第41話
◇◇交際宣言は突然に!
一気に面倒な仕事を片付けたマルガレータはアーレンハイト家に起こった数々の出来事を振返ってみた。
やっぱり、始まりはカールの目覚めの儀式から始まるようだ。
次にカールの担当従者が初日で手に負えなくなった 読み書きに計算など通常は年単位での努力の積み上げで物にするものだ。
そして魔法や武技は既にアグネスやマティルダでさえ凌駕している。
更にマティルダへは戦略や戦術と云う、私も余り理解できて居ない考え方を示唆していた。
そしてマルガレータが長年、頭を悩ましていたアーレンハイト家の莫大な借財もカールによって一気に解決をしている。
最近では学院の入試である。 通常は絶対に解けないとされる問題を解き、学院始まって以来の天才として満点を取った。
この段階でマルガレータはカールの事を賢者ではないかと考えた。
カールは慎重な性格を見せる時も有るが、基本 抜けている(家族の前だけかもしれないけど!)
そして、今回の食の改善とそれを新たな財源へと発展させた。。。。。 引出せば更に引き出しは有りそうだ!
最近はカールの異常性には驚かなくなってきていた。(自分の精神安定の為に。。。)
さぁ~ もう直ぐ、カールが戻る。 どんな引き出しが有る事やら? うふふふ
その頃、カールは 「ふわぁ~~ぁ やっと終わった!」居眠りしていてもカールには全て話の内容は理解できていた 先生方も今では注意もしなくなった。
入学当初、他の先生がカールが欠伸をしている事を見つけ、そんなに暇ならと最上級生向けの問題を出したら、迷うことなくその場で正解を出してしまった。 下手に難問を出して、カールから逆に質問をされたら、答えられるか分からないからだ。。。
そんな事が2~3回有ってからは先生方は触らぬ神に祟りなしとばかり、相手にしなくなってしまった。
「さてと! 帰ろうかな~」
「カール君 もう直ぐ 武の祭典、クーガの学内予選が始まるでしょ! 少し練習に付き合って欲しいな~」
「カール 一緒に帰ろぅ 帰りに美味しいお茶とお菓子のお店を見つけたんだ!」
「カール君 たまには、私達ともお話して~」
など、今日もクラスの女生徒たちから声が掛かるが
「カール君は既に私達と先約があってダメよ!」クリスティナとアメリアの鉄壁コンビに今日も拉致されて、生徒会室へ。。。
生徒会役員が早くもクーガの学内予選の準備を行っていた。
代表は初等学部、中等学部、高等学部が各、男女10名ずつ計60名に
新入生が男女3名づつの合計66名が代表である。
クーガは武道系、魔法系とそれらの混成から成り立っている。
武道系は剣術、槍術、斧術に武術の個人戦と団体戦
魔法系は火系統、水系統、風系統、土系統に分かれ術の発動速度、規模に威力で競う。
但し大陸予選競技は剣術に突きや蹴りなどの武術、火魔法の3種類である。
本格的な競技はセントリック諸島の中の一つ、アポロニア島で行われる競技を本来はクーガと呼んでいるのだか、今では大陸予選もクーガの一部と考えられて大陸予選クーガと呼ばれている。
ただ、新入生に限り本番のクーガも剣術に突きや蹴りなどの武術、火魔法の3種類である。
最後に混成があるが、混成は別名フラッグと云われて両陣営に別れた各校がお互いの旗を取り合う競技であり、一番の見せ場でもある。
魔法で各陣営が砦を作り、それを攻略する。
最後が新人戦である。 通常、新入生は初等学部の代表に選ばれる事は無い、だから敢えて新入生だけの新人戦として計6名の男女が選ばれる。
この新人戦の代表は最初で最後の一度きりの代表であり、最も名誉だと云われている。
この代表により15日間掛けてイーストウッド大陸の代表を決める。
そして、新入生、初等学部、中等学部、高等学部で得た得点の合計で総合優勝が決まり、その代表が他の大陸の代表と競う事に成る。
大陸は人族が多いイーストウッド大陸、獣人族が多いサウラウンド大陸、魔人族が多いノーチック大陸に龍人族・エルフ族が多いウエスティン大陸の4大陸である。
イーストウッド大陸にはカール達がいるハイランド王国を始め6つの国がある
更にサウラウンド大陸は4つの国が有り、ノーチック大陸は5つの国、最大大陸であるウエスティン大陸は8つの国からなって居た。
この4つの大陸の各代表が中央の、女神・ディアナを祭るセントリック諸島の中の一つ、アポロニア島で競うのである。
そして学生たちはこのアポロニアで競技をする事を夢見ていた。
観客も全世界から集まる。
学生達の競う姿もだが、毎年 ここで各国の高官や官僚達が会議を行ったりしていた。
