炎の脅威

付与魔法エンチャント………」


 付与魔法。通称、エンチャント。自分の体にその属性の魔法を纏い、攻撃力や防御力等のあらゆる面でのサポートを行える魔法だ。


「さあ!勝てるもんなら勝ってみろ!」


 およそ森の中で発動するような魔法では無いが、それでもゴルドは遠慮なくその火力を上げながらリンに向かってくる。


(なにか打開策は………)


 リンは未来視を使用しながら突破口を探す。


(水をかける?ダメだ。すぐに蒸発する。剣で斬るか?それもダメだ。俺の剣が溶ける)


 あらゆる行動を思考し、それに対する未来視によってその可能性を捨てていく。

 そもそも炎のエンチャントを発動された時点でリンの勝ち目は薄いようにも感じられる。


「どうしたァ!?臆したのか!?」


 ゴルドは叫びながらリンに斬りかかり、リンはそれを紙一重で回避する。だが、


「チッ!余波で身体が焼けた………」


 痛覚を気合いで耐えながらリンはそう吐き捨てた。その圧倒的な熱量にリンの身体はまともに当たってすらいないというのに焼き目がついてしまっている。


「ははは!これでもう、俺に手出しできまい!」


 ゴルドはそんなどこぞの小物みたいな言葉を言いながらリンに連続で斬りかかる。


 そんな中、リンは回避に徹するしかなかった。リンの今の魔法やスキルでは遠距離攻撃に乏しい。故に接近戦でしか勝ち目ないのだが接近戦に持ち込むと負ける。


(一旦距離を………)


 そうしてリンが離れたタイミングで


「フレイムスラッシュ!」


 ゴルドは炎の斬撃をリンに向かって飛ばした。


「!?チッ!」


 驚愕しながらも、リンは紙一重で回避する。


(腐ってもCランクってことか………)


 Eランク冒険者からしてみれば、ゴルドの魔法は隙がないように見える。近づけばゴルドが纏っている炎に焼かれる。それゆえにリンは常に距離をとることを強いられてしまう。


(森に焼け広がってもダメだし………?)


 リンはそこで違和感を感じた。


「なんで………」


 リンが零したその台詞はゴルドには届かず、ゴルドはまたもや接近戦を仕掛けるために近づいてくる。だけど、リンはそれを無視して違和感を口にした。


「なんで………森が燃えてないんだ?」


 リンが感じた疑問。それは森が燃えていないこと。確かに、少しは燃えている。だが、その少しも先程ゴルドが放った斬撃による着火だけだ。それ以外では一切燃えていない。


 そしてあれほどの高温の熱を発しているのに、ゴルドの身体にはなんの影響も出ていない。


「試して、みるか」


 迫ってくるゴルドに対し、リンもまた突っ込んでいく。


「血迷ったか!?」


 そしてリンが視認することも難しい速度でゴルドは剣を振り下ろし、


「トドメの一撃が最も油断する瞬間だ。生き急いだな、ゴルド」


 リンは未来視を含めて呆気なく回避し、ゴルドの頬を殴り飛ばした。

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