第29話 『アルデス山』を降りてみた

 真っ白だった視界が晴れると俺は別のマップに立っていた。見覚えは、ある……多分ここは前のマップだ。


 そう思った俺はマップを確認すると『アルデス山中腹』とある。やはりここは先程戦っていた『アルデス山頂』の直前のマップだ。と同時にクエストがどうなったのかを確認するとクエスト表は『アルデス山を降れ!』となっていた。


 倒したことでどうなったのかはわからない。そもそも逃げた時との比較が出来ない俺は、クエスト表に従うことにした。

 そして、『アルデス山麓』を通り過ぎて『セフト平原』のマップに入ると背後から声が聞こえる。


「おーい! 無事だったか?」


 先程の三騎士の一人、ウェッジだ。後方に二人の姿が見える。どうやら三人とも無事だったみたいだ。


「お前があの戦域を離脱してすぐに『暗黒竜アルデス』が飛び去ってしまってな。俺たちも山を降りて来たというところだ」


 ふむ。倒したのではなく、俺が逃げた前提で話が進んでいる。あそこで倒す想定はしていなくて、そういうプログラムを用意していないみたいだ。多分、急に視界が白くなったのも倒したムービーが準備されてなかったからとかだろう。別に何かを期待して倒した訳じゃないし、それはそれで構わない。倒せない敵がいたから倒しただけ。ゲーマーとしては当然のこと。ただの自己満足で充分だ。まあ、戦闘自体は録画されて残ってるから、あとでそれを編集してアップでもするか。


「どこに行ったかは検討もつかない……」


 とはピエットの言葉だ。飛び去った『暗黒竜アルデス』の行先がわからないと。視線を感じるがそんなの俺も知らん。


「俺たちは『聖都ハイディア』に戻って報告をしなければならない」


 聖都? そういえば三人はどういう関係なんだっけ? ああ、聖騎士だったか……


「ところで君はどうしてあんな所に居たのか? もしかして君も誰かに頼まれて調査していたとか……」


 まあ一応『セフトの街』の領主の依頼になるのか? 目の前にはそれらしき画面がポップしている。俺はその画面に軽く触れると、会話が進んだ。


「なるほど、『セフトの街』の領主の頼みか。あそこの領主は民のことをよく考えていると聞いたことがある。納得だ。なら君も報告に戻った方がいいだろう。『暗黒竜アルデス』は飛び立ち、危険は無いだろうが、心配だろうからな。では、我々はこれで……」


 そうして三人は去っていってしまった。


 残された俺はクエスト表を確認すると、『領主に報告せよ!』とある。これで『セフトの街』の領主に会えば、一旦メインクエストは一段落ってところかな。


 さて、クエスト表を開いた序にステータスも確認してみよう。


 ────────────────────


 Lv:13(+0)



 STR:1

 INT:1

 VIT:1

 AGI:1

 DEX:71(+80)


 Unique Skill

 《多段撃ちの極意 》


 Permanent Skill

 《千発千中》《獣の天敵》《水滴石穿》《暗黒竜の祝福》



 ────────────────────


 レベルは変わってない。『ビー』を狩りまくった時のままだ。『暗黒竜アルデス』を倒したことによる経験値の獲得は無かったみたい。でも、なんか知らないスキルが増えてるな。


 《暗黒竜の祝福》


『暗黒竜アルデス』を倒した証。第一部までのモンスターのドロップ率がアップする。なお、譲渡することは出来ない。


 称号みたいなものかな? 第一部が何処までかわからないが、クエスト表でチラチラ見える所によると今は第一部第一章。多分再度『暗黒竜アルデス』が出てきて倒すのが第一部の最後とかなんだろう。で、そこまで行ったプレイヤーへの称号として付与されるスキルなのかもしれない。ドロップ率アップしかないからエンドコンテンツみたいなものかな。まあ、素材集めも捗るし、生産で生きてく俺にはありがたいことだ。『合成』で付与することは出来ないとも書いてある。まあ、落とした素材はあげたりすればいいから特に影響はないか……


「うん。とりあえず確認出来るところはこんな所かな。しかし、流石に疲れたわ。報告は後回しにしてログアウトをするか。ブログも書かなきゃだしな」


 と呟いた俺はその場でログアウトをしたのだった。

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