三十七話 最近、身に染みて解る
自分たちを避けていくルーキーたちを不思議に思いながらも、そのまま前へ前へと進み、クエストボードの前に突着。
「……この三つにするか」
本日も三つの依頼書を取り、それを受付嬢の元へ持って行く。
クランドは割の良い依頼か否かなどは考えておらず、とりあえず自分のランクで受けられそうな依頼を取った。
全て森の中で達成出来るものであり、本人にとっては、場所を移動せずに楽だと思っている。
「お願いします」
「……かしこまりました」
既に先日の一件が耳に入っている受付嬢。
イザベルから、クランドが王都で起こした一件についても聞いているので、わざわざ考え直すように言うこともない。
三件とも受理し、二人は早速出発。
そして今回……は、ルーキーたちも二人に再度勧誘を行うことはなかった。
何故なら、まだ朝の割の良いい依頼の奪い合いは終わっていない。
二人が現れたことで意識を持っていかれたが、即座に意識を戻す。
先に目を付けたのは俺だ!! いや、俺たちの方だ!!! と言い争いをしている中、二人はマイペースに森を探索。
本日も討伐依頼を二つ、採集依頼を一つ受けた。
まだ冒険者になってから強敵と戦ってはいないが……今のところ、やはり楽しいというのが、一番の感想。
森の中の探索には慣れており、二人はサクサクと進んでいく。
「他のルーキーたちも、ようやくクランド様の凄さを理解したようですね」
「え? う~~~ん……あれは、どうなんだろうな?」
自分たちをルーキーたちが避けていった。
それだけを考えると、そう思えるかもしれない。
しかし、クランドはあまりそうは思っていなかった。
(別に俺の凄さというか強さ? を理解して避けたって訳じゃないと思うが)
とはいえ、クランドたちは冒険者登録をした初日に、依頼を三つクリアするという偉業を達成。
しかも、ランクは自分たちと同じ、適性がEランクのもの。
「まっ、普通に接してくれるのが一番なんだけどな」
孤高の存在としてトップに立ちたい訳ではなく、やはり冒険者としての友人も欲しいと思っている。
ただ……今の現状では、それも難しい。
それは本人も解っていた。
「クランド様」
「あぁ、剥くから来てくれたみたいだな」
受けた討伐依頼の一つ、キラードックが向こうからクランドたちの元にやってきた。
当然、クランドたちを噛み殺すつもりだが……それは二人も同じ。
二体のキラードックを、それぞれ一体ずつ受け持ち、瞬殺。
十五歳になるまで鍛錬と実戦を積み重ねてきクランドにとって、キャントを使用するまでもない。
「今回は私が行います」
「んじゃ、任せるよ」
何度も経験している為、リーゼの解体の腕も中々のレベルに成長している。
あっさりと討伐証明部位を回収し、引き続き目的のモンスターを探す。
すると、昼食を食べ終えたころ、ワイルドボアと遭遇。
過去に対峙したことがあるモンスターであり、ランクはD。
冒険者になりたてのルーキーが戦う様な相手ではないが、そんなこと知ったことではない。
クランドは楽しそうな表情で、一歩前に出た。
「こい」
「……ブァアアアア!!!!」
嘗められていると本能で感じ、怒り任せに突進。
しかし、クランドはその突進を両手で受け止めた。
少々後方に下がりはしたが、受け止めたのは事実。
「おい、もっと本気で来いよ」
そう言うと、両手でワイルドボアをひょいっと持ち上げ、後方に投げる。
「……」
「ほら、本気で来い。もう一度受け止めてやる」
「ッ!!!!!」
再度同じ感情を抱き、ワイルドボアは先程とは違って身体強化のスキルを使い、全身に魔力を纏った。
Dランク冒険者のタンクでも、これから行われる突進はまともに食らいたくない。
そんな攻撃に対し……クランドは再び真正面から対応。
「はっはっは!!!!!」
高らかに笑いながら、ワイルドボアの渾身の突進を受け止めた。
勿論、前回と同じく後方に押された。
その距離は長くなったが、それでも突進を受け止めることに成功。
普通に考えて、馬鹿過ぎるう行動。
従者のリーゼも……正直、そう思わなくもない部分はある。
屋敷で生活している時に、護衛の騎士たちが感じていた気持ちが、最近はよく解る。
「ふん!!!」
「バっ!?」
左手で逃げないように抑え、右拳でフックを放つ。
拳には魔力が纏われており、その衝撃はしっかり脳まで到達。
頭蓋骨、脳も潰され……その一撃でワイルドボアはダウン。
「それじゃ、こいつは俺が解体するから」
「かしこまりました」
血抜きを行い、クランド一人でワイルドボアの解体をスタート。
リーゼ以上に慣れていることもあり、その解体スピードと技術は一流。
冒険者ギルドに所属している解体士たちも、その腕を認めざるを得ない。
「ふぅ、終わった終わった」
あっという間に解体を終え、まだゲットしていない薬草の採集へ向かう。
その道中でも依頼と関係無いモンスターに遭遇したが、二人は普段と変わらない様子で戦い、日が暮れる前にはハリストンに戻った。
「これ、買取お願いします」
依頼とは関係無い素材の買取を頼んだことで、周囲がざわついたのは言うまでもない。
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