第2話 俺が悪役令嬢?

 

 そもそも、母親が侍女だったのは驚いた。


 俺が作者なら母親にはもっと重要なキャラにすると思ったのだが、本人が括れに固執してたみたいで、それはそれでしょうがないと思う。


 まあ、小説に家族を書いた覚えは全くないのだけど、異世界とはいえ、側にいてくれてとっても嬉しかった。


 俺は少し?マザコンの気もあるからな。


 それにモブにしてはとても可愛いし、母親はこの世界でも逞しく生きている。


 母親がいてよかったなあと思ったことは、母親がイザベラの屋敷の食事改善をしてくれたことだ。


 これは冗談抜きでとってもありがたかった。


 ただ、朝っぱらから俺の大っ嫌いな納豆が出たときは、若干殺意を抱いたが。


 母親は俺が言うのもなんだけど、前の世界ではお世辞にもそんなに料理が上手な方ではなかった。


 前の世界ではスマホを駆使して時々、斬新と言う名の危険な料理を披露したりしたが、ほとんどはシンプルな料理で案外その方が美味しかった。


 残念なことに、この世界は想像以上に料理が不味かった。


 だが、主に不味い理由は調味料と素材の不可思議な組み合わせがほとんどの原因だったので、母親が組み合わせを改善すると俺にとってはすぐにご馳走になった。


 だが、基本俺は食に対する興味はあまりなく、前の世界では夕飯は主に飲物で済ませてたので、この世界で三食プラス、おやつを食べるというものすごく健康的な生活を送ってる。


 それにしてもイザベラの家は貴族でお金持ちだし、お屋敷の料理はプロである料理長が作ってるのだから本来なら不味いのはおかしいなと思ったがそういえば俺は家での料理に関する描写を書いたことなかったなと思い出した。


 俺が書いた世界だとしたら、食べ物の描写がいい加減なのは仕方がない。


 それでもなけなしの知恵を絞って、夜会や舞踏会での料理は一応、温泉旅館のバイキングのようなイメージで書いた覚えがある。


 小学校の頃、よく祖父母達に連れてってもらった温泉旅館にいった時のバイキング料理を参考にしたはず。


 あの時は目の前でステーキを焼いてもらったり、ローストビーフを切り分けてもらったりしたのが記憶に残っている。


 蟹や海老、イクラに、ウニ。


 天ぷらに、刺身に、寿司に、うどん、そば


 ご飯は炊き込みご飯だったな。初松茸だった。


 温泉旅館でしかでない特別なご飯だと思ってた。


 あとは色とりどりの食べ放題のデザート、ショートケーキをはじめ、熱々のクレープも目の前で焼いてくれたが、それより衝撃だったのはマカロンだ。


 はじめてマカロンを食べて世の中にこんな美味しいものがあるんだと、幼いながらも感動した覚えがある。


 夜会や舞踏会のデビューは誕生日を迎えるとこちらの世界の両親からすぐにするって言われたので、それまでにボロがでないようにしないとなと思った。


 でも、そもそも俺はイザベラとしての記憶がある。


 俺が恋愛に興味がないせいか恋愛感情についての記憶があまり鮮明ではないのだが、イザベラの記憶の中の恋愛感情についてはうっすらだが幼い頃は王子のことが好きだったみたいだ。


 トルマリン王国の王子とは幼馴染みだ。


 興味がない俺の記憶の中にうっすらでもあるのだから、本当に好きだったんだなと思ってる。


 だからこそ王子は要注意だ。


 なんかの拍子にイザベラの気持ちが出てきたら俺がヤバイからなるべく近寄らないようにしよう決意する。


 ただ、幼馴染みについてはもう一人いるみたいなのだがそちらの記憶は封印されているようだ。


 でも今の両親をはじめ、今まで習ってきたマナーやダンス、魔力の使い方などの記憶は鮮明で努力家のイザベラに感謝した。


 本当にその記憶はありがたかった。


 なぜならイザベラと違って、俺は運動がからっきしダメだったから。


 なので俺はデビューする前の時間があるうちに、急いで色々情報収集をしなければと思った。


 それにトップで学園に入るための勉強もしないといけなかった。


 イザベラは頭はよかったけど、トップになる欲がなくて学業よりマナーやダンスに力をいれていた。


 まあ、正直言ってお嫁さん希望だったんだなと思う。


 本来なら学園はいってすぐに王子との婚約だったのを俺が全力で阻止しようと思ってるからな。


 なので暇な時間があれば、俺はイザベラの屋敷の蔵書を読み漁ることにした。


 スマホがない分、読書が捗る。


 元々活字中毒だし、むしろ、この世界ではこのまま本をずっと読んでいたい・・・と思っていたのだがある日、母親がこの世界のドライヤーを持ってきたことからこの世界にも色々な家電があるのが判明した。


 どうやら家電はこの世界では、骨とう品扱いになっていたらしい。


 相当な魔力を注がないと動かせないのでおそらく動かせる奴がいなかったため、ガラクタ・・・いや骨董品扱いのなったのだろう。


 でも、これらが俺の魔力で簡単に動かせる。


 魔法もほぼチートだし、俺にとっては異世界あるあるのご都合主義ってやつか?


 なのでますます書斎にこもっていろんな本を読み漁ったのだが、その中に魔法の種類の解説本を発見した。

 

 そもそも簡単に魔力で色々できる俺だったが、魔法の種類がわからないと宝の持ち腐れだったと思う。


 それほど沢山の魔法の種類があるようだ。


 俺が持っている鑑定スキルも、そのうちの一つだった。

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