第20話 不意打ち
新右衛門は町へ戻り、宿屋に立ち寄った。
宿屋の夫婦は新右衛門一人で帰ってきたのを見て、何があったかを悟った。
「泉の近くに赤い花が咲いている場所があり、椿はそこで眠らせました……」
「そうか、これからどうする? お前は俺たちの息子みたいなものだ。ずっとここにいてもいいんだぞ!」
宿屋の主人は新右衛門の頭を軽く肩に抱き寄せた。
「ありがとうございます。しかし、椿から妹を守ってほしいと言われました。これから鬼の王都に向かいます」
「あんたは私たちの息子同然、また、いつでもここにおいで」
宿屋の女将も新右衛門を抱きしめ、優しく声をかける。
「はい。いろいろお世話になりました」
新右衛門は二人に別れを告げ、鬼の王都に向かうため、歩き出した。
そして、鬼道丸からもらった地図を頼りに2,3日歩き続けて、王都にたどり着いた。
「新右衛門、終わったのか?」
「ああ、青髪の鬼は椿が倒した」
王都に入ると、鬼道丸とスミレが待っていて、青髪の鬼を椿が倒したと聞いて、この場に椿がいない意味を二人は理解した。
「姉様は……。なんで……」
「スミレ、椿はお前と戦うことを避けられて喜んでいたよ」
新右衛門が事の経緯を二人に聞かせた。
「新右衛門、まさかお前たちの方に襲撃をかけるとは思わなかった。すまない!」
「いや、きっとこうなる
読みを誤った鬼道丸は新右衛門に謝るが、この世に椿はもういない。
新右衛門はこの世界にいる意味を失ったことに気づいた。
「そろそろ元の世界に戻ろうと思う」
「スミレ様が新しき女王になることをこれから現女王に伝えに行くところだ。その場で元の世界に帰ることを頼めばお前を元の世界に帰してくれるだろう」
悲嘆に暮れる3人であったが、スミレが勝ち残ったことの報告のため、城に向かった。
スミレは椿を失ったショックで新右衛門や鬼道丸の後ろをうつむいて歩く。
その時だった。
空が光ったかと思うと、雷撃がスミレを目指して降りかかり、それに気づいた鬼道丸がスミレの盾となり、雷撃に直撃するのであった。
「おのれ、打ち損じたか!」
そこには瀕死の状態で生き残っていた金髪の鬼が立っており、スミレを不意打ちで仕留めようとしていたのであった。
新右衛門は直ぐに金髪の鬼との間合いを詰め、袈裟斬りで金髪の鬼を仕留め、鬼道丸の元へ駆け寄る。
「おい鬼道丸! 大丈夫か?」
「打ち損じていたとは……、不覚であったわ……」
鬼道丸はそう言うと、新右衛門をじっと見つめて、最後に笑みを浮かべた後、その場で息絶えた。
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