補導員は何をしている?
次男カズヤが午後11時を過ぎても帰ってこない。嫁ヨシエのイライラが沸点に近づいていく。
反抗期は相変わらず、高2になって部活を辞め、学校に内緒でバイトを始め、週に2日はとある社会人サークルに参加(実情は把握しているがここでは伏せる)。家に居ても食事を家族と一緒に囲むことを避け、夏休み中も勉強がそっちのけなのはわかるがあとは何をしているのやら。
携帯電話は要らない、小遣いも要らないと高校入学時に宣言し、それが現在も続いているのを逆利用して尻尾をつかませない。自分が高2の夏休みは・・・やっぱり遊びまくり、友達の家に入り浸ったり。だからヨシエが
「こんなことって許される?高校生が晩ごはんの時間になっても帰ってこないなんて!」
男ってそんなもんやろ、となだめていたが新学期が始まってもスイッチが切り替らないのはちょっと考えもの。
11時30分になっても何の連絡もない。学校から帰った形跡がないのでそのままどこかをうろついていると思われる。
「こんなん絶対おかしいわ。電話の一つもせんと。大体アンタが普段から何も言わんからおかしなったがやないけ。何が、“それくらいいいないか”やこっちゃ!休み明けのテストの成績なんかメチャクチャやよ!どーするがけ!」
ほ~ら、矛先がこっちに向かってきた! 11時50分
「ねえ、警察に電話した方がよくない?12時過ぎても帰って来なんだらいいよね?」
いやそれはちょっと・・・・
「何で!もし何かあったらどーするが!じゃ、何時やったら電話していいが?」
どうやら壮大な被害妄想が暴走し始めたらしい。ちょっとシャレにならない。今日は釘を刺さねば。
0時15分、口笛を吹きながら自転車に乗ってヤツが帰ってきた。「・・・口笛吹いとるし(アタシがこんなに心配しているのに)・・・」
家に入ってきたところで茶の間に呼び寄せる。
「ちょっと座られ!」
座らない、柱に寄りかかる。
「アンタねぇ、ちょっといい気になり過ぎとらんけ!」
で始まった小言は
「もっと早く帰ってこられ!遅くなるなら電話しられ!(携帯を持っていなくても意思と知恵があればできるはず!)」
「じゃあ、遅くなると思っとって。電話する気ないし」
「じゃあ、何で遅くなるがけ?」
「さあ、言うつもりないし」
「じゃあ、どこにおるがけ?」
「さあ、言うつもりないし」
「じゃあ、電話しられ!」
「せんし」
と不毛な対立が繰り返され、らちのあかない展開。
「・・・・ちょっとアンタも何か言わんなんがでないが!」
やっぱりきたか。
「お前ねぇ、いくらなんでも自分勝手じゃないけ?そりゃ、ごくたまになら目をつぶるよ。でも、これだけ好き放題されたら放置はできない。遅くなるなら電話するか、電話しないなら居る場所を伝えていくか、さもなければ早く帰って来るかやな。もし、万が一のことがあっても、なんも注意しなんだ親がバカや!って言われるわ」
「・・・バカやないけ」
~キタ・キタ!!~
ここは
「・・バカ・・?親に向かってその口のきき方は・・・」
と言って殴りにかかるのがよくあるドラマの筋書き。でも実際はそこまで勢いがつかない。
「・・・バカ・・?そやな、カエルの子はカエル、トンビの子はトンビ。ネズミがトラを産めるか?産めるわけない。・・うん、親がバカならその子供もバカということになるな」
「・・・とにかく、電話せんし、どこにおるか言うつもりはないし、早く帰って来ることも約束するつもりはないし」
「うん、お前に『わかった』って言わせることがすぐにできるとは思わん。ただ、今後このようなことがあったら、その都度、小言は言わせてもらう。今日のところは遅いからこれくらいにしとくわ」
とその日は終わった。
床に就くときのヨシエ、
「学校の先生とか、
でもカワイイじゃないか。家に帰ってくること、柱に寄りかかりながらでも何かしゃべってくれるところが。
後日このことをあるピアノの先生に話したら、
「そんな時は、今まで何してた?どこにいた?って怒鳴っても逆効果。芝居じみてもいいから、『心配したぁ~』、って言えばいいの」
と教えてもらった。なるほど、と思ったが、あのヨシエが言えるか?絶対不自然!そのうちにしっくりくる“とどめの台詞”ができるだろう、と悠長にしていたら二日後の朝、今度は球技大会だから学校をサボるという。
「つまらんし、意味ないし、学校の課題しとった方がよっぽどいいわ!」と続けさまの悪態。
ふと、~この道理の通らない感じ~ 何かに似ている・・・・・そうだ中国だ!勉強なんかするつもりもないくせに。ちょっと腕力が強くなったり(軍事力)、アルバイトをして小銭が入りだすと(世界第二位のGDP)自分の勝手を押し付けてくる・・・ということは
「どうして普通に育ってくれんがいろ?アンタが何も言わんからこんな子になったがいないけ!」
と言うが普通って?普通の高校生やから親を困らせたり心配させたりするがでない?その時は応酬に困ることもあるかもしれないが、年月が経てばたいていはそんなこともあったね、となるに決まっている。この辺は中国と我が子では違ってくると思うが(?)、もう少し立ち位置を高く遠い所に構えればこれからも起こるであろうさまざまな稚拙なふるまいも楽しめるのではないか?今度はどんなことで親を困らせてくれるのか、他人に迷惑をかけるのはいただけないがワクワクしてくる自分がある。
世の中には親に特別の心配もかけず進路をきりひらいていく子供がいると思うし、逆にこれくらいで済んで良かったね、と言われるケースもあると思う。そんなに歓迎はしないが、これからも子供たちが、ハラハラドキドキ、親の人生を中身の濃いものにしてくれると思おう・・・・・うん、そう思おう・・・・と文章では書けるのだが・・・。
2013年10月
※1 補導員
行政から委嘱を受け、青少年の非行化防止に努め、健全育成をはかることを目的する。
さかり場、映画館、ゲーム場及びパチンコ店等の遊技場、喫茶店、社寺境内、公園、駅その他非行や不良行為の行われやすい場所に出て、ぐ犯、不良行為少年を早期に発見し、適切な注意助言等を与え、正しく導く
※2 尖閣
尖閣諸島
東シナ海の南西部にある島嶼群(とうしょぐん)
日本が実効支配しているのに、中華人民共和国および中華民国がそれぞれ領有権を主張している。
中国と台湾が領有権を主張し始めたのは、1968年(昭和43年)に尖閣諸島付近海底調査で石油や天然ガスなどの大量地下資源埋蔵の可能性が確認されて以降である。
2010年9月7日午前、尖閣諸島付近で操業中であった中国漁船と、これを違法操業として取り締まりを実施した日本の海上保安庁との間で発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件は有名。
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