第28話

◇◇カールの思惑とシュワルツの戸惑い


カール様の話を理解するのは難しい あのお披露目会での挨拶の時は周りの人から指示されての挨拶だと思ったりした。


今日 話を聞いた戦略と戦術? そして役割分担 何の事だろう?


まぁ マティルダ様も俺と同じように分かって居なかったから大丈夫だろう 後は明日からのカール様の話の内容を実際に見分する事にする。


カールは面白いことを考える 確かに目的と手段を明確にする事は良い事だ 特に兵士は目的が分からないために行動に迷いが有る事がある。 単純に剣を型どおりに振るだけなら問題は無い でもそれは練習だからである。 相手がある実践ではどうなるのか?


そしてカールは護衛兵に目的、戦略と云ったか 指揮官を狙うのではなく 旗を奪う事が目的であると話していた。 そしてそれを実行するための手段としての戦術をと。。。。 面白い


でもカールが本当に云いたい事はもっと別にあるような気がする 戦術や戦略の説明も実はもっと奥が深い気がする。 うふふふ 本当に楽しみだ!


翌日から3人づつ3組の攻防が始まった 指揮官はただ立って居るだけだったが カールから激しい指示が飛んで居た 指揮官は旗を守っているが周囲の状況を絶えず見渡し護衛兵に指示を出さなければならない。  初めは直ぐに攻撃組の3人が根を上げて居たがこれは指揮官が原因であった。 


カールは護衛兵を鍛えるだけではなく、実は指揮官の指揮の方法について教えていたのだと云う事が分かる。


実は兵士の底上げは出来るが指揮官の育成には時間と努力がいる そして誰も指揮官の育成方法が分からなかったのだが カールは目の前でその指揮官の育成方法を実践して見せていた。


3日目が終わる頃 3人組の3グループは絶えず攻守を変えて動けるようになっていた。 そしてアルフレッドは全体を良く観て指示を出せるまでになって居た


明日の領軍との模擬戦が楽しみになってきた 確かに10人を個人とした時は領軍の兵士の方が圧倒的に強い 強いが勝てるかと云われると微妙である。


明日の模擬戦が終わったらカールに戦略と戦術の概念と部隊の役割について聞いてみよう


シュワルツもきっと同じ思いであるに違いない。


あにちゃはいつもいそがしそうだ あしたもはいどとあそぼう。 おにごっこはしたから あしたはかくれんぼにしよう でもたまにはいどはいじわるをする まりあに見つからないところにかくれるからだ よし はいどのしっぽにすずをつけよう。


「おはよう 兵士諸君 きょうはカールが教練した兵士と我が領軍の兵士10人による模擬戦を行う」


練兵所に響くマティルダ母様の声に5000名の兵士は背筋を伸ばす。


10人対10人の模擬戦が始まった 初めは戸惑った動きをしていた領軍の兵士も普段通りに動き出した。 周りは模擬戦を真剣な目をした兵士が見つめていた。


やはり領軍の兵士はやはり指揮官を残し全員で相手に群がった。 6人対9人 圧倒されそうで持ちこたえている それに対し先頭の3人は指揮官を目指した ビックリした指揮官は自分を守るように領軍の兵士を呼び戻そうとしたが勝負は決した。


マティルダの終了の声と同時に周りからの歓声が湧きあがった カールは呆気ない結末に戸惑ってしまった。 もう少し接近戦を予想したのだけど。。。。


「今回の模擬戦は護衛兵チームの勝ちとする! ごくろう」


マティルダの挨拶の後、領軍の幹部とカールはマティルダの執務室に集まった。


「カール ごくろう! 今日の模擬戦は見事だった 領軍の幹部達も云いたい事はあるだろうが 此れからカールが話す事を聞け!」


突然のマティルダ母様の無茶ぶりに困った顔をしながら、カールは戦略と戦術について話しだした。


「戦略とは戦いに勝つために兵力を総合的・効果的に運用する方法です これは大局的・長期的な視点で策定がなされる事です」


「そして戦術とは 戦いに勝つために戦う場所での兵士の動かし方の事です」


「今回の模擬戦を例に例えるならば 勝つための条件と捉える事が出来きます 勝つための条件は相手の旗を奪う事です」


「戦う場所で兵士を動かす事ですが 3人一組にして相互に連携を取りながら動かしました」


「これが戦略と戦術です 次は部隊運営の面で部隊の役割があります。」


こうして3歳児から、領軍の運営方法が語られた。 シュワルツとしては色々と考える事が多くて頭が回って居ない状態みたいだ!


この戦略を考える事は戦う相手に勝つと云う目的、条件を整える事ですから 相手が違えば色々なパターンが有る事も合わせて話して居る


ハッキリ言えば、戦う相手が魔物の場合と人間の場合は違うと云う事になる。


既に昼食も終わり、そろそろ夕食の時間になる。


はぁ~ 夕食後も続きそうだ! 


マティルダ母様から部隊運営について色々と質問がされた。


これは俺が輜重部隊の重要性を説いた時の事だ 


「マティルダ母様 兵とは戦うだけではなく民を守る事も重要になります。 また人は食べなくては生きていけません その為には食料が必要になると思いませんか?」


「確かに食料は大事だ! でも食料は運ばず、狩をする事で得る事も出来るだろう 実際に今まではそれで問題は発生していない。」


「それは 山に獣や魔物たちが居た場合です もし山に食料と成る獣や魔物が居ない場合はどうするのでしょう?」


「例えば領軍5000名が全て出動した場合 食料の調達は? もし その5000名が長期で出動したらどうなるのでしょう?」


これらの話がかなり遅い時間まで続いた。 俺の身体は3歳児 21時が限界。。。。


「マティルダ母様 出来れば続きは明日ではダメでしょうか? 実は俺はそろそろ限界なのですが。。。」


マティルダの苦笑いで幹部会は終了と成り 明日また続きが行われる事になった。


しかしマティルダや幹部達にとっては今までの前提や常識が全て崩壊する思いであった。


昨夜の続き、輜重部隊の運用についてカールは話し出した。 野営をする時、食事の支度や獣、魔物に対応する不寝番は必須の条件である。 これらを全て輜重部隊に任せて兵士は戦いだけに選任させるというものだった。




また伝令の重要性、いつ如何なる時でも的確な情報を幹部は必要とする。 特に全体を管理している シュワルツやマティルダは必須だと云える。


今は専任の伝令が居ないために情報伝達が遅い 此れは馬の使い方で有ったり長距離の移動の仕方だったりする。


やっとこの辺の話でマティルダ母様やシュワルツ等の反応が良くなってきた


皆に色々と今まで話してきた内容を検討してもらう事で俺の2泊3日に渡るキール在住は終了してしまった。


おかしい 本当はマティルダ母様やシュワルツから武術を習うはずが。。。。 な 何故こうなった?


マティルダ母様からは次回からは2週間は居ろって云われた。 何でもアグネス母さまへ手紙を書いたようだ


俺は軍事コンサルタントでは無いのだが。。。


本当ならこれらの事を書籍にまとめ、定期的に愛読させて知識の定着を図る方が良いのだが、この世界ではその様な習慣がなかった。


カールはマルガレータ母様の無茶ぶりに続きマティルダ母様からの無茶ぶりににも晒される事に成った

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