自己紹介
入学式という名の説明会が終わり、俺達は教室へと戻った。入学式後のホームルームだ。当然……。
「自己紹介をしてもらうぞ」
となる。だろうなと思ってた。その為に、昨日はいい感じの自己紹介文を考えてきたから……
「名前と使える魔法だけ言う感じで。趣味だとかそう言った事は言わなくていい。そういう自己紹介は各自放課後に言い合うように」
え? 嘘だろ? それって自己紹介なのか……? 頑張って考えてきた自己紹介文が全部パーだ。
「それじゃあ、出席番号一番の赤木から」
「はい。皆さん初めまして。赤木風兎です。無属性魔法とバフを使う事が出来ます。これから一年間、よろしくお願いします」
名前と魔法、そして、一言だけ挨拶を。趣味とかそう言った事を言えないので、これくらいしか話す事が無い。
「おう。じゃあ、次の奴」
「はい、伊藤賢人です。……」
その後も自己紹介が続く。合計三十人のクラスメイト。全員の名前を覚えるのにどれくらいかかるかなあ……。
◆
「うし、全員の自己紹介が終わったな。俺から言う事は……。特にないな。それじゃあ、今日はここで解散だ。暫く自由の残って友人作りに励むといいが、最終下校時刻の18時には教室の戸締りをするように」
なんとも適当なホームルームが終わって、俺達は自由となった。ここからは友達作りである。俺はさっそく、近くに座る男子生徒に声をかける。
「これからよろしくな! えーと、確か
「いかにも、俺は柏木だ。そちらは赤木……であってるよな?」
「ああ。出席番号一番の赤木だ! とりま
「ああ。これ、俺のQRコード。グループトークなあ。俺は知らないが……」
「どうも。えーと、『赤木だ!よろしく』っと。届いた?」
「うむ。『柏木だ、よろしくな!』っと」
「後ろの君は……伊藤だっけか?」
「ああ、よろしく!」
そうやって、積極的にアカウント交換をしていく。俺達の様子を見て、他の人たちも取り敢えずアカウント交換を始めたようだ。何かあった時に連絡を取り合える仲間がいるのは嬉しいよな。
「赤木君! やっほ! アカウント、交換しよ?」
「七瀬さん、どうも。まさか同じクラスになるとはな。これ、俺のQRコード」
「ありがと! 『よろしくね』っと!」
「お、可愛いスタンプ! じゃあ、俺からも」
よろしくねと書かれた看板を咥えるワンちゃんのスタンプが送られてきた。俺はNice to Meet U!と書かれた道路標識スタンプを送信。
「道路標識! 地味なスタンプ!」
「すまない、スタンプはそれぐらいしか持ってなくて……」
「ああ、謝らなくても。むしろ、ゴメンね。地味とか言っちゃって。ともかく、これで男子側と女子側の橋渡しも出来たし……」
「グループトークを作れるな」
「ええ。私が作るね!」
「おっけ、任せた!」
◆
「この後ってどうすりゃいいんだ? このまま親睦を深めようにも、そろそろ昼飯時だよな? みんなでフードコートへ赴くか?」
「他のクラスも同じこと考えているだろうから、ごった返してると思うぞ……」
「テイクアウト出来る食べ物を買って、教室で食べるとか?」
「それが良いかもな。他の人にも話を聞いてみるか」
その後の話し合いの結果、希望者は午後以降も教室に残って談笑しようという事になった。ここまでの感じ、良い雰囲気のクラスになりそうだ。あと、積極的に色んな人に話しかけた事が功を奏して、みんなに名前を憶えて貰えた。
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