第6話 頑張った

こんにちわ、地球の日本人の山田優希、17歳、高校2年です。あ、男です。

地球の地元の通学途中の駅前に出来た白い穴に落ちてこっちの世界に来ました。

落ちてというか、落とされてだけどね。


小説の異世界転移モノのように、《召喚》されたわけでなく、死んで神さまに転移させられたわけでもなく、なんか地球のそこら辺に出来た白い穴に落ちて、こっちに来ました?


だもんだから、チート能力もないし、魔法も使えないし、アイテムボックスのような無限収納もなく、


「ステーーーータス!」


って叫んでも何も出ませんでした。

普通〜〜の人間としてこの世界に落ちました。

現実は俺に優しく無い。

と言うかこの状態が、そもそも現実と言っていいのかわからないけど、想像していた小説のようなファンタジーな世界ではないのかも。



ある日、地球上のあちこちに正体不明の白い穴ができた。

穴は不定期に消えては場所を変えて現れるを繰り返し、長期間同じ場所にとどまっていない事で「穴の調査」は遅々として進まず世界中で謎は解明出来ずにいた。

穴の中は白いモヤで満たされていて深さは不明、ただし数メートルも降りるとそこから先が切断されたように消える。

ロープや鎖で繋がれたら調査用の機器は消えて無くなったらしい。

人もなくなる。

縄ばしごで降りて行った海外の調査員は、戻ってこなかったらしい。


そんな穴に俺は落ちた。いや、落とされた。

白い変な空間を通ってようやく出た場所、それがこの森。

最初の晩はガクブルして一夜をすごしたけど、翌朝、日が昇りまわりを見渡したら、森だ。


普通の森。

木が生い茂っている森。


顔の生えた木なんてないし、ツノの生えた兎も出てこない。

地面をはうスライムらしきものも無し。

植物には特に興味はなかったので、そこら辺に生えてる木が地球と違うかどうかなんてわからない。


じゃあ、何でここが異世界だと思ったか。

それは、アレ。

頭上の太陽ね。

地球のほど眩しくないから見上げても平気、

その太陽の両脇に月よりは大きい衛星のようなものがひとつずつ。

太陽を挟んでふたつの月。

はい。異世界決定〜〜。


で、俺はとにかくしばらくは森のここを拠点にすることにした。

もしかしたら俺が落ちた穴から助けが来るかもと儚い期待を抱いたのだ。

救助の人は来なかったけど、何と!救助の物資が落ちて来たのだ!


いや〜、待ってみるもんだ。

結局穴は一週間くらいで閉じたようで、もうその地点に物も人も落ちては来なかった。

そこから徒歩90分、6kmぐらいの場所に小川と割れた岩場があり、

キャンプを張るには丁度よく、そこを生活の場にした。


今のところ森の中で危険な動物やモンスターは見かけていない。

用心しながら森の中を探り、人を探してみた。

拠点にした川辺の岩場を中心にとりあえず西側を探索して見たが、この森に人が暮らしているような跡が見られない。


日帰りで拠点に戻って来られる距離までしか探索していないが、途中で野宿しながらもっと先まで進む事を考えた。

この森に人が住んでいないとしたら、森を出ることも視野に入れなければならない。

今はまだ救援物資の食べ物があるが、いずれ尽きてしまう。

森から出て街なり村なり、人がいるところに行かなくては。


そうして一応一週間分の食料を背負い、テントの岩場を後にした。

西へ向かう。

途中、途中に目印を残しつつ進んだ。

日が暮れかかったので野宿出来そうな場所を探して初日は終わった。


次の日の朝、また西に向かい出発をすると30分も歩かぬうちにだんだんと樹々が薄くなって行った。



「森の端まで来た!」


とうとう木が途切れて石が転がった草地に出た。


「おおおおおおお!森から出たあああ」


・・・・・・


「出たけど何もねぇーーー・・・」


森から出て開けた周りを見てみるが、草地がずっと先まで続き、家や街などは全く見えなかった。

道でもあればまだしも、ただひたすら草地のなだらかな丘が続いていた。


食料はあと6日分ある。

このまま草地を進んでいくか。

しかし、途中で食料が尽きたら終わりだ。

見える限りに街はない。


とは言え草地はなだらかではあるがデコボコとした丘に囲まれている。

遠方が見えづらくもある。

いくつか丘越えるべきだろうか?

だがこの方向に街があるとは限らない。

面倒くさいけど、一度拠点に戻って今度は反対方向に行ってみるか。



とりあえず森から出られることがわかっただけでもよし!

一度拠点に戻ろうと思ったがせっかく食糧を7日分持ってきたんだ。

拠点に戻るのは草原を少しだけ検索してからにしよう。


まずは目の前の丘に登ってみるか。

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