第32話

◇◇もう直ぐ新入生!


 領都ルーンと衛星都市キールの間を何往復したことだろう。



その間に妹のマリアも目覚めの儀式を終え、聖紋を貰った、聖紋は流石マティルダ母様の娘だと云える剣神の聖紋だった。 これはカールが可愛がる事によってカールから加護が与えられた為だった。 



今でも俺がキールに行くとハイドとヨウコを相手に遊んでいる。



段々と領軍も戦略、戦術に合わせて動けるようになってきた。 やはり去年の小さなスタンビートが良い訓練になったようだ。 多分スタンビートは当分の間、無いと思う?   無いと良いな~ぁ



俺は、もう直ぐ王立ケンフォート学院入学の為に王都へ行く事になる。


王立ケンフォート学院は初代の学園長だったケンフォート・フォン・バイエル侯爵が開いた私塾が基に成っており、此処から名前が付けられていた。 今では王立ケンフォート学院はハイランド王国で一番の格付けを持ち、国内からはただの学院とだけ呼ばれていた、カールもこの学院に入学すれば王都での生活が待っている。 少し楽しみでもある ワクワク。。。。。



入学まで後2ヵ月 いつも移動の時に護衛に付いてくれるアルフレッド達が今回も王都までの護衛に付いてくれる。 一緒に行くのはいつものハワードとシンディー兄妹だ、まぁ 落ちる事は無いと思うけど入学試験も有る。 その為に母のアグネスが着いてきた。



きっと俺の為と云いつつ、たまには王都に行きたかっただけだと思う。。。。



王都に行ったらマリア以外の兄姉達に逢えるのだろうか?  でもカトリーヌ姉さま以外は学院を卒業しているから無理かもしれない。


実姉のアンナ姉様は結局、学生時代からの付き合いが有ったマイク・フォン・シュトライム伯爵家の長男であるローガンと結婚した。


ローガンはアンナ姉さまがアールハイム・フォン・ライハルト侯爵の嫡男で若手外交官であるクルト・フォン・ライハルトと結婚するかもと云う噂で慌てて婚約を申し込んだようだ。


きっと姉様の。。。。 女性は怖い(><)


ジャン兄様は昨年で卒業しており、今ではカトリーヌ姉さまだけが学院に通っていた。  如何なのだろう? 学院で3年生になるはずだ!



 初めての王都は門の通過だけで物凄い時間が掛かりそうだ。 アーレンハイト家は貴族なので先触れをだして王門での審査を待たずに無事に通過が出来た。



王都の屋敷に到着すると家令のハンス以下メイドなどの使用人が整列して出迎えていた。



「アグネス奥様 カール様 お疲れ様でした。 マルガレータ奥様が御待ちでございます。」



「ハンス ありがとう! カール 家令のハンスよ! これから頼る事になるのだから挨拶をしなさい。」



「ハンス殿 カールです もし学院に入学が出来たらお世話になると思いますので宜しくお願いします。 あ それから こっちの子竜がハイドでこちらの子狐がヨウコです共に召喚獣ですので宜しくお願いします。」


カールはハンスに子竜のハイドと子狐のヨウコも一緒に紹介をした。


「カール様 ハイドさまとヨウコさまについて王都の冒険者ギルドで召喚獣として登録をしておいた方が良いかと。。。。」


領都は自分の領地だった関係で自由にハイドとヨウコは動き回っていたが、やはり王都ではそうはいかないらしい 手続きはハンスが行ってくれる事になった。 召喚獣章は小さな首輪らしい。


