新しい武器

十二話目更新〜

そして願望言いまーす


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 魔法を買って、リンは武器屋に来ていた。

 街に建てられたその武器屋は、店の店主がまだ未熟な鍛冶師から買い取った武器を店に並べている。

 店に並べられている武器はどれも初心者用の武器なため、上級者や中級者がここに訪れることは基本的にない。

 もちろん、リンも初心者の一人だ。

 初心者しか集まらないので店は繁盛してないように思えるが、この街はEランクやDランクの冒険者が多いので人が想像するよりも多くの冒険者が武器を見繕っている。低ランクの初心者には、専属鍛冶師等もつかないのだ。


 そもそも、店主が未熟な鍛冶師から武器を買い取って販売しているのにも理由がある。

 未熟な鍛冶師は作品の質もイマイチであり、普通に売りに出しても売れない。どころか、見向きもされないだろう。それでは成長の余地がない。

 ならば、と。店主が未熟な鍛冶師から武器を買い取り、初心者用の店を開く。鍛冶師は買い取って貰った金で生活したり、鍛治の素材を買ったりする。初心者冒険者も、自分の実力に見合った武器を購入できるので、武器に頼りすぎることが無くなる。win-winだ。


 そんな店でリンは残りの17万GOLDを手に武器を見ていた。


「………ダメだな」


 だけど、とても良い物は見つからない。そもそも、今回武器が壊れたのだってリンの魔法の反動だ。その反動に耐えられる武器が欲しかったのだが………


「そもそも初心者用の武器にそれを求めるのが間違ってたか」


 じゃあ、中級者用にレベルの高い鍛冶師の武器を見に行く?それこそ論外だ。ていうか、金がない。


「まあ、適当に見繕うか」


 完全な粗悪品じゃだめ。ということで10万くらいの剣を適当に探し、その中で一番質が良さげな剣をリンは購入した。今回は投げナイフは断念。お値段は114,300GOLD。


「残りは………6万か。まあ、明日まではもつか」


 明日はクエストを受注することを心に決めながらリンは少し早いが夕食を食べるために冒険者ギルドに赴いた。

 適当に席に座ると、定員に定食を注文してお冷を飲みながら少しだけ今日のことを思い出す。


「………にしても、大丈夫か?あいつ」


 リンが思い出したのは、マロンのことだった。リンがギルド加入を希望した際に少し思案した後に私に任せてと言いきった後に連絡先だけ渡してさったとどこかへと退散していったあの少女を。


「無茶してなきゃいいけどな………」


 さすがに自分の欲望の為だけにあの天然少女に危害を加えるわけにはいかない。


「まあ、高ランク冒険者だろうし、引き際は弁えてるだろ」


 冒険者ギルドの試験をいくつも乗り越えた冒険者ならば、引くべき場所は弁えているはず。そう思っていた。


 リンは知っていた。ランクアップには、冒険者ギルドが出す試練以外にも方法があることを。


 リンは知らなかった。冒険者ギルドの試練を一度も受けずに高ランク冒険者になった冒険者がいることを。


 リンは知らなかった。マロンが、その冒険者だということを。


 強さを求めるリンの知らないところで、事態は大きく動き、運命はリンの予想外の方向へ舵をきることを、この時は誰も知らなかった。

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