知性が警鐘を鳴らしていたが無視してしまった。



母の執務室を後に調理長の元へ向かう。 料理長は既にカールが異常な料理を作る事に慣れて来ていた。 カールからの色々な注文に無条件反射の如く従う。



今回も「料理長! 夕食の支度は?」


「はぃ! カール様 これから行おうとしたところです」 



「じゃ~ 予定を少し変えても大丈夫?」



「どんな事でしょうか?」


「実はまた、新しい料理を思いついて料理長に作って貰おうかと。。。。」



クックは既にカールから云われる新しい料理と云う言葉に未知への期待と新たな興奮を覚えるようになっていた。



「カール様 喜んでお手伝いをさせて頂きます。」



カールは早速、クックに材料を指示する。 最近のアーレンハイト家にはミルクと卵の在庫が増えている。


今回もやはりミルクと卵を使うのだ。



今朝のパンの残りを小さく切りミルクに浸して柔らかくする。 ステーキとして使った肉の残りが沢山あった。 これはどうしても大きなな肉の塊から食べやすい大きさや形に整える時に出てしまう。


その残りも交えて肉の塊を細かなひき肉にする。


更に根菜の玉ねぎをみじん切りにして炒め 卵にミルクに浸したパンとひき肉を混ぜ、塩コショウで味を調えカールの靴底位の大きさに成型してフライパンで焼き、竈の熱で仕上げをする。



最後に色取り良く野菜を添えて完成である。好みでバターとソースを混ぜて作ったソースを掛けると味にアクセントを添える。



今回は調理長のクックが始めに試食を行った。


「うぉ~~」クックの雄叫びが食堂中に響き渡った!



「カール様 何ですか? この柔らかな肉は、そして溢れ出す旨味を含んだ肉汁 もう訳が分かりません!!!」



調理室に居た、残りの調理人もクックの言葉から自分がしていた料理を忘れクックの周りに集まってきた。



周りの料理人からも絶賛の声を聴きながら、ハンバーグの成功を確信した。



暫くして、夕食の時間に成りマルガレータ母様やカトリーヌ姉様が食堂に入ってきた。


調理長のクックが今日はわざわざマルガレータに料理の配膳を行った。



マルガレータもクックの配膳を不思議に思いながらも静かに夕食の時間が始まった。



「クック! この黒い肉の塊のようなものは? それに私はこんなに食べられなくてよ?」


マルガレータは始めにハンバーグの色に驚きつつ、そのボリュームに拒否感を表した。



「マルガレータ様 どうか、一口 お召し上がりください?」



マルガレータはクックの言葉でハンバーグにナイフを入れた。 ハンバーグは想像外の弾力で何の抵抗も無くナイフを受け入れた。 余りの柔らかさにマルガレータは目を見張る。



それから一口食べて 「クック! これは?」



「はぃ マルガレータ様 これはカール様が考案されたハンバーグと云う物です。 私も試食を致しましたが 肉の柔らかさと肉汁の多さに驚きを禁じえませんでした。」



「また、カールか。。。。」母の呟きと溜息



カトリーヌ姉様は一心不乱にハンバーグを食べている



「マルガレータ母様 このハンバーグをもう少し小さくして、パンにサラダと一緒に挟んで食べるとお昼の忙しい時に最適だと思います!」



カールからこのハンバーグの可能性を指摘され、マルガレータは新しい商機を思いついた。



溜息をつきながらマルガレータは再度、全使用人にハンバーグの事で箝口令を引いた。



これも、弟のジョンビーノに任せるか!



カールからは新たな火種の予感漂う一言が。。。。



「実はマルガレータ母様 今度 交際を申し込まれた三人の家に挨拶に行こうと思うのですが、新しいケーキ以外にも何か土産に持って行ってた方が良いでしょうか?」



「カール! まだ 何かアイデアがあるのか?」


「色々と考えられることは有ります マルガレータ母様はどの様な方向性をお望みでしょう?」



「参った! これだけの物を考えているのにまだまだ、引き出しがあるとは。。。 でもカールの云った方向性も考えなくては!」



「例えば、新しいケーキと同じであれば、少しアレンジした物も有ります。  また食事系であればパンに替わる物も有ります。」



「何? そんな物があるのか! カールとクックは食後に私の執務室へ来てくれ!」



カールの一言で将来、起こるであろう騒動が目に浮かぶようだった。



まだまだ、食による騒乱は続きそうである。

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