占いエッセー 人生いろいろ虹の色

牧 千晴

はじめに

最近は占い関係の店が驚くほど増えている。なかには正当な占いだとは言えない処もある。たとえばカウンセリングとか、霊視だのスピリチュアルだのと言うものもあるのだ。

 カウンセリングは占いではないし、霊視で前世の話をされても確かめようがない。

 本当の占いと言うのは何だろうとか、本当に当たるのだろうかと疑問を持つ人は多いと思う。料金に不安を感じる人もいるようだ。

 その半面、占いを信じて頼りにしている人たちが多数存在する。毎週やって来ていろいろ相談し、占いの結果に納得して、明るい顔で帰って行く人もいるのだ。私は正統な占いのあれこれを知ってもらいたいし、占いを生活や人生に生かしてほしいと願っている。

 私の父は日本橋で呉服屋を営む傍ら、戦前から九星気学という占術を学び、活用していた。その影響か十歳年上の長姉が占いに興味を持ち、手相から姓名学、四柱推命、断易など次々と習得して、私に復習がてら話してくれた。

 そのうち横井伯典氏の周易に熱中し、私も自然と占いに親しむようになったのだが、学び始めると確かに易占は面白かった。

 昭和59年、姉は新宿駅ビル内のミロードに「占いサロン 風雷益」をオープンした。「風雷益」とは周易六十四卦名のうちの一つで、風神と雷神が力を合わせて大地を潤し、利益を与える。そして受け取れる良い易なのだ。互いに満足できるようにと思ったのだろう。

 私も姉に勧められて、昭和の終り頃から平成にかけて週に二日、出勤することになった。相談は恋愛・結婚から仕事や対人関係、移転や命名など多岐にわたる。占術も気学や推命など依頼客の要望に応えて、最終判断は易占を用いることが多かった。当時はいつも二十人以上の来客があり、帰宅すると十二時近くになったが、充実感を得られてうれしかったものだ。

 料金は開業以来ずっと変わらず、二十分三千円が基本料金で、総合鑑定は五千円だ。あれもこれもと家族のことまで占って一時間になれば一万円となるので、途中で客の諒解を得て進める場合もある。中には毎週訪れて占いに頼り過ぎる人や、ノイローゼ気味の人もいるので神経を遣う。が、悩んで暗い顔をしていた客が前向きに考えられるようになり、明るい表情で帰って行く姿を見送るとほっとする。

 占い師(鑑定士ともいう)になりたいという人も増えてきた。七十代はもちろん八十歳を過ぎても行列ができる人気占い師もいる。

 占いは宇宙からの神聖なメッセージであり、人間哲学であり処世術でもある。占いについてあれこれと気づいた事柄を述べてみたいと思う。できれば占いを、人生に生かす知恵として、賢く活用してほしい。

 私にとってはいろいろな人生にかかわることができた面白い仕事であり、多少なりとも人々の役に立てたことをうれしく感じているので、易の神さまに感謝している。


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