四十四話 死神の……指?

前衛組が木々から跳びだす中、クランドは誰よりも速く戦場を駆ける。


「カバディ」


身体強化を使用し、更にキャントを発動。


初っ端からフルスロットル、エンジン全開!!! という訳ではないが、戦る気満々であることに変わりはなく、すれ違うモンスター共を撃沈させていく。


長年鍛錬と実戦を重ねてきたお陰で、クランドの指を体を刈り取るの非常に上手くなった。

体に触れれば、その部分を削り取ってしまう。


「ガバっ!?」


「ギャウっ!!??」


「カバディ」


首部分を削り取ってしまえば、後は放っておけば勝手に死ぬ。

幸いにも再生する能力などは持っていないので、その一手だけで死に追い詰めることが出来る。


「ガルゥアアアっ!!!」


「カバディ」


邪魔臭いと思いながらも、避けるだけでは終わらない。

コボルトリーダーの斬撃を避け、腹に重い蹴りを叩きこむ。


二重に強化されたクランドの蹴撃は、容易にコボルトリーダーを後方に蹴り飛ばした。


既に戦闘が始まってから、五体のモンスターがクランドの手によって殲滅。

この状況に、ある程度知能が高いモンスターたちは、自分たちを襲ってきた人間の中で、一番あの男がヤバいを感じた。


なるべく早く……速攻で潰したい。

ただ、その男以外の人間が、それを許さない。


「ウィンドアロー!!」


「ロックランス!!」


「フレイムウィップ!!!」


「おらっ!!!」


最初の奇襲だけで遠距離攻撃が終わるわけがなく、前衛たちがしっかり引き付けて、後ろに流れないようにしてるお陰で、遠慮なく矢や攻撃魔法を放てる。


「どっせい!!」


「せやっ!!!」


「うぉっ!? あぶねぇな!!!!」


「ぬぅおらああっ!!!」


続いて、前衛組もただコボルトやウルフたちの攻撃を防ぐだけではなく、自分の得物を急所にぶち込んでいく。


以外にも、大きな被害が出ることなく討伐出来そう……誰かがそう思った瞬間、二頭が天に向かって雄叫びを上げた。


思わず耳を塞ぎたくなる声量。

実際、冒険者の中には耳を塞いでしまう者もおり、それが隙となり、爪撃を食らってしまう。


ただ……二頭が発した雄叫びは、そういった人間の両手を一時的に使えなくするのが目的ではない。


「警戒心を高めろ!!!!」


リーダーの男がそう叫ぶと同時に、二頭よりヒエラルキーが下のモンスターたちの身体能力や迫力が増加。

群れのリーダー格が上げた雄叫びにより、部下たちの身体能力などが上がった……という形が正しく、勿論スキルを使用した結果。


身体能力が二倍、三倍!!! と格段に上がることはないが、今回の場合は少々特殊であり、四割増しほど上がっている。

そうなると、先程まで攻勢に出ていた前衛たちも、身長にならざるを得ない。


攻撃力も上がっており、まともに食らえば一瞬でお陀仏か、戦線離脱。

下手に攻撃を仕掛けようものなら、手痛いカウンターを食らってしまう。


後衛たちも、先程までよりも狙って攻撃しなければ、中々攻撃が当たらない。


「無理に当てようとするな!! 決定的な隙を狙え!!!」


状況が厳しくなったのは間違いないが、それでもリーダーの冒険者が指示を飛ばすことで、場が混乱することはない。


有難いことに、雄叫びが上がる前に少し数を減らせたので、数的には優位な状況。


メインであるジェネラルに人数を裂くことも出来る。

因みに、リーゼはジェネラルの討伐に後衛として参加。


そして予定通り、クランドは一人でグレートウルフへと挑む。


「カバディ!!」


「ガルルゥアアアッ!!!」


巨狼と……人の姿をした戦闘力の塊がぶつかり合い、戦場に烈風を巻き起こす。



(さて、こちらに集中しませんと)


一人でグレートウルフに挑む主人を心配しようとも、自身の仕事に集中しなければならない。


リーゼは意識を完全に切り替え、先輩たちと共にコボルトジェネラルに立ち向かう。


「ガァアアアアアアッ!!!!」


ジェネラルは大きな曲刀を振りまわす蛮族スタイル。


技術的な面はないが、この場にいるどの冒険者よりも大きな体から繰り出される一撃は、決して侮れない。

一人の前衛が気を引いて、もう一人の冒険者が別方向から攻撃しようとも、優れた反応速度で対応。


(ちっ!! かなり育ってる個体だな!)


(この腕力に、その速さはヤバいだろ!!)


(この!!! ちょっとは痛がりなさいよ!!!)


攻撃が全く通っていなくはないが、今のところ毛皮が少々斬れる程度。


体に魔力を纏う技術は身に付けているので、魔法に対する防御力もそこそこ。


(もっと、鋭くした方が良さそうですね)


クランドにジェネラルの方を任された以上、中途半端な仕事をする訳にはいかない。

何度か攻撃魔法を当て、防御力を確かめ……魔力操作で既存の攻撃魔法を弄る。


「ウィンドランス!!」


既存の風槍を圧縮し、貫通力を増加。

その結果、脇腹を貫くことに成功。


アドレナリンドバドバ状態なため、それだけで動きが完全に鈍ることはない。

しかし、良い一撃をぶち込むことに成功したため、同じくジェネラルと戦っている先輩たちの士気が向上。


それでも、将軍の覇気はまだまだ衰えない。

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