第37話

◇◇騒乱の一週間はやっぱり騒乱だった


「アンネ先輩 どの様なルートで回りますか? ご指示を下さい。」


「え。。。 カール君の好きな通りで良いわ 私は後を付いていくから」


「すみません アンネ先輩 まだ学院内の事が分からないのです」


「では アンネ先輩が行きたい所で構いませんよ 先輩はどんな事が好きなんですか? 僕は図書館とか好きです」


「まぁ~ カール君 図書館が好きなんですか? 私もです。 カール君は小さくって可愛いけど、アーレンハイト家ですからね!   魔法や武術が好きなのかと。。。。 だって生徒会長が荒事が全くできない私の担当にしたんだもの。。。」


「う~ん   魔法や武術も嫌いじゃないけど、図書館で静かに新しい知識を得るのも好きですよ!」


「では、図書館だとか室内をメインに回りましょう」


最初に図書館に行き、図書部の活動を見回る 図書部は各自、好きな本を読み 感想を云いあうだけだった。 アンナ先輩は静かな微笑みで見ていた。


次は家庭部。。。。 何だか騒乱の一週間とは思えないマッタリした時間を過ごしていたのだが、突然の爆発音! カールは一気に緩んだ表情を引き締めアンネと爆発の有った処へ 部屋からは黒い煙が。。。。 そこは薬学部の部屋だった。


「生徒会です!  如何したのですか?」


中から出てきた眼鏡をかけた女性に話を聞く事にした。 でも興奮した女性達も全く事情が分かって居なかった?


複数の女生徒達に順番に話を聞く。


始めの女生徒は魔法薬を作る準備として乳鉢に複数の鉱物を入れて粉にして居たらしい。


別の女生徒もその手伝いで別の鉱物を粉に。。。。


何人かに聞いたけど鉱物を粉にしていたのだとか。。。。


鉱物って何を粉にして居たのでしょう?


鉱物は色々な物を粉にしていた、今は新入部員獲得の勧誘週間である 魔法薬を作る工程を楽しそうに見せる事を目的に 普段は使用しない鉱物まで粉にしていたようだ。


炭の粉、水晶の粉など色々な石に火山地帯で採れたと云う黄色い固形物 これら 何でも初めは粉にする事が大事だとばかり みんなでお喋りをしながら粉にして居たらしい。


わぁ~ 偶然 黒色火薬を作っちゃったのかも。。。。 それが爆発?


この世界で科学って。。。。どうなんだろう 


うん 黙って居よう!


「誰かが爆発魔法の触媒を偶然、作っちゃったのかもしれませんね  先輩!   気を付けて下さいね」カールとしたら笑って誤魔化すしかなかった。


想定外の事に驚きと戸惑いに満ちていた魔法薬部の先輩とアンネにそれらしい説明をして今回の爆発の件は生徒会として先生に報告をする事にする。


実はアンネは報告書などの書類作成は得意であった。


「アンネ先輩 先ほどは驚きましたね! まるで火系統の爆裂魔法の様でした。 先輩、魔法はどうなんでしょう?」


「魔法ですか? 私は水系統と光系統だけです。。。。 回復系の魔法だけです」



「わぁ~ 凄い! 回復系の魔法は何処でも重要視されますよ。」


カールの言葉に少し嬉しそうにアンナは微笑む。


次は生活部である。 ここは生活に役立つ知識を中心に研究をする所だった


光魔法、水魔法、風魔法が少ない魔力で使えるかを研究していた。  少しほんわかとした気分に浸っていると、部員の一人が魔力の使い過ぎで貧血症ならぬ魔力欠乏症になって倒れてしまった。


此れも、新入生勧誘の弊害だろうか。 


「カール君は何処かのクラブに所属する予定なのですか?」


「残念ながら、その気はないのですが! アンネ先輩は何処かに所属されてます?」


「そうね 図書部に入ろうかと昔  思ったのですが、本を読み出すと時間を忘れてしまうので。。」



「あ~ぁ 分かります 僕も同じです、気が付くとお昼だったり、夜だったりします」



そんな他愛もない会話を続けながら、見回りを続けていた。 そして、そろそろ見回りも終了と成ろうかという時間で 最大の爆弾が破裂した。



そこは料理研究部の有る部室前である、毎年 新入生へのデモで大量の料理を作るのである だが、作っても食べられない 勿論 新入生へも料理は配られるのだが それでも大量に余る


そこで、毎年 運動系のクラブへお裾分けをしていたのだが 、受け取る側が量の配分で揉めるのである


一昨年は冒険部が騒ぎを起こし2年間の配給禁止処分を受けている。 その影響で去年は配給禁止処分を受けるまでの騒ぎには発展していない。


各 クラブも表面的にはマナーを守っている様にも見えるのだが、実情は如何に、取締りの目を盗み多くの配給を得るかに知恵を絞っていた。


今年は、このエリアの見回りが生徒会でも穏健派で大人しいアンネと新人で初等科のカールである事から多少、強引に配給を受けても大丈夫だろうと完全に舐めていた。 


「各、運動部の皆さん これよりお裾分けを致します。 順番に並んで下さ~~ぃ!」


「おぃ!  早く寄越せ! 先輩方が待っているんだ グズグズするな」


「なんだ! てぇ~?」 グチャ 別のクラブ員が文句を云おうとした所に素早い蹴りが入った!