次はマルガレータ母様である子竜のハイドは知って居るが子狐のヨウコは初めてである。


「マルガレータ! 暫く 世話になる」



「マルガレータ母様 宜しくお願いします 実はハイドは既にご存じかと思いますが この子は子狐のヨウコです ハイドと同じく宜しくお願いします。」



アグネスはニヤニヤしながらマルガレータの反応を見守った。


「マルガレータ母様 ヨウコと申します 2歳の子供です 宜しくお願いします。」


ヨウコも神妙に念話で挨拶を行った。 どうやらハイドの時と同じ様にヨウコの事も気に入ったようだ。


正式に後から屋敷の使用人にも話してくれることになった。


「マルガレータ母様 学院の入学試験ってどんなのでしょう?」


カールは当面の心配事である、入学試験の事を聞いた。


実を云うとマルガレータもアグネスもカールの入学試験の事は気にもしていなかった。


「カール 文章の読解に算数、このイーストウッド大陸とハイランド王国の歴史 剣技に魔法よ」


「カールが問題になる事は無いと思うけど 不安な事は有る?」


「マルガレータ母様、アグネス母様 剣技も魔法も結局 母様達に習わなかったのですが。。。。」


「あははは カールの剣技と魔法は習うより教えるレベルよ 大丈夫!」



その後、ハンスより召喚獣証の小さな首輪を貰った2匹の召喚獣はその日から屋敷内の探検を始めた。  そして何処の屋敷でもヨウコは直ぐにアイドルになっていた。



ハイドは屋敷から羽ばたき遥か上空から王都全体を探検した。 ハイドの特殊な魔力は他の存在には気が付かれずに調べる事が出来た。


ハイドとヨウコは既に乳離れをして 乳児から子供へと成長していた。


始め人見知りのハイドはカールの側からなかなか離れなかったが ヨウコは初めから人々と接する事が得意であった。


王都に来て、2匹は新しい環境に早くも馴染もうとしていた。


もう直ぐ、カールのお受験である。 普通、受験と成ると多少はピリピリした雰囲気が漂うものだがアーレンハイト家では無縁であったが、矢張り母親である、一番緊張していたのはアグネスで有った。


受験当日、アグネスは朝からソワソワしカールに色々と世話を焼いて居た。 完全にシンディーの出番を奪う勢いで有った。


「母様 大丈夫ですよ! 落ち着いて下さい。 心配しなくても受かりますから」と逆にカールがアグネスを宥めていた。


このままではアグネスが逆に心配なので、少し早めに受験会場に出かけた。


受験会場は既に大勢の受験生と父兄で溢れかえっていた。


合格者は上位20名からなるSクラス、そこから40名毎にAクラスからEクラスまでの220名が合格である 受験生だけで3000名以上居そうである。


学院は5~7歳の3年間が初等学部、8~11歳の4年間が中等学部、12~15歳の4年間が高等学部になって居て全部で11年間、学院生として過ごすのである。


生徒の中には地方から出て来る人もいる為、寄宿舎が用意されているが王都に屋敷を構える極一部の貴族は通学が許されていた。


 うぁ~ 大変そうだなぁ。。。。 と他人事の様に思いながらカールは人垣を掻き分け受験会場に入った。


受験教科は事前に聞いていた通り5教科? だった。


各教科100点満点の合計500点満点だが、実は各教科ともに一般的には80点までしか点が取れないようになっていた。


残りの20点は各分野の専門家でも取れるかどうかの問題が用意されていた。


これは毎年、同じ様な出題傾向の為400点が満点と考えられ、半分の200点が凡そのボーダーラインとなって居る。



カールも席に着き、試験の始まりを待っていた。 カールとしては大学を卒業し大分たっている為 少し懐かしく思って居た。。。。。 


各、教室に監督官が試験用紙をもって入室しカンニングなどの注意事項を話し 愈々始まりである


カールも試験問題を見たが、文章の読解は流石 小学生の問題 間違えようが無かった ただ後半の少しだけ引っ掛け問題が有り少し嬉しくなる きっと皆、此処で間違うんだろうなぁ~


