第28話 【青】様
28話目
「そうはいっても今はやらなくちゃいけない事が有るから、また今度だけどね。」
「あ、そうなんですか。」
よかったーー!!!!
「それならなぜここに?」
「久しぶりに家を出た引きこもりの顔を見に来たからに決まっているじゃない。あんな事件があったのにのうのうと引きこもっているとは思わなかったけど。」
「あんな事件?」
「……言っちゃいけないって言われているのよね。知りたかったら自分で調べなさい!」
「そうですか。」
あんな事件とはなんのことだろうか。心当たりがあるとすれば、人類に魔術が個性として蔓延したということくらい。
その原因を【青】さまは知っているのだろうか。
僕は好奇心のあまり調べたくなって来るが、あの【青】様言ってはいけないと命令を受けて健気に守っているということは解明しないほうがいいことなのかもしれない。
しかし、魔術が使えないはずであった人たちが使えるようになる方法というのは、今後の研究材料として興味があるのだが。
まあ、調べていいと言っているのだから深く危険視しなくてもいいのかもしれない。
「それじゃあ私は予定があるから行くわね。」
「あ、そう言えば今の拠点はどこなんですか? 魔術連合の拠点は破壊されていましたよね。」
「今は千海願にお世話になっているわよ。依頼を受ける代わりに移住させてもらってるの。」
「え!!!! あの千海願に居るんですか?!」
「そうよ。魔術連合が無くなった今、世の治安を維持する役割を代わりにになっているの。」
「凄いですね……」
千海願。そこは全ての魔術師にとって念願の場所であり、魔術の頂点ともいえる場所である。僕はまだその片鱗すらとらえることが出来ていないが、いつか行きたいと思っているのだ。
そんな所に住んでいるなんて【青】様は凄い事をやっているな。
「だから住所は言えないわよ。」
「それはそうですよね。僕だって住所を教えられたとしても行け無いですから。」
「じゃあ行くわよ私は。もうないわよね。」
「大丈夫です。」
【青】様にモフモフされていたピノが戻ってきたことを確認する。激しく触られたのか毛並みが乱れており、ぼさぼさになってしまっている。
後でブラッシングしないといけないなと思ってたら、パっと魔力の圧が無くなりいつもの空気に戻った。
魔力だけでここまで威圧するのは流石というほかない。僕もいつかあれくらいの魔力が欲しいがそのためには肉体改造するほかないので、諦め気味だったりする。
魔術師なら止まらず進化しろと思うかも知れないが、流石に失敗する確率が高い改造を行ないたくはないし、人間の体をやめる気はない。
☆
「ここにいたか、迎えに来たぞ。」
【青】様と話が終わってから数分がたった頃、目の前に車が止まり窓が開いた。その中からはダルサン学長が顔を出してきた。
2時間後と言っていたのに早いなと思ったが、あたりは暗くなっておりちゃんと2時間経っているようだ。【青】様と話し込んだ訳では無いのだが、時間は過ぎていたよう。
「ありがとうございます。」
「そうだぞ! この私が迎えに来ることなんてそうそうないんだからな。」
見るからに高級である車の扉が開き、入れと合図してくる。その指示に従いピノをフードに入れながら乗せてもらった。
すると、流石ダルサン学長が乗っている車と言うべきか、シートはフカフカしておりこのまま寝てもいい程。お金は研究三昧だったがゆえにそれなりにあるが、その貯金でも届かいない、この車は全てがキラキラして見える。
「いつもの店に連れて行ってくれ。」
「かしこまりました。」
専属の運転手に命令してくれた。学長ともなれば専属で人を雇えるものなのだろう。
「これから行く店は魚が旨いんだ。楽しみにしてろよ。」
「楽しみです。」
ダルサンはウキウキしておりいまにも飛び跳ねそうな勢いだ。
ピノは魚が貰えるとのことで、今のうちに媚びておくのかダルサンの膝に乗っかり撫でてもらっている。
「そうだ。観光してたんだろ? どうだった。」
「文化遺産に行ってきたんですが楽しかったですよ。日本とはまた違う文化を築いて来たんだなって感動しました。」
「そうか、私はロンドンの歴史とかはあまり知らないから、見ても楽しくないんだ。でも、感動できるのはいい。」
いままでいろんな遺産を見てきたが、今の時代は人が多いだけあって興味深い物も沢山あった。
「遺産をまわったって事はロンドンで買い物とかはしてないのか?」
「一日中駆け回ってたので買い物の時間は無かったですね。」
「そうか。それなら買い物もお勧めだぞ。ロンドンで手に入らないものは無いからな。」
「そうなんですか? それなら回ってみようかな?」
ショッピング系の所は全部スルーしてしまったので、明日はそっちをめぐってみようかな。
「興味あるならオペラとかもお勧めだ。見ていて楽しい。」
「色々な物があるんですね。」
「そうだぞ。何て言ったって個性研究の最先端の都市だからな。いまだって目の前には世界を激震させるほどの物を発見した博士が居るんだからな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます