第16話

母達への緊急招集が掛かった翌日カールは火系統の魔法練習をすると、ハワードとシンディーに告げ 母専用の魔法練習場に来ていた、実は午前中のシンディー担当の教科は無事 卒業となって居たのだ 本当はまだ ダンスが有るのだがシンディーが先輩から教わっている最中の為、教えることが出来ていない。 さぁ~火魔法から始めるか! と意気込んだ途端 目の前に霞が掛かる。。。


気が付くて、目覚めの儀式の時に女神ディアナさまに会った場所。。。 なぜ?


「あ カールさま お疲れ様です。 ディアナです。 今日はお願いが有って来てもらいました。」


「は。。。 はぃ? 何がどうなって? どうした?」


カールは突然の展開に付いていけない 


そんな事に一切構いなく ディアナは話を進める。 女神さまとはそんなものなのです。


「ちょっと 女神ディアナさま 突然は困ります! ちゃんと事前に予定を聞いて下さい!」


事前の予定に従って行動をする事に慣れていた カールはディアナにクレームを付けた。


ディアナは初めてのクレームに驚いた。 実は誰もがディアナには素直に従っていた為に突然の独断は普通だと思って居たのだった。。。


それは当然と云えば、当然である この世界に於いて 女神ディアナさまからのお願いとは何ものにもかえ難いものだった 時にはご神託とも云われるほどにである。


「今回は初めてですので、お聞きしますが 次回は予定の確認をお願いしますね」


硬直したディアナにニッコリ微笑みカールは告げたのだった


「女神ディアナさま お願いとは何でしょう?」


やっと再起動した ディアナは少し気落ちしながら


「カールさま 私の事はディアナとお呼び下さい。 それから 突然の呼出しでごめんなさいね」


実は良い所のお嬢さんであるディアナ ちゃんと他人からの意見も聞くように教育を受けていたのだった(但し自分の世界の人々は対象外にする事はきつく言われていた)


カールは自分の世界の住人であるが、元は他世界の住人であり担当上級神:ユピテルとディアナの一部を宿した 云わば自分の子供のような存在だったのである。


「はぃ ディアナ様 すみません 突然の予定の割込みに慣れていなかったので 私も少し云い過ぎました」


「次回からは事前に確認をしますね 処で今からは大丈夫でしょうか?」


今更であるのだが。。


「はぃ 余り時間は取れませんが、今日は大丈夫です。 なんでしょう?」


「時間はどうとでも成り 良いのですが 実は前にお話をした他の世界の視察にお付き合いをして欲しいのです。 私はこの世界を含め7つの世界を管理しています。」


1.原初の世界ファーラ

2.植物の世界フラウ

3.竜が君臨する世界ドーラ

4.魔物が居る世界マモン

5.人間以外の種族が居る世界ザウン

6.人間が居る世界ヒュール

7.今の世界ルミナリア


女神ディアナから異世界巡りの付き合いを云い渡され戸惑いを隠しきれず


「ディアナ様 すみません いま 私に異世界巡りに付き合えと云われましたか?」


そうなのですカールからしたらこの世界の外の世界は異世界であった。 そして何故 カールが異世界巡りに付き合わされるのか。。。。


「実はカール様には 以前にお話し致しましたが 私は次元・時空移動が余り得意ではないのです ですからカール様にお付き合いをお願いしようかと。。。」


女神ディアナはカールが先日行った転移魔法を初めて行った事を見ていたのだ そして初めてなのに次元・時空に時間設定の確かな移動 もう 自分専用の運転手に。。。。 いいえ 同乗者にしてしまおうと考えたのであった。   カールにとっては迷惑な話である。


カールも元は最上位に君臨した男である 相手が何をして欲しいか、何をさせたいかは察する事は得意であった。 そして女神ディアナの話から次元・時空移動が余り得意ではなく、付き合えと云われれば もう運転手代わりに来いと云っている事を察するのは容易かった。


「ディアナ様 私 次元・時空移動の仕方は分かりませんよ?」


「大丈夫です カールさまは昨日 事前情報なしで転移魔法を行ってましたよね! あれと同じです」


「ディアナ様 転移魔法は事前に転移先の情報が無ければ、行くことが出来ません」


「私が転移先の情報を提供しますから大丈夫です!」


既に逃げ道の無い会話である。 こうしてカールは3歳にして女神ディアナの次元・時空移動の運転手に指名されてしまった。


「今日は 私が初めて作った神聖皇竜ハイドが寿命10000年を迎え次世代に転生するので見届ける事になって居るのです。」


「了解しました! では転移先の情報をお願いします。」カールの言葉に応じるように女神ディアナから言葉が発せられた。


「トランスファー!」転移先の情報がカールの頭の中に鮮明に流れ込んできた


「では 次元・時空移動を始動します ディアナ様 起動キーをお願いします。」


流石に神様の世界を使徒とは云え勝手に移動は出来ない。 女神ディアナの起動キー(実は行先)で移動が出来る


「竜が君臨する(ドーラ)!」 起動キーと共に身体を淡いピンクの光に包まれる。


こうしてカールの初めての次元・時空移動が始まる。 これは決して最後でもなく 長い付き合いの始まりであった。




◇◇ 竜が君臨する(ドーラ)の世界

強さと優しさを求めた神聖皇竜のハイドも10000年と云う長い人生の終焉を迎え、次の世代へと転生を迎えようとしていた。 神聖皇竜の身体は光の粒子に包まれる、そして転生体である卵へと姿を変える そんな転生を女神ディアナとカールは静かに見守っていた。


「ディアナ様 無事に神聖皇竜ハイドも無事に転生体へ替われそうですね」


配下の竜達も固唾をのんで見守っていた、そして柔らかな光が収まった時 そこには2つの卵が有ったのだった。


「ディアナ様 無事に転生体として卵が産まれました」


皇竜であるハイドは元の身体から光に戻り、大きなエネルギーであり、力の源である女神ディアナに導かれ新しい身体の元になる卵へと転生する。


しかし、近くにカールと云う女神ディアナに匹敵する存在が居た為に2つに分かれて転生をしてしまったのだった。


本来、転生した卵に女神ディアナは祝福と云うエネルギーを与え、卵を孵化させる。 逆に言えば祝福を与えないと卵は孵化しないのだ、それも祝福は1回のみである。


カールの声に女神ディアナは固まった! 本来、卵は1つしか無い筈であったからだ


それは旧いハイドから新しいハイドへの転生、云わば器だけのはずが、新しい器が2つである


流石ドジな女神ディアナ、本来 女神たるディアナが一人で見守るはずが、カールと云う特別な存在が一緒にいた為に起こった事だった。。。。


カールは女神ディアナの使徒であると同時に女神ディアナの上司にあたる上級神ユピテルの力の一部を有していた。 その力は絶大で有った


この事に戸惑ったのは女神ディアナだけではなかった。 竜の世界を統治する神聖皇竜ハイドの転生である、ハイドの妻たちも静かに見守って居たのだ


その中で起こった事件である 彼女たちが騒がない筈が無かった


しかし彼女たちにしてもどうする事もできない ただ事の成り行きを見守るだけだった。


女神ディアナは突発的な事象に対しての対応が遅れる。


これは昇神試験での対応をみても明らかだった。 あの時は上司にあたる上級神のユピテルが居たのだが、今回は居ない そうなると対応は必然的にカールがする事に成る


「ディアナ様 このままでは問題です。 神聖皇竜ハイドへ祝福を授けて下さい。」


こうして女神ディアナはカールに促されて神聖皇竜ハイドへ祝福を授けた。

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