観客の中には貴族の騎士団に所属をし将来の幹部を探したり、または将来の伴侶に成りえる人を探したりと色々といた。
実はマティルダは新人戦の代表には成れたのだが、優勝は逃している。
しかし、マティルダ達の年代は当たり年だと云われ11年の間に6回も総合優勝をしている。
最後の高等学部の4年間は連続で優勝である。
カトリーヌも今年は生徒会長になり3学年である、何とかアポロニア島で競いたいと作戦を練って居た。
残念な事にカトリーヌはクーガに出場するだけの武の才能は無かったが、生徒会長は選手団を率いる立場であった。
そこに現れたのが、カール達である。
「あ! カール」カトリーヌにしたら飛んで火にいる夏の虫である。
実を云うと生徒会の権限で代表選手の半分の31名は任命権が有った。
特に新入生は今までの実績が無いため往々にして成績順で選ばれる事が多かった。
「カール! 貴方クーガ代表!」カールには反論の余地のない、一方的な決断だった。
「は。。。 はぃ? カトリーヌ姉様 何ですか、突然に」
「カール! 貴方 新人戦及び初等学部の試合に出なさい。 出場競技は後から決めるわ!」
クリスティナとアメリアに拉致されて生徒会室に来たのだが、突然の展開に付いて行けず???
「流石 カール!!! 生徒会の推薦を得るなんて、やっぱり私のカールだわ」クリスティナとアメリアの声が綺麗にはもっていた。
「ちょっと待って! 貴女たち 私のカールって何?」普段、大人しい生徒会副会長のアンネからのダメ出しである
出遅れたカトリーヌは目をパチパチと瞬き事の展開を見つめた。
「あ いいえ 何でもありません。 カール君は同級生でお友達ですわ」笑顔で答えるが、クリスティナ、アメリア連合軍とアンネの間には目から火花が散って居る事は誰の目にも明からだった。
当のカール本人は完全に蚊帳の外である。 出来れば静かにフェードアウトしたいのが真実かもしれなかった。
嵐は突然に吹き荒れる!!!
「カトリーヌ生徒会長! 私 アンネ・フォン・グリューネは カール・フォン・アーレンハイト様に正式に交際を申し込みます。」アンネの潔い宣誓であった。
実はこの世界でも女性の立場は男性より弱く、婚姻に関しては家長が決める事が多かったのだが例外が有った。 それは学生の内、即ち未成年であれば女性から将来の伴侶を選ぶ事が出来た
そして、それには上位者の立ち合いが必要だった。 そして今回の場合、未成年である事から婚姻を申し込むのではなく交際を申し込む形となった
しかし、貴族の世界では交際を申し込むとは将来の約束をする事と同じであった。
アンネは将来の生徒会長候補として中等学部の4年に上がると共に書記から副会長に専任されたばかりであった。
「私 アンネ・フォン・グリューネはカール・フォン・アーレンハイト様とお付き合いをして頂きたく正式に申し込みます。 宜しくお願い致します。!」
これに対しクリスティナとアメリアも黙っては居なかった。
「カトリーヌ生徒会長! 私 クリスティナ・フォン・ハイランドは カール・フォン・アーレンハイト様に正式に交際を申し込みます。」
「カール・フォン・アーレンハイト様 私 クリスティナ・フォン・ハイランドはお付き合いをして頂きたく正式に申し込みます。 宜しくお願い致します。!」
「カトリーヌ生徒会長! 私 アメリア・フォン・ロードメアは カール・フォン・アーレンハイト様に正式に交際を申し込みます。」
「カール・フォン・アーレンハイト様 私 アメリア・フォン・ロードメアは貴方とお付き合いをして頂きたく正式に申し込みます。 宜しくお願い致します。!」
こうして、3人の女性たちが生徒会長に対し正式にカール・フォン・アーレンハイトとの交際宣言をした。
通常、交際宣言は一人の男性に対して一人の女性しか行えないのだが、ここにも例外が有った。
それが今回のカールのような場合だ。 一人の女性が交際宣言を発した時に居合わせ、男性から承諾の宣言が発せられる前であれば 何人の女性からで有っても可能だったのだ。
それは男性から承諾の宣言がされて居ないのだから、まだ女性から交際宣言がされて居ないのと同じであるという理屈で有った。
カールの母達もこの理屈に則ってフィリップへ交際宣言を行い、婚姻へと至ったのだった。
当のカトリーヌは突然、見届け人に指名された交際宣言に頭を抱えた。
何故、こうなった? 先ほどまでクーガの学内予選準備と生徒会指名選手の選別を行っていたはずだったのだが?
