第34話 魔法も買ってみた
「ふぅん、ここが聖都ハイディアか。確かに人は多いな。セフトの数倍はいるかもしれない」
俺は『聖都ハイディア』に入ってすぐにそう口にした。『セフトの街』よりも明らかに数段人通りが多い。真ん中を通る石畳の大通りは数段広いのに人口密度は『セフトの街』よりも高そうだった。
アンバー曰く、『セフトの街』は始めてすぐに降ろされるマップだから、完全な初心者も多い。完全な初心者の勧誘とか他に目的がないプレイヤーたちはあまり行かない場所なのだと。だから『聖都ハイディア』は様々なプレイヤーが集まる地点にされているらしい。
施設も増えて、マップも広い。ストーリーもしばらくここから展開していく。『セフトの街』から数マップで来れるし、ワープも売ってる。マーケットでも売られてるからアカウントを作り直した人はワープを買ってさっさと移動することも出来る。先にも街はあるのだが、まずはここが一番の拠点にされているとのことだった。ちなみに先の街は『聖都ハイディア』の人の多さに嫌気がさした人たちが多くいるのだとか……
『セフトの街』に無い施設で『聖都ハイディア』にある施設の一つで魔法屋がある。ここで魔法を買うことによって魔法を使うことが出来る。ストーリーを進めなくても聖都ハイディアに入ることは出来るし、ファーストはマリンと共にすぐにここに来たということだろう。
「さて、俺も魔法を買っとくか」
今回『聖都ハイディア』に来た目的の一つがこの魔法屋だ。当然シナリオを進めるためでもあるのだが……
この『Lunatic brave online IV』は武器や職が限定されている訳ではない。大剣を持った人間が魔法を使っても良いのである。ただ、ステータスポイントにも限りがあって、ダメージ効率を考えると普通はそんなことはしないのだが、俺の場合はそういう心配はない。元々DEX極だからどっちにしろダメージは出ないからだ。
ただ持っておくと使用によって能力が獲得出来る可能性もあるし、それを使って装備も作ることが出来る。だから弓だけでなくて魔法も使っていこうと思ったので購入することにしていた。
『聖都ハイディア』は『セフトの街』のような露店ではなく、店は一軒ずつの建物として存在している。とはいえ、マップを確認すると中心の大通りに纏まってあるようだ。
「目的の魔法屋は……近いな」
魔法屋は俺から一番近い建物だった。俺は木でできた両開きのスイングドアを押し開けて、魔法屋の門を潜る。中には何人かのプレイヤーの姿と奥にカウンターが見える。そのカウンターの中にはピンクの長い髪の女性エルフが立っていた。名前も浮いているし、NPCだ。
そのカウンターのNPCに話しかけると売っている魔法が表示される。一番簡単な魔法は《アロー》という魔法だ。一番簡単なだけあって値段も一番安い。千イクサで購入出来る。これは魔法の矢がモンスターを貫く魔法である。ファーストもこの魔法を使っていた。ちなみに二番目に安い魔法は《ジャベリン》という魔法である。だが、安いとは言っても急に値段が跳ね上がる。十万イクサだ。まあ、今の俺には払えるが、始めたばかりの初心者には厳しい値段だろう。これは初級魔法の《アロー》から派生させることが出来るからとアンバーの談である。それ以降の値段になると、もはや運営は売る気は無いと言っているようにも見える。用意はしておく、地道に稼ぐか獲得しろってことなんだろうな。
面倒でお金のある人はチャチャチャっと高度な魔法を買ってしまうらしいのだが、どうやったら上位の魔法を習得出来るのかも俺は興味がある。ブログのネタにもなるかもしれない。ならここで買うべきは《アロー》のみで充分だ。
「さて、目的の魔法は買ったし試し打ちと行きますか。とりあえず数マップ戻って……かな。まだ倒してないモンスターがいるマップは残してあるし……」
『セフト平原』から『聖都ハイディア』までは数個のマップを通過してきた。その中で共通のモンスターは居たけど、新規のモンスターも当然いた。そのモンスターのドロップアイテムの確認と魔法の試し打ちを一緒にやってしまおうと思ったワケだ。
「うし! じゃあ行きますか!」
と、俺は魔法屋を後にしたのだった。
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