面接
連続更新二日目が、始まるよ〜
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「さて、それじゃあ面接を始めようか。悪いけど、マロンは引いててくれるかな?」
「え?でも………」
マロンはマロンで報告することがあったのか少しだけ迷う素振りを見せるが
「彼に関しては大丈夫だよ。君が実力も十分だと感じ、信用もできるから連れてきた。だから僕も面接をしているわけだしね」
クロムのその言葉で、マロンは一度引いた。そしてリンはクロムと対面する。
クロムはマロンに『実力と信頼を示せ』と伝言を伝えていた。そしてここで面接を開く。つまり
(マロンに認められて、やっとここに立てるのか………)
そして、ここでクロムに認められなければ、容赦なく落とされる。
緊張しながらリンが立っていると
「そう警戒しなくてもいい」
リンを落ち着かせるための言葉。今のその言葉にプレッシャーはなく、どこか安心させられる声だ。
「まあ、完全に安心出来る場でもないし、警戒するのは当然だね。正しい選択とも言える」
だからクロムは咎めない。いや、咎める気がない。
リンだって、わかっている。目の前にいる人が、突然攻撃を仕掛けてくるような人物ではない、と。だが、それでも、警戒せざるを得ない。人として、生物としての格の違いが、隔絶した差がリンを警戒させる。
「さて、面接だからね。折角だから色々質問させてもらうよ」
クロムはそう言うと、新しい紙とペンを用意して手に持った。
「じゃあ、始めようか。まずは、君の名前とレベル、冒険者ランクも教えてくれるかな?」
はじめの質問は王道中の王道。一部は異なるが、現代日本の企業でもされる質問だ。
「リン・メイルト。レベルは19でランクはDだ」
「Dランク?僕の聞いてた話ではEランクだったはずだけど………ランクアップでも果たしたのかい?」
リンが答えてもいないのに、クロムは的確に答えを言ってくる。
「俺がマロンを騙してたって可能性は考えなかったんですか?」
「無論、考えたさ。見栄のために騙すにしては、相手が悪すぎる。僕は君がそこまで愚かではないと思ってるが、どうだろう?」
僕の目が、節穴だったのかと、クロムはそう問てくる。
リンに対する信頼、ではない。これは、自分に対する絶対的な信頼だ。
「勘、ですか?」
「それを疑ったら、僕は終わりだからね」
無論、クロムとて今までのことを全て勘で乗り越えてきたわけではない。だが、常軌を逸脱したクロムの直感は、今まで幾多もの窮地を乗り越えてきた。
「当たり前だけど、僕はまだ君を信用していない」
それはそうだろう。逆にここで信用していると言われる方がおかしい。
「だけど、ギルド【マロン様の奴隷】を相手に、マロンを差し出さずに自分が前線に出たことは評価しよう」
「俺が戦ったっていうはなしは信じるんだな」
「それはそうだ。だって、君は緊張はしているが、はなしをしている時は落ち着いていたからね」
クロムはそこまで話すと、持っていたペンを机の上に置いてリンを見た。
今までクロムはずっとリンを見ていたはずなのに、リンはなぜかこの時、はじめてクロムがリンという人間を見たような気がした。
「警戒心が高いね。でも、それくらいが丁度いい」
頷きながら、クロムははなしを続ける。
「結論から言おう。僕個人としては君を迎え入れてもいいと思っているし、僕が言えば君をギルド【黄昏の絆】のメンバーに無理矢理ねじ込むこともできる」
「そう、か………」
ギルドに加入できる。それを聞いてもリンの心は晴れなかった。なぜなら、クロムはまだ入れてもいいと言っただけ。ゴリ押しで入ることもできるとは言ったが、それは可能なだけだ。するとは言っていない。
「でも、そうだね。僕個人も気になっていることもあるし、一つ質問をするね」
そしてクロムは一泊置いてからこう質問してきた。
「君は、なぜ成り代わったことに罪悪感を抱いてるんだい?」
瞬間、リンの時間が止まった。
「おや?今まで誰にも見抜かれなかったから少しビックリさせたかな?心拍も筋収縮も乱れてるよ?」
クロムがなにかを言ってくるが、今のリンにはどうでもいい。クロムが言った言葉を飲み込んですぐに今までよりも警戒度を引き上げれクロムを睨みつけた。
「そう警戒しなくてもいい………と、言っても聞かないか」
クロムは困った顔でそう言うが、リンからしてみれば警戒を解くなという方が無理な話だ。
今まで誰にも話してこなかった成り代わりを話に出してきたのだ。もしかしたら、リンの前世についても話し出すかもしれない。
己が被ってきた仮面が剥がされるような気がた。
確かに、リンの中身はこの世界の人間では無い。本来生まれるはずだったものの命を奪い、住み着き、我が物顔で生きてきたのだ。
責められるのだろうか?
罵倒されるのだろうか?
拒絶されるのだろうか?
否定されるのだろうか?
なにをされてもリンに否定する権利などないと思っている。
だが、リンは目を背けてはいけない。今まで逃げてきた罪に裁かれる時が来たのだと、クロムの言葉を待って
「そう、怖がらなくてもいい………」
だが、クロムは断罪をしなかった。
「僕は、君に興味を持っただけだ。君のことは、この目で少し見ただけだよ」
「そう、か………」
おそらく情報収集に特化したスキル。弱そうに見えるが、相手の深層意識や秘密まで見通せるなら、ああ。確かに強力だ。
「よければ聞かせてくれないかい?君の、前世を」
話さない。リンにその選択肢はなかった。
だから、リンは少しづつ、話し始めた。
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クロムの目は頭可笑しい
人は彼を歩くプライバシーの侵害と言う
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