第21話

◇◇ 借金返済


 王都の屋敷に戻ったマルガレータは早速、自室に引き籠るようにして カールに作って貰ったマジックバックから 宝石が入った宝石箱を取り出そうとした。


マジックバックは中に入っている内容がインデックスのように参照できるようになっている。 その中に宝石箱と各種貴金属のインゴット以外に一通の手紙が入っていた。


それはカールからマルガレータへ宛てたものだった。


「マルガレータ母様へ 今回の宝石ですが マルガレータ母様はどの様な販売方法をお考えでしょうか? きっと素晴らしい方法をお考えの事と思います。 私から一つの販売方法としてご提案を致します。」


カールから宝石の販売方法についての提案が書かれていた。 それは決して一気に売ってはいけないという事だった!


もし、王家が集まるようなパーティーが有れば、その時は必ず2番目か3番目の宝石を身に着けて参加をし、さり気無く見せるが 何処で買ったかは云ってはいけない。


もし、王妃や王女からの問いただしなら、その宝石ではなく上位の宝石を献上しても良いとあった。(これは良い宣伝になるので後で売った時より価値が出る)


 売る時は派閥を跨いでお茶会を開き特別な集まりだと強調したのちに少しづつ見せる。


(同一派閥内だけだと後で嫉妬や足の引っ張り合い等が起きるので注意が必要などと書かれていた)


マルガレータもその道のプロであったが、流石に王家に宝石を献上しても良いとは思わなかった。


丁度、来週 王家主催のパーティーが有り、アンナの婚活で参加をしようとしていた。


今までは財政難など、色々と有ったのでパーティーへの参加を渋っていたが これからはドンドン参加をしなくては



あと 王国財務省に居る長男のアウグストへ呼出しの手紙を書き、至急 届けさせる!


息子は自分に似て頭脳だけは優秀だった。 学院を卒業後 そのまま王国の財務省へ入り順調にいっているらしい 次男のエーリッヒもマティルダの血を引き軍務省に入り、近衛騎士団入りは間違いなしと云われているらしい。


去年、学院を卒業したアンナは今 婚活中である(魔法省より入省の打診があったのだけど迷っているみたい?)


カールが学院に入ったらどうなるのかしら? 思わず笑みが零れてしまう 今から楽しみだわ。。。


翌日、長男のアウグストが勤務終了後に屋敷に来た。


「母上 突然のお呼び出し どの様な御用でしょう?」


言葉に余裕もなく、何の前振りもなく、面白みに欠ける。。。 私もそうだったのかしら?


「アウグスト 確か王国財務省で貴金属の買い取りをしていたわね?」


「はぃ 正確には王国財務省の中の特殊貴金属課と云う所です」


「いま 純金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの買取りは如何なって居るの?」


「母上はそれらの貴金属をお持ちなのでしょうか?」


「ええ 持っているわよ」


「今現在の買取り金額は。。。。」


純金・・・・・・・ 100g当たり 金貨 2枚

ミスリル・・・・・ 100g当たり 金貨 5枚

オリハルコン・・・ 100g当たり 金貨 8枚 

アダマンタイト・・ 100g当たり 金貨12枚


「だったと思います。」 


「母上はどれくらいお持ちなのでしょうか?」


「そうね 沢山あるわよ  財務官が白金貨を持って買取りに来るぐらい 手配して頂戴な!」


「判りました! 明日、午後には財務官数名と一緒にまた来ます。 処でその貴金属は如何したのでしょうか? 教えて頂くわけには。。。?」


「ふふふふ 内緒ょ!」


はぁ~ 「判りました! では また明日!」


「え~ もう帰っちゃうの?」


「母上 私は新婚なのです 妻が待っておりますので帰ります。」


「たまにはジニーを連れては遊びにいらっしゃい!」


長男のアウグストも次男のエーリッヒも領地に余り愛着が無かった。


やっぱり 領地が貧しいのと魔物の暴走スタンビートが原因かな?


今回、お宝の山が見つかったけど魔物の巣窟の中だし。。。難しいかも


三男のロベルトも四男のジャンも入り婿先を探しちゃっているし


(何だか学院を卒業し就職したら結婚とか考えているらしい)


はぁ~ アーレンハイト家はどうなっちゃうのだろう?