「うぁ~ 皆さん。。。。 落ち着きましょう!」
生徒会室に居た他の役員の人達は突然の宣言にニヤニヤするしかなかった。
実はカールの母達も父フィリップに対してこうした宣言を行ったのだった。
「流石 アーレンハイト家だ! この学院の七不思議フィリップ・フォン・アーレンハイト様への交際宣言の再現か!!」 風紀委員長のロック・フォン・ワーグナーからの爆弾発言で一気に生徒会室は喧騒の渦に包まれた。
まさにカールは父のフィリップと同じ道を辿っていた。 知性で次期生徒会長となる事が約束されているアンネに魔法では同世代ではカールを除き並ぶ者無き実力者のアメリアと同じく武技では同世代でも上位にいるクリスティナの3名なのだ
交際宣言は見届け人に交際する旨を宣言し、交際相手に交際を申し込むのである。
生徒会長としては正式に発せられた、交際宣言である。認めない訳には行かない。
実は男性からの交際宣言は相手の許諾が必要であるが、女性からの交際宣言には相手からの許諾は必要が無かった。
この為、男性は交際宣言をする事に慎重になる、もし否と云われればプライドが傷つくからである。
拒否された後もその女性に付きまとうのは未練であり、恥とされていた。
その点、女性からは勇気を以て発せられた交際宣言は称賛される。
但し両家の爵位や格式などで正式な婚約に発展するかどうかは、別の問題であるのだが?
ここに突然、カールは婚約予備軍の女性が3名も出来た事に成る。
多分、この噂は明日には学園中に広まるだろう。。。。
この世界に於いて女性は好きな男性を成人前なら自分で見つける事も出来たのだ、もし成人までに自分で見つけられなければ、親や親類たちが見つけた相手と結婚をする事に成る。
だから、この世界の女性は男性を見る目が厳しい! もし自分が選んだ相手がダメなら自分は男性を見る目が無いと云うレッテルは張られてしまうのだ、これは結婚後の社交界に影響する。
カールとしては。。。。 な。 何故こうなった? 此処には勉強に来たはずなのに。。。
「カトリーヌ姉様 どうしたら、良いでしょう?」
「カール! 女性から勇気と誠実を以て正式に申し込まれた交際です。 素直にお受けしなさい。」
「はぃ カトリーヌ姉様!」
「カトリーヌ生徒会長! 私 カール・フォン・アーレンハイトは アンネ・フォン・グリューネ様、クリスティナ・フォン・ハイランド様、アメリア・フォン・ロードメア様より正式に申し込まれた交際をお受けいたします。」
「アンネ・フォン・グリューネ様、 私 カール・フォン・アーレンハイトは 貴女より正式に申し込まれた交際をお受けいたします。」
「クリスティナ・フォン・ハイランド様、 私 カール・フォン・アーレンハイトは 貴女より正式に申し込まれた交際をお受けいたします。」
「アメリア・フォン・ロードメア様、 私 カール・フォン・アーレンハイトは 貴女より正式に申し込まれた交際をお受けいたします。」
交際受諾の誓いとして三人と握手をしていった。
通常は未婚の男女が人前で手を握る事は親、兄弟以外では有りえなかった。
こうして、相互に宣誓をして交際が始まる事に成る。
実を云うとアンネはカールが気に成る存在ではあったが、突然に交際を申し込む気はなかったのだが、クリスティナとアメリアの言葉を聞いて、女としての直観に従ったに過ぎないのだ。
それは、クリスティナとアメリアにとっても同じであった。 アンネから発せられた突然の交際宣言に頭より心が反応した結果だった。
やはり女性の方が種としての本能は敏感であるようだ。 これは後年、カールの妻達が一応に発した言葉である。
カトリーヌは自分が交際宣言をする前に目の前で弟が交際宣言をされるとは思わなかったようで、未だに現実世界に戻ってきていない。
今日は屋敷に帰ったらマルガレータ母様に話さないと。。。 母様、何って云うかな?
気が重い。。。
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