「あ~ぁ 成りたく無いだろ? 早く 俺たちに寄越しな!」


料理部の部員を脅し、強引にお裾分けを奪おうとして居た時


「貴方たち 何処のクラブですか?  私達は生徒会です!」


アンナは確かに穏健派で大人しい性格であったが  正義感も人一倍強かった!


「今の行為は生徒会として見過ごす訳には行きません。 クラブの責任者に事情を聴く必要が有ります」


「チィ! 見つかっちまったか! さぁ~ 知らないな 何の事だ?」


相手は何も実力行使も出来ないと多寡を括り誤魔化そうとした。


カールは一連の騒動が始まった時、一つの魔法を行使していた。


「今の行為は料理部への脅迫と強要に他クラブへの暴行の現行犯です 私は生徒会副委員長の権限で貴方のクラブを告発します。!」


アンナはビシッと指を主犯の生徒に指し示した。


「あ~~ん 皆 生徒会の副委員長様がああ云っているが知ってるか?」一緒に来ていた部員たちはニヤニヤしながらアンナとカールの方へ近づいてきた。


カールは状況を見ながら素早くアンナと自分に防御魔法を展開し アンナの前に出た。


「先輩方、これ以上 状況を悪化させる事はクラブの為に成らないと思うのですが? 違いますか。。。」


「お前か 今年、生徒会に入ったチビは?」


「はぃ 確かに今年 生徒会に入った者ですが 先輩方は如何やら勘違いをされているようですね?」


「は~?  勘違い! 何が勘違いなんだ?」


「先輩方はアンナ先輩と新人でチビのコンビでは実力行使は出来ないと考えていらっしゃる? いま この時さえ凌げれば、後はどうとでも誤魔化せると考えていらっしゃるのでは?」


「あははは ちゃんとわかって居るじゃねえか その通りだ! 俺たち武術部の実力を見せてやるぜ!」


その言葉と共に武術部の猛者は生徒会の二人へ一斉に襲い掛かる。


「きゃ~~ぁ」アンナの悲鳴が響き渡った。

 


 しかし既に二人の周りにはカールの防御魔法が掛かっている 魔力を供わない唯の拳ではカールの防御は崩せない。


そして、二人を襲ったと同じタイミングで他の生徒会役員たちが全員現れた。



これは、カールが初めに放った風魔法のウィスパーによるものだった。



カールは料理部の前で騒動が起こっている事に気が付くと直ぐに魔力探知を行い、他の生徒会役員の位置を探った。 更にウィスパーの魔法で此処で起こって居る内容を他の生徒会役員全員に中継をしていたのだった。



当然、他の生徒会役員は話の内容からトラブルを察知し別々の方向から料理部の有る処に集まったのである。



「全員 確保!」生徒会長のカトリーヌは騒動を起こしていた部員の言い訳を一切聞かず、トラブルを起こした全員を捕まえた。


捕まえた部員たちは生徒会室へ連行され そこで待つ風紀委員長の裁決を待つ事に成る。


アンナは何が起こったのか分からない内に全てが解決していた。


「カール! 突然、耳元で貴方の声が聞こえたからビックリしちゃったわよ でも良い判断だったわ」姉のカトリーヌはカールに向かいニッコリ微笑むと捕まえた部員たちと共に生徒会室へ向かった。



「アンナ先輩は正義感がとってもお強いのですね 尊敬します!」



アンナとしては目の前で理不尽な行為が見過ごせなかっただけなのであるが。。。 



それよりもアンナはタイミングよく生徒会役員たちが駆けつけてくれた事に気が付いて居なかった。


こうして騒乱の一週間の二日目も終わりを告げようとしていた。



料理部の前ではまさに騒乱とも云うべき騒動が一瞬で片付いたのは良いのだが。。。 肝心の料理の行方は。。。。



今日の料理は各自が自宅に持って帰る事に。。。。 



かくして、騒乱の一週間も例年の如くバタバタの騒動を引き起こし、更に他の騒動にも発展していき 最早、混迷の新入生勧誘週間と化していたが、何とか無事に乗り切る事ができた生徒会であった。


武術部は3年間の料理部からのお裾分け無しの処分が決まった。


(う~ん 食物の恨みはって云うからな。。。。 あの騒動を起こした後輩たち先輩に。。。。。。)


あの時 武道部の人から蹴りを食らった人は誰だったのかは不明のままである。


今回の処分は一昨年に起こった冒険部の2年間に比べても3年間の処分は大変厳しいと云えたのだが、これは生徒会役員に対する反抗と暴行未遂が加わった為だった。


そしてこの現場を多くの生徒会役員に見られていた事で武術部としても言い訳が出来なかった。


更に今回の武術部の暴走を他のクラブの人たちにしても止める事をせず、黙認して居た事で今年の配給は全て中止をする事になった。


この生徒会の決定に戸惑いを見せたのは料理部の面々だった。 例年ならお裾分けと云う方法で処分していた料理を自分たちで処分しなくては成らなくなった為である


逆に喜んだ人々も居た 料理部の部員たちの家族である。 特に父親は娘の手料理を食べる事に成り涙を流さんばかりに喜んでいた。



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