次の算数も四則演算である 矢張り最後の方だけ面白い問題があった 等差数列、等比数列、二次方程式、連立方程式等に素因数分解など懐かしくも有る数字の羅列である。


歴史もやはり後半だけ面白い問題が並んでいたが 頭の中にはこの国が生まれる前からの知識が詰まって居るのである 間違えようが無かった。


後半の実技として剣技と魔法が有る 剣技は近衛師団の若手が試験官として試験に臨むのである。


 若手とは云えこの国の精鋭中の精鋭である。 5歳の子供に負ける訳がない 試験官は将来の素質を見極めるのが試験内容である。 順番に剣技の試験が進み カールの番になる。


「はぃ 次の人 私が受けるから攻めて来てくださいね。」


「はい 分かりました。」と答えた直後にカールは瞬歩で近づき試験官の喉元に木剣を差し出した。


試験官は突然、木剣を喉元に突き出されてから慌ててその場から飛びのいたが既に遅い。 


「え。。。ええええええ~~~。。。。。。。 何故? どうして? 」


完全にパニックになって居た試験官の声が周りに響き渡る。 周りの同僚はどうしたって顔で見つめ 剣技の試験監督官であり、若手近衛騎士団の中隊長は 声を出した団員の処に来た


団員から事情を聴き 苦笑いをしながら、もう一度初めから試験をするように指示をだした。


中隊長からしたら5歳児相手に団員が負けたなど考えもしなかったのだ。 きっと暇すぎてよそ見をしていたに違いないと考えたのだった。


学院のテストでは平民も貴族も無く平等に扱われた。 だから家名は呼ばず名前だけで呼んだ。


「カール君だっけ スマン もう一度 剣技のテストを受けてくれ!」


若手近衛騎士団員は先程の様な油断は一切せず、緊張をしながら身構えた。


カールはいつもの様子で「では 行きますよ 良いですね!」云い終わり相手が身構えたのを確認し先程と同じに瞬歩で相手の前に進み木剣を喉元に突き付けた。


此れには若手近衛騎士団員だけではなく、中隊長も驚き 名簿の名前を見て納得をしてしまった 名簿名にはカール・フォン・アーレンハイトとある。 中隊長はカールをあのマティルダの子供だと思ったのだった。 


マティルダの子供なら十分にあり得ると納得してしまった。 いや それ以外にはあり得なかった。



次は魔法のテストである、初めに魔力の有無と適性を調べられる。 魔力は誰でも存在するが、魔法として発現するかどうかは別である。 


その為に魔力の有無と適性が調べられるのだ、普通 5歳児ではまだ魔法は習っていない 剣技と同じで将来の素質を見極めるのである。


魔法のテストでは王国の魔導師が担当し魔法騎士団は手伝いとしてやはり若手がいる。


王国では魔法を研究する魔導師と魔法を使い国を守る魔法騎士団がいる。


本来、魔法の有無や適性など将来の魔法師の卵と云うべき者を見極めるのは魔導師の役割だが、魔導師は面倒なテストなどしたがらなかった。 その為に若手の魔法騎士団員が手伝うのである。



次々とテストが進み カールの番である。


「はぃ 次の人 まず この水晶の球に手を当てて下さい。」


「はぃ 分かりました」カールは何気に水晶玉に手を当てた 当てた瞬間に七色の魔光が水晶から氾濫しそのまま砕け散った。


水晶玉から放たれた強力な七色の魔光の洪水はその場で試験をしていた人は全員 見る事になった。


魔導師としては水晶玉から魔光が出来た事から魔力は有る、そして魔光の強さから相当な魔力量だと分かるのだが、球が砕けるとは思わなかった。


多分、実際の魔法も使えるだろうとは思うのだけど、此処で下手に魔法を使わせると大変な事になるのではと考えカールの名前を見て気が付いた。 彼の名前 カール・フォン・アーレンハイト かつて魔法の天才児と謳われたあの アグネス・フォン・アーレンハイトの息子だろうと。。。。


こうしてカールの全ての試験は終了した。  誤解を残しはしたが後は結果を待つだけである

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