翌日、財務官数名を連れたアウグストが来た。


「昨日、お話の在った件で財務官を連れて参りました。 それで、お話が在った貴金属はどちらに有るのでしょうか?」


早速 財務官は仕事の話に入る 世間話は無しか~~ぁ


「私の執務室よ 一緒に来て!」


マルガレータの執務室入った財務官とアウグストは目を見張った。


そこには純金、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトが精練された形で山をなしていた。


カールは当初のサンプルから更に精練を行い、全ての貴金属を100kgずつ精練していた。


これはマルガレータからアーレンハイト家の財政状況を聞いたための追加処置だった。


「各、製錬済みのインゴットとして100kgずつ有るわ 確認して頂戴!」


財務官が検査機材と魔法を使い各インゴットを調べている間 マルガレータとアウグストは最近の王都の様子を話し合っていた。


王都の経済は円熟し物価も安定していた。 生活をするには申し分ない環境だった。


検査も終わり、申告通り各、100kgずつ有った

純金・・・・・・・ 100g当たり 金貨 2枚  2×1000= 2000枚

ミスリル・・・・・ 100g当たり 金貨 5枚  5×1000= 5000枚

オリハルコン・・・ 100g当たり 金貨 8枚  8×1000= 8000枚 

アダマンタイト・・ 100g当たり 金貨12枚 12×1000=12000枚


合計で金貨27万枚=白金貨で270枚だった 一気に借金苦からの脱出で在った。


「母上 白金貨で270枚ですが、高額取引の場合、王国に20%の税金がかかります。」


「税金として白金貨で54枚ですので、残り216枚になりますが良いですか?」


「えぇ~ 構わないわ このまま運んでしまって!」


アウグストと財務官は淡々と貴重な貴金属を王家所有のマジックバックにしまい込み。


そのまま帰っていった。


はぁ~ 終わった。その後 家令のハンスを呼び、これまでに借財をしていた商家を呼び出すように指示をした。


その日のうちにアーレンハイト家が長年貯めこんだ借金を全額返済し終わり、更に余裕が出来ていた。 (子供達が結婚する時の持参金が出来た!)


この後、貴金属は値崩れに気を付けながら売却する事にしたのだが、カールの話ではその他にも貴金属が存在するらしいのだが、今後の事として保留にする事にした。


後は宝石だけどカールが云ったように無理に売らず、焦らしましょう。


この日、アーレンハイト家が商家へ多額の借金を一括返済をした噂が広がった。


そして、多くの零細貴族家はアーレンハイト家の錬金術の謎に。。。 でも相手は伯爵家 それも学院では天才の名を欲しいままにしていたマルガレータである 聞き出す事の無謀を悟った。 


次は王家のパーティーである、ドレスはそのままの予定だったがアンナの分と一緒に新しく新調する事にした。


さぁ~ 宝石のお披露目よ!


マルガレータにしたら長年に渡って気苦労の元であった借財が無くなった事で気分的には絶好調だった。


そして主人の雰囲気は家人には直ぐに伝わるものである。 アーレンハイト家は近年にないほどの浮かれた雰囲気を醸し出していた。


そしてマルガレータはアグネスが抱いていたカールへの不安など微塵も感じて居なかった。


マルガレータにとりカールとは救いの主だったからである。


これでマルガレータの懸念は一つに成った。 この時、マルガレータはこの懸念もカールに相談したら解決するのではないかと頭の隅に過っていた。


実際に数年後、カールがマルガレータが居る王都に来る事で最後の懸念事項も解決する事に成るのだが、これはもう少し後の話である。


いまはカールの姉にあたるアンナの事である。


このアンナには学生時代から頃付き合っていた男性がいた。 しかし正式に結婚を前提とした付き合いではなかった為にアンナはこの王都で婚活をしていた。


アンナが付き合っていたのはマイク・フォン・シュトライム伯爵家の長男であるローガンである。


ローガンにしたらアンナは高嶺の花であった。 アンナも母のアグネスに似て魔法の才があった。


その為に彼女は何度もクーガに出るだけの実績を示したのだ。


男女ともにクーガやクーナに出るだけの才があれば色々な処から声がかかるのだ。


ましてアンナはアグネスの娘である、アンナの魔法の才に保証書が付いたような物だった


さらにアンナは美人と云えた。 それがローガンが声を掛ける事を躊躇わせる一因となっていたのだ。


もしこれがアンナの方から声が掛かっていればローガンは即答でOKを出している。


しかし肝心のアンナには母の様に自分から声を掛けるだけの勇気がなかった。


実を云えば母のアグネスも同様であった。 アグネスには他に二人の友が居り、その友の力を借りて告白をしたようなものだった。


女心とは微妙な物である、そして男女の機微とは不思議なものだ。


マルガレータはそんな二人の背を押すために王家で催されるパーティーにアンナと出る事にしたのだ。


そしてこれはマルガレータが出来るカールへの感謝の気持ちだった。

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